このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

池田信夫の「サイバーリバタリアン」第54回

ブログの炎上を引き起こす匿名性

2009年02月13日 10時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

炎上で初の刑事事件

事件の被害者になったスマイリーキクチ氏は自身のブログで事件の顛末を報告した

 最近、ネット上の表現をめぐる事件が相次いでいる。2月5日、お笑いタレントのブログに「殺すぞ」などと書き込んだ19人が検挙された。これはブログの「炎上」が刑事事件に発展した初のケースだが、掲示板では同様の事件が多発している。警察庁によると、2007年のウェブ上の名誉棄損や中傷などの被害相談は、8871件と過去最高を記録した。大麻所持のような「被害者なき犯罪」の摘発には熱心な警察が、多くの被害者を出しているネット犯罪に及び腰なのは不可解だ。

 何かとネット上の犯罪で話題になることの多い、匿名掲示板「2ちゃんねる」の管理人である西村ひろゆき氏は、多くの名誉毀損訴訟で敗訴しても賠償金を払わず、差し押さえを逃れるために掲示板を海外の会社に売却したそうだ。このような白昼堂々の脱法行為を、警察が黙認しているのは奇妙だ。ある警察OBによれば、「2ちゃんねるは犯罪情報の宝庫なので、潰すと情報収集がむずかしくなる」というのが1つの理由だそうだが、これでは警察の捜査コスト削減のために多くの人々が犠牲になっているようなものだ。

 このコラムの第2回でも書いたように、こうした匿名の中傷が日本のウェブ上の言論を萎縮させている。私は、こうした状況を変えようと、先月「アゴラ」というオピニオンサイトを開設した。このサイトはコメントもトラックバックもなしだが、掲示板や「はてなブックマーク」による中傷はどうにもならない。

 ウェブ上の表現の自由はむずかしい問題だが、基本的には公権力が介入しないで当事者同士の紛争処理で解決すべきだ。しかし匿名の名誉毀損の場合は、そういう紛争解決そのものが不可能だ。したがって匿名の場合には警察が摘発し、実名の場合には民事にまかせたほうがいいのではないか。

前へ 1 2 次へ

この連載の記事

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ピックアップ

富士通パソコンFMVの直販サイト富士通 WEB MART