今回は前回に続き、インテルのデスクトップ向けCPUのロードマップについて解説する。前回は現在主流のCore 2シリーズについてまとめたが、今回はこれからの主役である「Core i」シリーズを取り上げよう。
Core iシリーズの特徴をおさらい
Core iシリーズは登場前、「Nehalem」というコード名で知られていたCPUである。非常に特徴の多いCPUなので、順に挙げてみよう。
- ネイティブ・クアッドコア
- Core 2 QuadやPentium Dのように、2つのCPUダイをMCM(Multi Chip Module)の形でひとつのパッケージにまとめるのではなく、4つのコアが1つのダイ上に集約された構造。
- ハイパースレッディングの復活
- 各CPUコアごとに、2つのスレッドを同時実行できる仕組み。この結果、OSから見るとCPUコアの数が倍増して見える。実際Core i7搭載マシンでWindowsのタスクマネージャーを表示すると、CPUが8つ出現する。
- 共有3次キャッシュを搭載
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Core 2では、各CPUコアごとに32KBの1次キャッシュ(命令/データ分離)を搭載し、2次キャッシュは各コア共有のユニファイド(命令/データ共通)キャッシュ方式の構造だった。
対してCore i7では、コアごとに32KBの1次キャッシュと256KBの2次ユニファイドキャッシュを搭載。さらに全コア共通の8MBの3次ユニファイドキャッシュという構造になった。 - DDR3メモリーコントローラーを内蔵
- Core 2シリーズまでは、メモリーコントローラーはチップセット側に内蔵され、チップセットとCPUの間をフロントサイドバス(FSB)で繋いでいた。対するCore i7では、CPU側に3チャンネル分のDDR3メモリーコントローラーが内蔵された。
- QPIの採用
- Core i7ではFSBが廃止され、代わりにCPU同士、あるいはCPUとチップセットの接続用に、新しい「QPI」(QuickPath Interconnect)と呼ばれる高速パラレルバスを採用した。
- CPUパイプラインは小変更
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機能的には、拡張命令「SSE4.2」の搭載や、ロードユニットの強化といった小幅な改良が施された程度で、命令を処理するパイプラインの構造そのものはCore 2と大差ない。
ただし、Core 2の弱点だったデコーダーユニットの制約の多さを一部緩和したり改良したほか、命令群のループ構造を検出するLSD(Loop Stream Detector)と呼ばれるユニットの配置変更などにより、省電力化を図っている。 - 省電力機能の強化
- CPU内の電力供給回路周辺に、「Power Gate」と呼ばれる新開発のトランジスターを使うことで、待機電力を0に落とす機構を搭載。またC6ステートにおける省電力性を向上。
- Turbo Boostの強化
- 「Intel Turbo Boost Technology」と呼ばれる機構により、2段階の自動クロックアップによる性能向上が可能。45nm版Core 2シリーズ(Penryn)の場合、1段階のみで性能向上率も固定だった。
大雑把に言えば、CPUのパイプラインそのほかは、ほとんどCore 2と変わらないが、CPUの周辺回路を大幅に強化したと考えればいいだろう。
ちょっと厄介なのは、パイプライン構造がほぼ同一にも関わらず、上で挙げたLSDの配置換えにともなって、Core 2に最適化されたプログラムがCore i7では必ずしも最適に動かないケースが出てくることだ。これもあって、同一周波数のCore 2とCore i7を比較した場合、場合によってはCore i7がやや性能的に下回るケースも見受けられる。
もっとも、周辺回路の強化、特に大容量3次キャッシュの搭載や、3チャンネルのDDR3メモリーコントローラーの内蔵などにより、性能が底上げされているケースも少なくないので、Core 2に比べて若干高速化されている、といったところだろう。
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