HDDを搭載した初めての“ネットワークウォークマン”『NW-HD1』は2004年夏に、ウォークマン25周年を記念したモデルとして鳴り物入りで登場した。その登場から9ヵ月。間に2モデルをはさんだ最新モデルの『NW-HD5』では、連続30時間だった連続再生時間がさらに増え、連続40時間の再生が可能になっている。
NW-HD5の下地はNW-HD1ですでに完成していたという |
最新モデルの『NW-HD5』(左)と1号機の『NW-HD1』(右)。縦横のサイズは変わらないが、NW-HD5では基板サイズを小さくし、より大容量のバッテリーを搭載している |
実際に2つの機種の基板を並べてみると、初代機でも十分コンパクトだった基板がより小さくなったことが分かる。しかし、同時に感じるのはNW-HD5の基本部分はNW-HD1で完成していたという点だ。NW-HD1の基板を開発した際の苦労について、原口氏はこう語る。
基板の裏側にはまったくチップが載っていない。電気担当者に対するメカ担当者からのリクエストは0.5mm以内に収めることだったという |
“世界最小・最軽量”を実現するために当時電気グループのリーダーだった原口氏に課せられたのは“コンマ・ゼロ・数ミリ”の精度。つまり10ミクロン単位での調整だったという。特に頭を悩ませたのが、チップメーカーの公開している仕様が「大抵“Typical”の値(標準値)で、必ず公差が生じる」点だという。本体の箱に基板を収めるためには、もちろんすべてを“Max”の値(最大値)で揃えなければならない。小さな誤差にも気を配りつつ、必要なチップを丹念にレイアウトしていった。