Windows 7対応の裏側に見た国内ISVの秘めた実力 第10回
TKC「会計事務所向けシステム(TKCシステム)」
分業開発も新OSにもいち早く対応! 会計ソフトの最前線
2010年03月12日 08時00分更新
今回は、企業向けの会計ソフトをWindows 7に対応させたTKCを取材した。本社は栃木県宇都宮市にあり、今回はこちらで開発に携わるお三方に話を聞くことができた。対応いただいたのは、システム開発研究所 .NETエンジニアリングセンターセンター長の柳澤 茂氏、.NETエンジニアリングセンターITスペシャリストの桑野 寛氏、.NETエンジニアリングセンターITスペシャリストの古田島俊英氏だ(以下、敬称略)。
最新OSが出たらすぐに対応する=TKCのポリシー!
―― テレビCMなどではよくお名前を聞きますが、まず最初に御社の事業内容について教えてください。
柳澤 当社は昭和41年(1966年)に創業しました。会計事務所とその顧問先となる企業への情報サービスと、市町村など地方公共団体への情報サービスの提供がビジネスの中心になっています。
情報サービスと一口に言っても時代によって変遷があり、現在はホストコンピューターによる情報処理、データセンターによるインターネットサービス――ここではASPで各種アプリケーションを提供します――、さらにPCを使った事務所や企業内での情報サービスを行なっています。現在ではスタンドアロンPCとクライアント・サーバーモデルのシステムが中心になってきています。今回Windows 7に対応したのは、このPCやクライアント・サーバー向けのシステムです。
TKCとTKC全国会の関係はバイクの前輪と後輪!?
バイクの前輪に例えられる「TKC全国会」は、単なるTKCシステムのユーザーグループという立場をはるかに超えて、職業会計人としての理念のもと、進むべき目標を設定し、後輪である(株)TKCがマンパワーを投入するという組織分担になっている。
―― 具体的にはどんなソフトウェアなのでしょうか?
柳澤 会計事務所向けアプリケーションは業種ごとに複数のソフトウェアで構成されていて、事務所内のサーバーとクライアントPCが連動して動作するようになっています。顧問先企業の業種ごとにさまざまなソフトウェアがあるのですが、会計管理や事務所自体の運営、顧客企業に対する経営助言など約100種類のソフトウェアがあります。もちろん、これらすべてがWindows 7に対応しています。
新OSへの対応もかなり以前から実施していて、Windows XPやVistaなど、新しいWindowsが出るたびに、すぐそれに対応するポリシーを一貫しています。
―― かなり多岐にわたるソフトウェアがあるようですが、対応作業はいつごろ始めたのでしょうか?
桑野 着手したのは2009年1月ですが、本格的に検討したのは4月からです。
柳澤 マイクロソフトの“早期製品採用支援プログラム”に登録したのが2009年の2月。それから情報収集などを行ない、全開発部門を通じたプロジェクトのキックオフを行なったのが6月になります。全プログラムの提供開始は12月1日ですが、11月から部分的に提供を行なってきました。
―― それら多数のソフトウェアは、いずれも独立したものなのでしょうか? 共通プラットフォーム上で動くものでしょうか?
柳澤 会計事務所向けのソフトウェアはそれぞれ独立したソフトウェアになっていますが、社内で独自開発したミドルウェアを利用して開発されています。そのためWindows 7対応は、このミドルウェア側の対応が済めば、半分ぐらいは完成したようなもので、あとは個別の各システムに合わせた固有のインターフェース部分をWindows 7対応にするという分業で対応できました。
―― 会計事務所向けのアプリケーションとは、具体的にどんなものでしょうか?
古田島 確かになじみが薄いかもしれませんね。簡単にいうと、その多くは税務署に提出するような書類を作成するツールになります。必要な項目と対応する値(金額など)を入力し、各種税法に則った税額計算の結果を申告書という形で印刷、または電子申告します。
また財務系のアプリケーションでは、伝票などを入力していき、それを基に統計処理を行なったり、場合によってはグラフ作成などのビジュアライズも必要となります。
―― ミドルウェアとはどういうものですか?
桑野 われわれが言うミドルウェアは、会計に関する処理ロジックではなく、各アプリケーション開発のフレームワークになっています。現在、当社のアプリケーションは、.NET FrameworkとDelphiの2つの開発言語系を用いています。
たとえば、.NET Frameworkが持っている機能を、Delphiで作ったアプリケーションでも実現するための機能(ライブラリ)などが、このミドルウェアに入っています。また、.NET Frameworkに対しする追加機能や機能拡張の部分もこの中に入っています。
Delphi用と.NET Framework用のミドルウェアはバイナリーとしては別のものですが、インターフェースが同じになるように調整してあります。
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