国家機関も対策に乗り出す海賊版ネットコンテンツ
この事件から少しさかのぼること8月14日には、政府もテレビ向けネットサービスにメスを入れた。メディアをコントロールする国家機関の「中国国家広播電影電視総局(略称広電総局)」は「ネットもみれるテレビのコンテンツサービス管理についての問題の通知(関於加強以電視機為接收終端的互聯網視聴節目服務管理有関問題的通知)」というお触れを発表。「信息網絡伝播視聴節目許可証」と呼ばれる許可証なしでの動画コンテンツ提供は違法とした。
これには前述の海賊版コンテンツの配信というのもあろうが、むしろ中国風でいうところの「中国の国情にあったコンテンツコントロール」のための法制定が必要と判断するほど、ネットもできるテレビは無視できなくなったのだろう。
今年4月には、ネットもできるテレビ向けではなく、中国の動画サイトをコントロールする、「ネット動画コンテンツ管理強化に関する通知(関于加強互聯網視听節目内容管理的通知)」を発表している。
具体的には「国家統一や、国家の安全や栄誉や利益の危害となる動画、国家機密を漏洩する動画」「邪教や迷信絡みの動画」「暴力的、非道徳的な不健康な動画」「プライバシーを侵害する動画や他人を辱める動画」「国家広播電影電視総局が禁止する動画」「その他国家法律で禁止する動画」などの禁止を明記している。
今年4月には、オンラインゲーム大手の「盛大」(SHANDA)がリリースした、ネットにテレビを繋いで、ネット上の番組が見られる(ついでにオンラインゲームも楽しめる)という「盛大盒子」(EZPOD)という製品に、広電総局は「ノー」を突きつけた。国情にあったコンテンツを流す自制努力をしても、突然ネットテレビサービスの終焉を突きつけられるかもしれない。中国メディアは「メーカーは戦々恐々」と分析している。
中国メディアの取材によれば、北京の家電量販店では,ネットもできるテレビの販売量が、テレビ販売量の3割近くを占めたという。別のメディアは「ネットもできるテレビの平均販売価格が5000元(約7万円)とすれば、そのテレビ市場は200億元(約2800億円)近い。来年には300億元(約4200億円)を超える市場になりうる」と分析するが、コンテンツの厳格管理が必要になってきそうだ。
日本のテレビでもネットを介した動画視聴のサービスが当たり前にあるが、日系メーカーがそれを武器に中国市場に同じコンセプトのテレビを販売するのは非常に難しそうだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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