キャンペーンのキッカケは2009年の東京ゲームショウ!?
今回、お話をうかがったのは「ラブプラス」のプロデューサーの内田さん。まず、ゲームについてうかがったところ、「ラブプラス」のコンセプトは何と「現実を侵食する」ことだという。確かにゲームの中の彼女と本物の恋愛のように交流できるのが、ユーザーの勘所を突いている。
ラブプラスのキャンペーンにおいて、内田さんは「現実を侵食する」というコンセプトを実現できる方法は何だろう? と模索していたそうだ。そして内田さんがARを使った方法を考えたときに、開発チーム小島プロダクション監督小島秀夫さんに「ゆくゆくはこういったキャンペーンをやってみたい」と言ったところ、小島さんが「じゃあ、今からやりなよ」と背中を押されたとか。
ちょうど、2009年の東京ゲームショウにて、「姉ヶ崎寧々参上! (姉ヶ崎寧々はラブプラスのキャラクターのひとり)」というセカイカメラのエアタグが、秋葉原や日比谷などいたるところでたくさん浮かんでいた事件が内田さんの耳に入り、その話を聞いた内田さんはARに興味を持ち、ARの可能性を強く感じたという。
そして内田さんはラブプラスにARを取り入れたいと考えた結果、恋人達のメモリアルデーであるクリスマスにおいて、ARのキャンペーンを実施することを決定した。前のページで紹介したようにマーカーをWEBカメラで取り込む方法だ。しかし、ゲームショウからクリスマスまで3ヵ月しかない。非常に短い期間でのキャンペーンは大変なことも多かったという。
一番気を配ったところは、キャンペーン用のキャラクターの造形。ニンテンドーDSのゲームとパソコンの映像の中のキャラクターはレンダリング方法が違うので、パソコン内のキャラクターの顔立ちや雰囲気がゲームから離れないようにキャンペーン用のキャラクター作りが行なわれたのだ。ユーザーから想像できない意外なところでの大変さである。
「現実を侵食する」方法としてのAR
恋人と過ごすメモリアルデー。クリスマスの次はもちろんバレンタインだろう。ここで内田さんはもっとグレードアップした試みを行なった。それは江崎グリコとのタイアップ。クリスマスキャンペーンでは、マーカーが入手できるケーキ屋さんは都内3ヵ所だった。しかしバレンタインキャンペーンでは、全国の人が参加できるようなったのだ。
難しいことはなくとも、たとえばセカイカメラのように、現実の画面にエアタグが浮かぶというのを体験するだけで、ARの本質を伝えることができると内田さんは言う。そして、シンプルなアプリでもユーザーがARを体験していって、ARの何たるかをお客様に伝えて広めることがが大事だという。コンシューマー向けに様々なゲームを出してきたプロデューサーならでの言葉ではないだろうか。今、一部のマニアだけでなく、広くユーザーに使われるARが問われる時代になっているのかもしれない。
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