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どうせ日報(SFA)を打つなら、こうやって打とう ― 第3回

仕事を見える化して承認と感謝(ストローク)を増やそう

2009年08月05日 09時00分更新

文● 長尾一洋/NIコンサルティング

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SFAやCRMなど、企業に導入されるITシステムは、企業力強化を目的として導入されるものだ。であるならば、そうしたシステムは社員を効率的に“使役”するための仕組みに過ぎないのだろうか? 社員個人個人のパワーアップ/スキルアップにつながることはないのだろうか?


否、決してそうではない。この短期集中連載では、とかく経営目線で語られるSFAの使い方を、現場の個人や少人数チームの視点に立って紹介する。キモは、普段“使わされている”SFAを、「IT日報」と呼ぶことだ。

日報は、自分の仕事をアピールする場

 読者の皆さんが、日報なりSFAなりを打っているとして、それはいったい誰のために打っているのだろうか? 多くの場合、上司のためではないか。それは前回指摘した日報の一番レベルの低い使い方、「報告書」レベルであって、あまり役に立たないし、楽しくないから、もっと自分のため、周りの仲間のために活用することを考えてみよう。

 日報は、行動を管理される場ではなく、自分の仕事をアピールする場だと考えてみよう。日報がIT化されると、個々の仕事が見える化される。ITだからそれが共有され、お互いの仕事の中身を理解することができる。

サイクル
仕事の見える化サイクル

 これが相互理解。お互いに仕事の中身や質を知るとそこに信頼が生まれ、「この仕事はあの人に頼もう」とか「これなら彼がお得意だ」という相互信頼が醸成されてくる。相互信頼が生まれることで、そこに相互作用が生まれ、企業内にコラボレーションの土台ができることになる。日報を打つ相手が上司だけではなく同僚や他部署の人間だったり、更に上の上司だったりするのだと思えばいい。

 組織内の相互理解、相互信頼、相互作用を効率的に実現するのが日報による仕事の見える化とお互いが発する日報コメントによるストロークだ。ストロークとは心理学の言葉で、相手の存在を認め承認する働きかけのこと。ここにもIT日報をSFAと呼ばず、敢えてIT日報と呼ぶ理由があるが、営業の進捗がどうだとか、見込みがいくらあるかという話ばかりではなく(もちろんそれも大切なのだが)、「今日も一日ご苦労さん」「暑い中大変だったね」という声掛けやいたわりが欲しい。同僚同士でも「この仕事サンキュー」「君がやってくれて助かったよ」とコメントを入れたい。それができるのがIT日報だ。

 ここには米国流と日本流の雇用形態の違いも関係するだろう。セールスレップやエージェントと呼ばれる米国流営業マンは要するに歩合給のセールスだ。その日一日何をしていたかは関係ない。売れるか売れないか、それだけでいい。ところが日本の場合は多くの場合固定給が中心だ。固定給を払っているからこそ、一日の時間の使い方が気になるし、売れるか売れないかの前に人材育成やモチベーション、最近ではメンタルヘルスも考えなければならない。困っていたり悩んでいたりすれば、声をかけて、手を差し伸べる。

心の病が増加傾向

 今は、仕事がパソコンの中で進められるために、周りの人に業務負荷状況も見えない。以前ならデスクの上に書類が積み上げられ、忙しい人は見るからに忙しそうだったから、「なんなら手伝おうか」と声をかけられた。今はそれもよく見えない。メール中心で職場での会話も減って、個々が孤立しているように見受けられる。だから心の病が増え、うつ病などで休職する人も目立つようになっているのではないか。

 21世紀は頭を使って仕事をする時代。頭を働かせるためには心を動かさなければならない。心はどこにあるかというと脳にある。心が健康でなければ頭を使って智恵を出すことはできない。心理学で「心の栄養」と呼ばれるのが前述のストロークだ。周囲から認められている、感謝されているという実感を本人が持つためには、ストロークが必要になる。

「グッジョブポイント」と「日報GOOD&NEW」

 このストロークを増やす仕掛けが「グッジョブポイント」と「日報GOOD&NEW」。上司から部下に対してでももちろんいいのだが、同僚からでも後輩や部下からでもいいので、日報にコメントを入れる時(これを日報ストロークと呼ぶ)にポイントが加算される仕組みを作る。ITだから簡単なことだ。ちなみに筆者の会社では「GoodJob!」だと3点、「NiceTry」で2点、「Thanks」で1点と決めてゲーム感覚でストロークを出し合っている。コンサルティング会社なんだし、ちょっと子供っぽいかなと思いながらも始めてみたが、案外盛り上がった。IT日報だからランキングなども簡単にできて結構面白い。これによって同僚同士のコメントが増えたし、拠点間、部門間のコメントも目立つようになった。読者の皆さんの会社にもIT日報なりSFAがあれば是非このような機能を追加してほしい。

 もう一つおすすめが、「日報GOOD&NEW」。これはNLP(Neuro Linguistic Programming ――神経言語プログラミング)のリフレーミングという手法を日報に応用したもので、その日の日報を書く時に、その日一日にあった良い出来事か新しい出来事を書く。そういう入力欄を設けるといい。

 仮に良いことや新しいことがなくても、その解釈を良いように変えて(これがリフレーミング)書いてみる。内容は仕事に限ったことでなくてもいい。プライベートなことでも昼飯の話しでもいいから、何か一つは書き込む。これは本人にとって前向きな思考を習慣化させる効果があるし、「日報GOOD&NEW」が書いてあると、周囲の人間もコメントを返しやすい。これがまた「日報ストローク」になって「心の栄養」を組織内に充満させることにつながる。

 ちょっとした工夫で、日報(SFA)も楽しくなる。是非お試しあれ。

著者紹介:長尾一洋

長尾氏
長尾一洋氏

株式会社NIコンサルティング代表取締役
http://www.ni-consul.co.jp/

横浜市立大学商学部卒業。経営コンサルティング会社にて各種コンサルティングを経験し、1991年、NIコンサルティングを設立。企業の経営体質革新や営業力強化などに取り組み、1998年からは自社開発のIT日報「顧客創造日報」を発売。その後、連携システムを追加投入し、現在では「可視化経営システム」として企業経営を見える化する統合システムを提供しており、導入企業数は2100社を超えた。

可視化経営システム
可視化経営システム画面

主な著書に「仕事の見える化」(中経出版)、「すべての見える化で会社は変わる」「IT日報で営業チームを強くする」(実務教育出版)「幸福な営業マン」(ダイヤモンド社)「可視化経営」(中央経済社)などがある。
中小企業診断士。

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