店頭ではWindows XPが人気
で、次にリアルな中国の電脳街での状況。内陸部の某都市の電脳街にある海賊版ソフト屋をチェックしてみた。その都市の海賊版ソフト屋数軒は、いずれも何年経っても潰れず潰されず営業している老舗ショップである。
Windows 7らしきものは売っていたが、並行して「Windows Vista」(の海賊版)も現役、そしてWindows 7やWindows Vista以上に、多数の「Windows XP」(の海賊版)が売られていた。
軽くて必要十分なOSという理由もあるが、長期政権だったXP時代にパソコンを利用し始めた人が中国には多く、Windows XPに愛着を持っているというのも一因であろう。先日見かけた過去のWindowsがインストールできる「Windows大家族」なるパッケージは消えていた。他のOSはなく、すなわちLinuxもMACもなく、Linux用ソフトやMAC用ソフトも海賊版はなかった。Linuxはもともと中国で人気はないが、MACはリッチな若者に人気上昇中。しかし、小さなころから海賊版と触れてきた彼らはMACを買って、海賊版なしでどうやりくりするのだろう。
OS以外の海賊版の状況は……
海賊版ソフト販売店では、Windows以外ではAdobe製品やCAD製品、それにマイクロソフトはもちろんだがキングソフトなど中国産も含めOfficeソフトがよく売られていた。
ゲームは日本のエロゲーや一般向けゲーム、それに欧米のゲームが中心。中国のゲームは儲からないからと、スタンドアロンからオンラインへと完全にゲームベンダーが移行したため今はもはや売られていない。
セキュリティソフトは、誰もが正規版を買わないと更新できず、海賊版では意味がないことを口コミなどで知っているからか、海賊版は売られておらず、代わりに多くのPCパーツショップで売られている。
また、電脳街の海賊版ソフト屋では、アニメの海賊版も少し売られている。日本のものが主力商品であることは今も変わりないが、中国のアニメの海賊版もぽつぽつと売られ始めているのも気になるところ。売れると見込んでいるから売られているわけで、すなわち中国アニメも面白いと認識されはじめているのかもしれない。
ところで、海賊版Windows 7が出たことを中国のIT系メディアも紹介している。特に読者の反応が熱く激しい、中国三大ポータルサイトの1つ「網易(NetEase)」でWindows 7の海賊版が北京の中関村で販売されていた、というニュースが報じられるや、数千件の感想が書き込まれた。ちなみにニュースによれば、実はベータバージョンがリリースされたときにもすでにその海賊版があったという。
海賊版関連のニュースで盛り上がるとなると、毎度毎度「海賊版並みに安くしろ、そしたら買ってやる」「正規版なんて買う奴いるのか?」「中国人の所得を考慮せよ、海賊版万歳!」なんて海賊版擁護のコメントがこれでもかと出る。「正規版買おうよ、中国が嫌われるぞ」といった少数派の意見が出ようものなら、リアルでもネットでも多数派が少数派を囲い込んで叩くのが常だ。
ただし、今回の記事の感想欄に関しては「OS、ビデオカード1枚分だろ、買えよ」「知の結集に対価を払え」という少数派が、「中国版がリリースされなかろうが中文化した海賊版を使ってやる」「安くなったといっても、俺の生活費1ヵ月分だ」という、意地でも海賊版を使おうとする多数派に向かい、何と言われようと怯まず言い返す状況となっている。
ひょっとしたら中国も、OSくらいは一部の良識ある中国人が買ってくれるのかな、なんて僅かな希望を持つのだった。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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