パネルディスカッション#1
日本のCGM文化は海外でも通用するか?
「議論したくてたまらないので、(終了時間を)超過します」
各パネリストの講演が終わり、あらためて全員が壇上に上がった直後、司会の後藤氏が叫んだ。すでに予定の時間は大幅に過ぎ、40分用意されていたはずのパネル討論の時間は残り15分。「お許しください」と客席に問いかける後藤氏に、満場の拍手が答えた。白熱したやり取りの一部を紹介する。
後藤 皆さんの講演の中に、共通して「海外展開」というキーワードがあった。具体的にはどう考えているのか?
剣持 海外に合わせるのではなく、日本のやり方を海外の人に認めてもらう。「ガラパゴス」おおいに結構。なんとか日本で起きていることを知ってもらう努力をしていきたい。
伊藤 1月、アメリカでの売上が突然倍になった。調べてみたら、Facebookにコミュニティができて、数万人のユーザーが集まっていた。FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを利用して日本のクリエイターが海外で認められる事例は現実に起こっているし、これからも起こるだろう。
戀塚 世界に日本語を読める人はいっぱいいる。ニコニコ動画はWebサービスなので、そのまま世界中で利用されている。人気コンテンツは「日本のオタクカルチャー」が多いが、そういうものに興味を持つ人にとって日本語は「聖地の言語」なのでそのまま通用する(会場笑)。その形では、すでに海外展開できていると言えなくもない。
濱野 海外で初音ミクやニコニコ動画を紹介すると、どういうリアクションが返ってくる?
後藤 アメリカの国際会議でニコニコ動画や初音ミクを紹介したら、聴衆の反応はすごくポジティブ。初めて知った人からも「日本独自の要素もあるけどユニバーサルに楽しい。URLをさっさと教えてくれ」と言われた。
伊藤 うちの会社(クリプトン社)は、圧倒的にプロのお客さんが多い。音楽のプロの目から見るとVOCALOIDは「わかりづらい、スペックが低い」と関心を持ってもらえない。しかし実際に音楽の現場に入っていって、耳の肥えた人たちを見習わないといけない。
剣持 現状で外国の方大多数にVOCALOIDが受け入れられるのは正直難しいと思うが、20代の若い人を中心に徐々に普及していくんじゃないかと、悲観的かつ楽観的に考えている。
戀塚 「言語の壁を越えないとダメだ」という声はあちこちで聞くが、ニコニコ動画は新語、新しい言葉が初登場する場所。その場で翻訳するのは機械的には難しい。ただニコニコ動画には人がいっぱい来るので、翻訳できるユーザーがいればやってもらうのがいいんじゃないか。その作業を楽しんでできる仕組みを作れば、たぶんシステムとして回るんじゃないかと思う。