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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第116回

マイクロソフトの時代が終わった4つの理由

2010年05月12日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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マイナー企業に転落したマイクロソフト

 アップルのiPadが発売され、予想を上回る売れ行きで脚光を浴びる中、マイクロソフトは今月初めにKINというスマートフォンを発表した。マイクロソフトがリリースした、iPhoneに対抗する戦略商品……とメディアが騒ぐかと思ったら、ほとんど話題にもならなかった。FacebookやTwitterが使える以外、KINにはアプリケーションもなく、スマートフォンとしては低機能で、携帯電話としては高価だ(KIN TWOは99.9ドル)。何よりもiPhoneのような「クール」さがない。

左の横スライド型端末が「KIN TWO」で、右が「KIN ONE」。メールやメッセージングといったサービスを主眼に置いた端末である

 いつのまにマイクロソフトは、こんなマイナーな会社になってしまったのだろうか。もちろんマイクロソフトはまだ高収益を上げており、その時価総額(約2400億ドル)はアップル(約2100億ドル)を上回っている。しかしマイクロソフトの時価総額が5年前とほとんど変わらないのに対して、アップルの時価総額は2005年には200億ドル足らずだった。それがこの5年でほぼ10倍に伸び、マイクロソフトと肩を並べるようになったのだ。

 マイクロソフトが没落した第1の理由は、PCの時代が終わったことだろう。マイクロソフトはPCとともに登場し、大型機の時代を支配したIBMを倒した。世界最大のコンピュータメーカーを、設立されたばかりのベンチャー企業が倒すとは、誰も予想していなかった。それ以来、競争の激しいコンピュータ業界で20年以上もナンバーワン企業だったことも驚異的だ。ビル・ゲイツは天才的な技術者とはいえないが、天才的なビジネスマンだった。

 最大の危機は、インターネットが登場してプラットフォームがOSからブラウザに変わるときだった。一時はNetscapeがブラウザで圧倒的なシェアを占めたが、マイクロソフトはInternet ExplorerをWindowsにバンドルしてNetscapeを破った。しかしPCそのものがコモディタイズ(日用品化)して成長商品ではなくなると、それを支配していることにあまり意味はなくなる。

 第2の理由は、ITがもはや必需品ではなくなったことだろう。iPodが出たあと、マイクロソフトも似たような携帯音楽プレイヤーであるZuneを発売した。これは音楽ファイルとしては多数派のWindows Media Audioを使い、WindowsベースなのでPCとの連携もスムーズで、今度も先行したアップルを抜くかと思われたが、ほとんど問題にならなかった。

 Zuneはハードウェアの性能ではiPodに劣らないのだが、iTunes Storeのような「エコシステム」を構築するのに失敗した。基本的には事務機であるPCと違って、音楽では価格や性能より「クール」さが大事なのだ。

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