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通な人も唸る画質と音質! パナのBDレコーダー「DIGA」を試す

2009年09月17日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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プレミアムな理由は高画質・高音質! その全貌に迫る

 パナソニックの最上位モデルは、今までも高音質回路の搭載など、本格的なシアター用途にも対応するスペシャルチューニングが施されていた。公式なアナウンスとしては、前作BW950とBW850/BW750は映像処理に関しては共通ということになっているが、比べてみると明らかに映像にも違いがあるという声も聞く。同じ部品でも選別品が使われているとか、生産工程における最終的な調整の精度が高いなどの理由が考えられるが、推測の域を出なかった。

 しかし、今回ははっきりとプレミアムモデルとして扱われることになり、高音質はもちろん、高画質機能でも明確な違いがある。まずは「新リアルクロマプロセッサplus」。従来クロマアップサンプリング(エンコード時1/4に圧縮された色情報を元に戻すこと。この精度により色再現や階調性に差が出る)後にI/P変換(インターレース信号をプログレッシブ信号に変換)を行なっていたが、先にI/P変換をしてからクロマアップサンプリングを行なうように改めた。

 インターレース信号は1フレームの映像を垂直解像度を約半分にして、2つの静止画(フィールド)で1フレームを構成している。つまり、1フィールド当たりには、ハイビジョン信号の縦方向の解像度(1080本)が約半分しかないと考えていい。

 2倍の解像度(1920×1080ドットのフルハイビジョンの情報量)を持つプログレッシブ信号で、クロマアップサンプリングを行なうということは、処理量も2倍となり、LSIの負荷は大きい。

 これを処理能力が向上したシステムLSI「新ユニフィエ」で実現した。これにより、従来は垂直方向の色情報が1本ずつ飛び飛びになった画素しか参照できなかったが、隣り合った画素の情報を参照して色情報を復元できるため、色再現性がさらに改善されるというわけだ。このほか、クロマアップサンプリング自体も、水平方向の信号の歪み(オーバーシュート)をなくし、オリジナル信号に近い信号を再現するシュートレス高解像度方式を採用。これにより、部の色同士が近接するような部分も、色にじみのない再現が可能になった。これにより、例えば、細かな織物など複雑な色が組み合わされた模様がより鮮明になる。

「新リアルクロマプロセッサplus」の概念図

「新リアルクロマプロセッサplus」の概念図

 ちなみに、BDソフトの映画の場合は、もともとプログレッシブ信号で記録されているため、BW970以外のモデルで採用される「新リアルクロマプロセッサ」との効果に大きな違いはない。違いが現れるのは、インターレース信号で記録された音楽ソフトやドキュメンタリーソフトなど。特にBDの音楽ソフトはインターレース収録ながらも質の良いソフトが多く、これをより高画質で楽しめるメリットは大きいだろう。


12ビット精度で伝送する階調ロスレスシステム

 高画質化に寄与しているもう1つの工夫として、MPEG信号のデコードやノイズリダクションなどの映像処理、I/P変換、音声処理などの回路を1チップ化することで実現した「階調ロスレスシステム」がある。

 一般的なシステムでは、それぞれの回路では10ビットで処理をしていても、回路から回路へと送られる段階ではオリジナル信号と同じ8ビットの伝送路しかなく、2ビット分の情報が切り捨てられていた。階調ロスレスシステムの場合、1チップですべての映像処理を行なうため、I/P変換で10ビット化、クロマアップサンプリングで12ビット化と、階調性を左右するビット情報を切り捨てることのないリアル12ビット精度の情報をきちんと再現できるというわけだ。

 LSIを1チップ化というと、低コスト化の側面もあるため、高級機ではあまり大きくアピールされることが少ない。しかし、ハイビジョン映像処理のような負担の大きい処理ではLSIが多いほどノイズの発生量も増え、画質や音質に影響を与えることも事実。また、LSIの集約によって回路自体のサイズも小さくなり、配線の長さも大幅に短くなった。これも、ノイズの影響やジッターの混入など、映像/音声信号の純度を損なう原因を低く抑えられるものだ。

 DMR-BW970は約30万円近い価格の高級機としては、筐体も小さく所有欲を満たす満足感が足りないとよく言われるし、私もそう思う。しかし、筐体が小さい方がボディの剛性は高くなり、振動にも強くなるなど、画質/音質へのメリットは大きい。パナソニックの開発陣は「これからの高精度なデジタルAV機器は、回路もボディもコンパクトな方が画質・音質にも有利に働く」と胸を張る。

 その映像は、一見して高精細さを感じさせる映像でありながら、ディテール強調などによる違和感のない自然な映像。音楽ソフトなどだけでなく、映画などでもその緻密なディテール再現は前モデルよりも進化していると実感できる。

 色再現については、以前はやや濃いめのリッチな再現と感じていたのだが、階調がよりスムーズになり、色の微妙な変化がより鮮明になることで、単純に濃いのではなく、鮮烈といっていいほど鮮やかに見える。赤・緑・青の原色も派手すぎることもなく、むしろリアル志向になってきていると感じた。正直な印象を言えば、後述する高音質もあいまって、10~20万円のミドルクラスのBDプレーヤーと同等か、それ以上の実力だと感じた。これを明らかに超えられる(しかしその差は極めて小さい)のは、各社の(数十万円クラスの)ハイエンドBDプレーヤーだけだろう。

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