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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第5回

東方キャラに「ばかなの?」と怒られる曲がなぜ泣けるのか

2009年10月18日 12時00分更新

文● 四本淑三

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あかやかP「ばかだよ?」PVより。同人ゲーム「東方Project」から生まれたキャラクター「ゆっくり」の顔が目を引くが、これがただの笑える「ネタ曲」で終わらない。号泣必至のデジタル版・森田童子なのだ

 この曲を聴き終わったある人は、滅多にしない電話を親にかけ、またある人は何年も連絡していなかった兄弟にメールを書いたという。家族、友人、現在や過去の恋人その他、様々な人への不義理や、贖罪の念がどっと押し寄せてくるのだ。嗚呼。



 そのコアな人気から再生数を伸ばし、今では20万再生を超えるこの曲「ばかだよ?」をニコニコ動画(ニコ動)に投稿したのは「あかやかP」。現在彼は29歳。ギターやキーボードを弾きこなし、学生時代にはDTMもやっていたが、その後しばらく音楽活動は中断。ニコ動でボーカロイドが流行っているのを見て再びDTMを始めた、いわゆる「出戻り組」だ。

 ボーカロイド・初音ミクを使った「オンガク」がニコ動での処女作だが、ヒットを飛ばしたのは「東方Project」と呼ばれる同人ゲームから生まれたキャラクター「ゆっくり」※1と、フリーのテキスト読み上げソフト「SofTalk」※2を使った楽曲「もっとゆっくりでいいよ」。この『ばかだよ?』もその「東方系」の1つだ。

 東方系にはキャラクターを使ったネタ、「笑わせる」タイプの曲が多い。人を泣かせるために作られた曲というのは、あらかじめそういう構造をしていて、聴く側もそれなりに準備はできている。しかし『ばかだよ?』の場合は「またあのネタか」とタカを括って聴き始めるから、まるで無防備な状態のまま森田童子的な世界に転送されてしまうのだ。

ニコニコインディーズ

 あかやかPは「特定のキャラやジャンルに依存しない投稿者オリジナルの楽曲」のために「ニコニコインディーズ」というタグを提唱している人でもある。本職がwebデザイナーの彼は「趣味と実益も兼ね」そのタグを集計するランキングサイトまで運営している。

 以前キャプテンミライさんとDixie Flatlineさんに取材した際に「ボーカロイドのキャラクターに下駄を履かせてもらっている」という問題意識を語ってもらったが、その下駄を取り去った状態で何が出てくるのか。ニコニコインディーズはその試みとして興味深い。

 そこで、どんな発想で活動しているのか、実際に会ってあかやかPにお話を伺った。

※1 東方Project : 同人サークル「上海アリス幻樂団」が発表しているシューティングゲームの総称。原作者が二次創作を許可しているため、様々な派生創作物が存在する。頭だけのキャラクター「ゆっくり」もその1つ

※2 SofTalk : 無償のフリーウェアとして公開されている。http://cncc.hp.infoseek.co.jp/

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