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どうせ日報(SFA)を打つなら、こうやって打とう ― 第2回

顧客情報データベースを日々更新し「顧客のダム」を作ろう

2009年08月04日 09時00分更新

文● 長尾一洋/NIコンサルティング

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SFAやCRMなど、企業に導入されるITシステムは、企業力強化を目的として導入されるものだ。であるならば、そうしたシステムは社員を効率的に“使役”するための仕組みに過ぎないのだろうか? 社員個人個人のパワーアップ/スキルアップにつながることはないのだろうか?


否、決してそうではない。この短期集中連載では、とかく経営目線で語られるSFAの使い方を、現場の個人や少人数チームの視点に立って紹介する。キモは、普段“使わされている”SFAを、「IT日報」と呼ぶことだ。

IT日報は、IT顧客カードでもある

 前回、SFAではなくIT日報と呼ぶのは、情報の鮮度を上げ経営のスピードを上げるためだと述べた。実は、IT日報と呼ぶのもいいのだが、「IT顧客カード」と呼ぶのもまたいい。

 そもそも紙の日報の時代……まだSFAが登場する前の日本には、紙の日報と紙の顧客カード(顧客カルテ・顧客台帳)があった。筆者は経営コンサルタントとして、各クライアント企業に出向き、日報を書くことと顧客カードをつけることを要求した。日報だけだと、営業マンの一日の動きは分かるが、顧客ごと、案件ごとの商談の流れが見えない。そこで顧客カードには、顧客ごとに、時系列で商談の内容を書いていく。営業のマネジメントをするためには、この両方の情報が必要だ。

 しかし問題は、営業マンは日報にも顧客カードにも同じようなことを書かなければならないということ。二度手間である。だから多くのクライアントでブーイングを受けた。「勘弁してくれ」と。だから筆者は、日報を打てばそのまま顧客カードを生成し、顧客ごと案件ごとに商談の履歴を管理し、受注見込みの先行管理表も自動で作成してしまうIT日報を作ったのだ(それをIT業界の人はSFAと呼んだ……筆者も一時期横文字の方がカッコ良くていいなと思っていたことがある……若気の至りだ……)。

 だから、IT日報と呼んでもいいし、IT顧客カードと呼んでもいい。紙の時代には二度手間だったものが、一度入力しておけばどちらも同時にできてしまうスグレモノなのだ。忘れないでいただきたいのは、営業マンの手間が増えたのではなく、手間は減ったのだということ。IT日報を導入しようとすると「手間が増える」と言って文句をつける営業マンがいるが、それはそれまでやるべきことをやっていなかっただけのことであって、まともに営業マネジメントをしようと思えば、「彼(顧客)を知り己(営業マン)を知らば百戦あやうからず」の孫子兵法が必要になるのは自明のことである。

日報を育てるとは
どういうことか?

 ここで、せっかくIT日報にもなりIT顧客カードにもなるスグレモノを更にうまく活用するポイントをお教えしよう。「日報を育てる」ということだ。日報とは、読んで字の如く「その日の報告書」のことだ。これが世間の常識である。報告書だと思っているから、そこには必ず済んだことを書く。だから報告書は必ず『事後』報告書となる。しかし、事後報告とは役に立たないものの代名詞である。その役に立たない事後報告をITを使ってスピーディーに処理したところで、所詮は役に立たない。

 そこで日報を育てる。

日報育成
日報が育つ4段階。一番下は、「報告書」でレベルが低いが、次に上司と部下のコミュニケーション媒体となる「連絡書」→次に何をするか? までが書いてある「計画書」→最後に、仕事がすべて見える化される「情報共有」ということになる

 日報は4段階で育っていく。まず一番下のレベルは「報告書」レベル。これはすでに指摘したように事後報告になってうまくいかない。次は「連絡書」レベル。部下と上司の双方向コミュニケーションを促進する媒体となる。これを「日報神経」と言ってもいい。大切なのは次の第三段階である「計画書」レベル。日報が計画書だと言われると違和感があると思うが、敢えて計画書にする。計画書の日報とは、「今日どうだったかだけを書くのではなく、次にどうするのかを書く」日報のことだ。要するに次回予定を入れる。「今日は○○さんを訪問して新商品の提案をしたら、△△という話になったので、次回はこうアプローチします」という内容になる。このように次回予定を入れようとすると、どうしても「△△という話になった」という顧客の反応や情報を書かざるを得ない。ここがポイントだ。

 多くの企業は日報というと報告書だと思っているから「○○さんを訪問して新商品の提案をしました」で終わりになる。単なる活動報告だ。これでは「IT顧客カード」にならない。次回どうするのかという次回予定を入れるから、自ずとその顧客の情報が書き込まれることになる。

 そしてその情報が営業部門だけではなく他の部門、たとえば仕入部門、製造部門、開発部門、研究部門、サービス部門、物流部門などに開示され見える化されると、第四段階である「情報共有ツール」レベルとなる。営業部門がフィールドから取ってきた顧客情報や競合情報が非営業部門に伝わるから価値がある。これも多くの企業では営業部門だけでクローズされていることが多い。SFAだと思っているからだ。“セールスフォース”オートメーションなのだから営業部門が使うと考えてしまう。これではダメだ。なぜなら営業部門だけでモノを売る時代は終わったからである。顧客のニーズに対応するのも、競合の動きに対抗するのも、非営業部門である。営業部門が単独でできることは、値引きとタダ働きと接待くらいで、あとはすべて他部門の協力が必要だ。ここまで考えて日報を打つことを「日報を育てる」と言う。

 こうして顧客の情報がITで登録されていくと、“顧客のダム”ができる。今売れなくても来年には買ってくれるかもしれない。今は競合に負けたけれども5年後の買い替え時にはリベンジできるかもしれない。だから顧客の情報は蓄積しておこう。次回予定を入れておけば、ITだから時期が来たら教えてくれる。顧客のダムは「顧客の釣り堀」みたいなものだと考えればいい。今は放っておいたら顧客は減っていく時代だから、常に顧客を溜めていくことを考える。失注客も立派な財産だ。ダムに放流してまた釣ればいい。どうせ日報(SFA)を打つなら、こう考えて打っておいた方がいい。自分の努力が無駄にならない。

著者紹介:長尾一洋

長尾氏
長尾一洋氏

株式会社NIコンサルティング代表取締役
http://www.ni-consul.co.jp/

横浜市立大学商学部卒業。経営コンサルティング会社にて各種コンサルティングを経験し、1991年、NIコンサルティングを設立。企業の経営体質革新や営業力強化などに取り組み、1998年からは自社開発のIT日報「顧客創造日報」を発売。その後、連携システムを追加投入し、現在では「可視化経営システム」として企業経営を見える化する統合システムを提供しており、導入企業数は2100社を超えた。

可視化経営システム
可視化経営システム画面

主な著書に「仕事の見える化」(中経出版)、「すべての見える化で会社は変わる」「IT日報で営業チームを強くする」(実務教育出版)「幸福な営業マン」(ダイヤモンド社)「可視化経営」(中央経済社)などがある。
中小企業診断士。

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