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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 ― 第7回

現役音大生と銀座のホステスが、ネットと音楽で目指すもの

2009年11月15日 12時00分更新

文● 四本淑三

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現役音大生のボーカロイドP、Treowさんが所属する音楽サークル・Elektlyzeの1stアルバム「Piece of Cipher」(現在は完売)アートワークより

 今年下半期に公開されたボーカロイド曲の中で、最大の衝撃はTreowさん(逆衝動P)の「Drain」だった。

 Treowさんはニコニコ動画に楽曲を投稿する、ボーカロイドPと呼ばれる作家の1人だ。2008年11月にアップされた「Chaining Intention」は再生数にして14万回を超え、「VOCALOID殿堂入り」のタグが付く。彼自身は「変拍子の貴公子」と呼ばれ、コアなファンを集めている。

 その作風は文字通りユニーク。変拍子、複雑な和声、先が読めない展開、奇抜な音色の配置と、様々な実験的な手法が試されている。にもかかわらず音楽全体としてのポップさを失っていない、その不思議なバランスに魅力がある。

 その彼の作品がさらに「音楽以外の何か」に近づき始めたのが、先の「Drain」だった。音と映像が有機的に絡み合う、今までのボーカロイド曲にないタイプの作品だった。

 そのPVをプロデュースしたのが「銀座のホステス」を自称する、喜多嶋時透という女性である。

 我々はこの二人をTwitterでフォローし、日夜ブログをチェックし、深夜のニコニコ生放送も朝まで付き合うなど、長い間リスナーとして見守ってきた。なぜなら、ちょっと怖かったからである。尋常でない作品から想像されるのは非道な人物像である。何を聞いてもソッポを向いている根性の曲がった芸術家気取りや、鞭を持った女王様だったらどうしようと。

 よって恐る恐るインタビューへと及んだのだが、果たして我々の前に現れたのは、事前のイメージとはまるで異なる二人だった。Treowさんは無口でなかなか本心を明かさないタイプだが、不思議と周囲をひきつける愛すべきキャラクターの持ち主だった。その彼のイメージを読める、特殊な洞察力の持ち主が喜多嶋さん、という関係のように見えた。ピュアで無口な青年とコケティッシュな銀座のホステス。その謎の関係にネット時代の音楽はどうあるべきか、そのヒントがあるのだとすれば、ちょっと面白い。


菅野よう子さんを目標の一人に、音大へ

――初台くんだり(ASCII.jp編集部は西新宿のはずれ、初台のご近所にある)までお越し頂きありがとうございました。お二人にお会いできて光栄です。まずTreowさんのプロフィールについて教えてください。音大生と聞いていますが?

Treow はい、そうです。

Treow(逆衝動P)さん。22歳の現役音大生である

――差し支えなければ年齢は?

Treow 22歳です。

――学校の同級生はTreowさんの活動を知っていますか?

Treow その名前を知っているのは1人だけです。

――音大に進んだ理由は?

Treow クラシックや現代音楽が特に好きなわけでもないんですが、目標としている作家の一人に菅野よう子さんがいて。ああいった多様な音楽を扱うには、理論的な知識は不可欠だと。それで高3の頃から、音大へ行くための勉強を始めたんです。

――それで簡単に入れちゃった?

Treow いえ、一浪しています。

――大学ではどんなことを?

Treow 西洋古典音楽の流れから、小難しい現代音楽まで、一通り触れてきた感じです。「音大に行っています」なんて言えないくらい勉強してないんですが。和声、対位法などは、どんな曲を作るにしても役に立ってますね。

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