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HD20GA7

HD20GA7

2005年12月05日 00時00分更新

文● 編集部・小林 久

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HD20GA7

ケンウッド

オープンプライス

本記事は、2005年7月にASCII24 Newsに掲載したインタビュー記事を転載したものです。現在は、「HD20GA7」の上位機種として「HD30GA9」が発売されています。HD30GA9のレビュー記事も合わせてご覧ください。

携帯プレーヤーに4番バッターを投入した、ケンウッドの意気込み

 (株)ケンウッド初のハードディスク内蔵型の音楽プレーヤー「HD20GA7」が、先週半ばから店頭に並び始めた。最大の特徴は“音質”へのこだわりだ。各社のHDDプレーヤーは世代を重ねる中で少しずつ進化を続け、音質面での改良も行なわれているが、これまでの中心的な課題は小型化や機能、デザインなどであり、音響機器として長期間の使用に耐えうる製品は決して多くはなかった。

HD20GA7

 しかし、ここにきてそういった雰囲気に“変化の兆し”が出ている。例えば日本ビクター(株)は6月8日に開いた発表会で「パソコンの周辺機器ではなく、オーディオ機器として製品を企画した」と開発の姿勢を表現。記事にはできなかったのだが、先日取材したソニー(株)の技術者も「ソニーが作る以上、音がいいのは当たり前」とコメントし、音質に対する自信をのぞかせていた。MDやポータブルCDの市場がシュリンクする中、国内のAV機器メーカーはそのリプレースメントとして、携帯音楽プレーヤーを捉えている。“いい音楽をいい音で聴く”という最も基本的かつ重要な課題が、ようやく携帯音楽プレーヤーの世界でも重視されるようになったのだ。

 ケンウッドは“音の責任者”である“音質マイスター”という役職を、企画・開発・販売の責任者とは別に3年前から設け、その許可が下りた製品だけを市場投入するようにしている。今回発売されたHD20GA7も、この音質マイスターの厳しいチェックをパスしたものだ。東京・八王子にあるケンウッドの本社を訪ね、HD20GA7にこめられた音質に対するこだわりを聞いた。



音質マイスターの仕事とは

 ケンウッドで“音質マイスター”の肩書きを持つ人物は現在3名。それぞれホームオーディオ、スピーカーシステム、カーオーディオの各事業部に在籍している。今回インタビューした、ホームエレクトロニクス事業部音質研究室主幹の萩原 光男(はぎわら みつお)氏は、ケンウッドに入社後、ホームオーディオの設計を10年、スピーカーを10年、カーステレオを10年担当した後、現在の役職に就任した。現在はホームオーディオ製品の“音質”責任者として、ハイエンドの製品だけではなく、普及価格帯の製品も含めたほとんどの製品のチェックを行なっている。

 “音質マイスター”の仕事について萩原氏は言う。

音質マイスター
HD20GA7の“音質マイスター”、萩原 光男氏
[萩原] こういう制度は、オーディオブームのころには必要なかったんですね。どのメーカーもこういうことをやっていたし、技術者もきちんとした耳を持っていた。でも、今のモノ作りの現状を見ていると、電気技術者にとってオーディオはそんなに一般的なものじゃないなと感じる。むしろコンピューターなどのほうが一般的になってきて、こういう仕事ができる人間が減っているんですね。一方でモノ作りは本物志向になっていて、良いものを作るためには、品質を管理できる人間が必要になる。

 萩原氏は過去のキャリアの中で、カーオーディオの開発に携わったことが現在の仕事の大きなプラスになっていると言う。

[萩原] カーオーディオっていうのは、非常に条件が厳しいんですね。頭の中にいい音のイメージを作っていって、それに近づけていく作業が必要です。これはポータブルオーディオのように、なかなかいい音が出てくれない製品では共通なんです。

 ケンウッドの考える“いい音”とは何なのか。商品企画を担当したホームエレクトロニクス事業部商品企画設計部プロジェクトグループグループ長の小川 靖徳(おがわ やすのり)氏は以下のように述べる。

[小川] 概念的な話をすると、ひとつは原音に忠実であること。歌手やグループには上手下手がありますが、原音が一番いい音なのは間違いない。だから、それをいかにうまく出していけるかが重要です。その一方で、製作者が意図した音を表現することも大事です。これは原音とは少し違う。例えば、映画などの爆破音は原音を録音したのではなく、ライオンの声やモノをぶつけた音など組み合わせて作っている。この“原音再生”と“製作者の意図した音”という似て非なる2つの理想のバランスをとるのが音作りだと思います。

 小川氏は「オーディオ専門メーカーのケンウッドが、そうでないメーカーと音で勝負したら“10対0のコールドゲーム”で勝てるぐらいの気持ちでないといけない」と意気込みを語る。

[小川] その意味で、われわれが作っているのは“いい音”を作るのではなくて、“いい音楽を再生する”機械と言えるかも知れない。“音”というより“音楽”として捉えてもらったほうがいいかもしれません。


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