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どうせ日報(SFA)を打つなら、こうやって打とう ― 第1回

情報の鮮度こそIT活用の命

2009年08月03日 09時00分更新

文● 長尾一洋/NIコンサルティング

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SFAやCRMなど、企業に導入されるITシステムは、企業力強化を目的として導入されるものだ。であるならば、そうしたシステムは社員を効率的に“使役”するための仕組みに過ぎないのだろうか? 社員個人個人のパワーアップ/スキルアップにつながることはないのだろうか?


否、決してそうではない。この短期集中連載では、とかく経営目線で語られるSFAの使い方を、現場の個人や少人数チームの視点に立って紹介する。キモは、普段“使わされている”SFAを、「IT日報」と呼ぶことだ。

なぜIT日報と呼ぶのか? 「SFA」の原罪

 筆者は、「IT日報」(SFA)を2000社以上の企業に導入してきた経営コンサルタントである。私の言うIT日報は、IT業界では「SFA」と呼ばれることの方が多いが、筆者はあえて“IT日報”と呼ぶ。読者の皆さんは何と呼んでいるだろう。やっぱりSFAが多いかな?

 確かに、日報というよりSales Force Automationという方がすごそうな気がする。しかし負けずにIT日報と呼ぶ。「日報って名前が古いよね」と言われても、「長尾さん、この日報って名前なんとかならないの?なんだかイメージが悪いよ」と言われても、くじけない。

 それはなぜか?

 日報として、デイリーに運用しなければ、せっかくITを活用して情報伝達スピードを上げている意味がなくなるからだ。ITを活用したらスピードが速くなると言う人がいる。違う。ITを使っても週単位で情報をやりとりしたら(要するに週報)、情報の伝達スピードは遅い。大切なことは情報の鮮度だ。

 筆者は、これまでたくさんのSFA導入企業を見てきたが、多くの場合、営業マンは毎日入力せず溜めて入力をする。日報がやがて「三日報」となり「週報」となり、そしてそのうち更新されなくなる。SFAと呼ぶからだ。「商談があった時だけ入れればいい」「商談に進捗があった時だけ更新すればいい」などと言うからだ。そんなことを言われたら営業マンはついつい溜めて打つようになる。溜めて打ったら情報の鮮度が落ちて、ヌケやモレも多くなるし、急ぎの話は口頭で済ませるようになる。

 読者の皆さんの会社ではどうだろうか? 毎日ちゃんと打っていますか? 溜めて打っているんじゃないですか? それともSFAはあっても全然入力してないとか?

 そんなことになる会社が多いから、嫌がられてもIT日報と呼ぶ。毎日打つことが情報スピードを上げるために必要だからだ。せっかく入力した情報が陳腐化してはもったいない。早く情報を回すから、入力したことを口頭で何度も質問されいちいちそれに答えないといけないということも少なくなる。打つ手間は同じである。どうせなら早く打とう。

 毎日きちんと打てば、PDCA(Plan Do Check Action)サイクルが高速化する。そうするとIT日報が企業内に張り巡らされた「日報神経」となって、経営スピードが上がってくる。システムを導入するから経営が速くなるわけでも、ITを活用するから経営スピードが上がるわけでもなく、日々新鮮な情報を、ITを通じてやり取りするから経営スピードが上がるのだ。

情報の鮮度は
高いほうがいいに決まっている

 今や営業マンの役割、位置づけは、単にモノを売り込む仕事から、お客様のニーズを引き出し、競合の動きをつかんでそれを社内にフィードバックする諜報員のような役割へと変化している。作ったり仕入れたモノを一方的に紹介し、売り込むだけなら情報のフィードバックは要らないが、今はそれではモノは売れない。売れるモノを作ったり仕入れたりすることに営業マンは寄与しなければならない。そうであれば、その情報は鮮度が高い方がいいに決まっている。

 読者の皆さんの中にマネージャー職の方がいれば、尚更IT日報としての運用をお勧めしたい。日報としてパッと一覧で確認した方が閲覧の手間も省けるし、コメントも入れやすい。おまけに一日に一枚は日報が出てくるはずだから、部下の抜けや漏れにも気付きやすい。

 SFAとして運用していると、商談があれば入力するけど、なければ入力しないということになって、商談がなかったから入力がないのか、サボって入力がないのか、いちいちスケジュールをチェックしなければ分からなくなる。

 たとえば、一日ずっと会議だったとしよう。一日ずっと社内にいて会議をしていたわけだから客先訪問はしていない。こういう場合に入力しないことが多いが、実際には会議していたとしても顧客とメールのやり取りがあったり、電話がかかってきていたりする。最近はメールで結構商談が進んだりするから、メールの内容を残しておかないと商談の流れが分からなくなる。こうしたことも、日々日報を打つ、という発想を持つことによってカバーできるようになる。やはりSFAではなくIT日報でなければならない。

 筆者がIT日報にこだわる理由としてもう一つ、アメリカで考えられたSFAを、真似して日本用にローカライズしているわけではないという自負がある。これは個人的なことなので、大した話ではないが、アメリカでSFAというITコンセプトが出てきたのは1993年くらいだと思う。筆者はその何年も前から、日本で日報を使った営業指導や営業マネジメント改革を行っていた。当時は紙だったが……。

 その後パソコンの普及、インターネットの登場などもあって、IT日報にシフトしただけのことであって、アメリカのSFAを無理矢理IT日報と呼んでいるわけでもないし、そもそもこちらの方が先にやっていることだから、後から出てきた名前に変えるのも癪に障る。こっちが先輩だ。

 そんな個人的な思いもあって、できればSFAと呼ばずIT日報と呼んで欲しいなと思う。少なくとも日本企業には。その方が情報の鮮度が高くなるから。

明日は「日報を育て、顧客のダムを作る」方法をお話しします。

著者紹介:長尾一洋

長尾氏
長尾一洋氏

株式会社NIコンサルティング代表取締役
http://www.ni-consul.co.jp/

横浜市立大学商学部卒業。経営コンサルティング会社にて各種コンサルティングを経験し、1991年、NIコンサルティングを設立。企業の経営体質革新や営業力強化などに取り組み、1998年からは自社開発のIT日報「顧客創造日報」を発売。その後、連携システムを追加投入し、現在では「可視化経営システム」として企業経営を見える化する統合システムを提供しており、導入企業数は2100社を超えた。

可視化経営システム
可視化経営システム画面

主な著書に「仕事の見える化」(中経出版)、「すべての見える化で会社は変わる」「IT日報で営業チームを強くする」(実務教育出版)「幸福な営業マン」(ダイヤモンド社)「可視化経営」(中央経済社)などがある。
中小企業診断士。

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