ウォークマンの敵はiPodではなくアップルのエコシステム
ただ、実際にはこのどちらの製品を選ぶのかというよりも、「iPod」を買うか、それとも高音質なウォークマンを買うのかという二択に頭を悩ませているユーザーの方が多いのではないか。何を隠そう筆者もその1人である。
iPodを購入すると、当然音楽を転送するために「iTunes」を利用するようになる。さらに音楽CDをどんどんリッピングしてライブラリが充実すると、音楽CDではなくiTunesから直接再生する機会が増える。いちいちCDを取り出してコンポに入れるよりも、リストから曲を選んでダブルクリックするだけで再生できるiTunesの方が便利だからだ。
こうしてiTunesやiPodで音楽を聴く機会が増えれば、CDを購入する必然性は薄れる。リッピングした後はCDを使わないのであれば、ダウンロード販売でもいいというわけだ。
確かにCDには物理メディアが手元にあるという安心感があるかもしれない。しかしオンラインで気軽に購入できる上、すべての曲を試聴可能な利便性まで考えると、リストの中にある「iTunes Store」で買えばよいと思うのは自然な流れだろう。
こうしてアップルの「エコシステム」の中に取り込まれてしまうと、そこから抜け出すのは難しい。たとえアップル以外のメーカーから魅力的なポータブルオーディオプレーヤーが登場しても「iTunesで曲を管理しているから別のジュークボックスソフトを使うのは面倒だし、そもそもiTunes Music Storeで購入した音楽が聴けない」という理由で、アップル以外の選択肢を取りづらくなってしまうからだ。
このように考えていくと、アップル以外のポータブルオーディオプレーヤーのライバルはiPodではなく、iTunesを核としたその強力なエコシステムであると見ることもできる。いくらiPodより魅力的な製品を開発しても、iTunesで楽曲を管理し、iTunes Music Storeで音楽をダウンロードしているユーザーを振り向かせるのは難しいからだ。
ソニーも当初はジュークボックスソフトの「SonicStage」、そして音楽のダウンロード販売プラットフォームである「Mora」でアップルと同様のエコシステムを構築しようとしたが、先週の記事(関連記事)で書いたようにSonicStageの完成度を高められず、成功したとは言い難い。
そこで最新のウォークマンでは、ATRAC3以外にMP3やAACといったコーデックをサポートし、さらにエクスプローラやiTunesからのドラッグ&ドロップ転送を可能にするなど、オープン化戦略に切り替え、改めてアップルを追撃している。
ということで、アップルのエコシステムに(転送アプリを含む)最新のウォークマンが迫れるほど魅力的になっているのかを次回検証してみたい。
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