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Windows 7対応の裏側に見た国内ISVの秘めた実力 第4回

パイオニアソリューションズ「ディスカッションテーブル」

タッチセンサーの50型大画面テーブルで新世代UIの到来を予感!

2009年12月16日 12時00分更新

文● 塩田紳二

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.NET Framework 3.5に
マルチタッチ用ライブラリを自社開発で実装

―― ソフトウェア開発について詳しく教えてください。

酒寄一紀氏

ソリューションセンターPF開発1グループ副主事の酒寄一紀氏

酒寄 このデモ用のソフトウェアはWPFで開発して、もう1台への出力はWindowsが持つマルチディスプレー機能を使っています。

 開発は「Visual Studio 2008」で行ない、「.NET Framework 3.5」を使っています。マルチタッチに正式対応するのは、(Visual Studio 2010の)「.NET Framework 4」からなので、我々自身でWindows 7の仕様を基に.NET Framework 3.5用のマルチタッチのライブラリーを開発しました。実際には、ネイティブコードのAPIを呼び出しています。

 デモのソフトウェアの開発では、自然な動きを表現するために“慣性的な動き”を取り入れるのが大変でした。またデモ用途なので、見た目のインパクトも考慮する必要があります。

 もう1台のディスプレーに表示するとき、たとえば「ボタンを押して表示させる」ような当たり前の手順では、誰も驚いてくれません。そこで、その方向に画像などのウィンドウを放り投げる動きを検出すると、画像がそちらのディスプレーに全画面表示されて、以前に表示していたウィンドウが自動的にテーブルへ戻ってくる。そういう動きを実現すると、機能は同じでも与えるインパクトがまるで違ってきます。

 画像も単に全体が切り替わるのではなく、下からスクロールして表示させると、操作したり見ている人の受ける印象が違います。小さな違いですが、ユーザーの反応は全然違ってきます。

奥に縦置きのセカンダリディスプレーがあり、デュアルスクリーン構成になっている。手前のタッチスクリーンから動画や画像のウィンドウを、指先で滑らせるように奥に放ると、セカンダリディスプレーに全画面表示され、動画なら自動的に再生が始まる

岡野 今回のシステムでは、アナログ的感覚を大事にしています。我々としては、「アナログ感」のあるデジタル製品を実現したいと思っています。

―― 開発や検証には苦労されたのでしょうか?

酒寄 タッチセンサーがWindows 7の標準機能になっているのは、大いに助かりました。専用ハードやソフトが不要なので、マルチタッチ対応のWindows 7マシンがあれば、どんなところでも開発できて、動かすこともできるからです。実際、このデモソフトの開発は当初は日本HPの「TouchSmart PC」を使って、ハードウェアが完成すると同時にすぐ実機に移行してテストできました。

―― 今後はどのように応用して、ビジネスをスタートさせる予定ですか?

岡野 展示会の反応などで要望が多いのは、デジタルサイネージ(広告)の分野ですね。またテレビ会議システムをラインナップしているため、その中でも使いたいと考えています。

 我々の会議システムは主に製造業に特化していて、個々のお客さま向けにインテグレートしています。お客さまによって要望が異なり、それぞれ違うシステムを納品しています。こうしたところに話を持っていくと反応はよく、逆に我々が思いもしない用途を提案されることもあります。まだ具体的にはお話できませんが、会議以外の場で使いたいとの要望も多く、将来的にはいろいろなシーンで使われそうです。

 実際に試作機を操作してみたが、50型の大型ディスプレーを横にしただけで、まったく違うものに感じられる。こうした新しいシステムには、従来とは違うアプリケーションやユーザーインターフェースの出現が確かにあり得る、と可能性を感じた。

 たとえば、横にした画面を見下ろながらディスプレーの周りを歩くと、従来のような明確な上下方向がなくなるので、たとえばグラフや図表にも新たな表現の工夫が必要となる。

 そこにマルチタッチが加わるので、多人数で同時に同じディスプレー上のオブジェクトを操作しながら作業を進めるという、新たなミーティングスタイルが生まれる。

 マルチタッチは、単にひとりのユーザーが指先で操作するというだけでなく、複数人が思い思いにオブジェクトを操作する意味にもなるのだ。

 Windows 7のマルチタッチ機能はまだ生まれたばかり。2本の指での回転や拡大といったジェスチャーができる程度という理解が今はまだ一般的だが、多人数による直接的、感覚的操作というPC(IT)の大きな変革の可能性を秘めている、インパクトのある技術だと理解を改める必要性を感じるインタビューだった。


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