「この握手した手を、いつか震わせてやる」――。
2008年9月に独ベルリンで開催された世界最大の家電ショー「IFA」(Internationale Funkausstellung)の初日。パナソニックの大坪文雄社長は、主要な電機メーカーのブースを訪問して回った。それぞれのブースで出迎えたのは、各社の首脳たちだ。
「来年からは、欧州市場にも白物家電で本格的に参入させていただきますよ」
そう語る大坪社長に、各社首脳は異口同音に、笑顔を見せながら、「それはウェルカムだ!」と回答した。
後日、大坪社長はその時の様子を振り返り、「その笑顔に、よほどの自信があるのかと思ったが、ブースを見てみると、我々の勝ち目は十分あると感じた。いつかはあの時の言葉を後悔させる。そう強い決意をした」と、欧州市場攻略に強い意志を見せた。
パナソニックは、ここ数年、欧州市場で着実にシェアを高めてきた。
ドイツでは、プラズマテレビ、液晶テレビ、デジカメ、レコーダー、ビデオカメラなどによるコンシューマエレクトロニクス商品全体で、市場シェアは14.1%とトップシェア。一方、プラズマテレビでは、2008年度第2四半期実績で、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペインの主要5カ国の集計で4割強のシェアとなり首位。液晶テレビを含めた37インチ以上の薄型テレビでは、14%のシェアとなり、2位となっている。また、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペインの各国においては、コンパクトデジタルカメラではパナソニックがトップシェアとなっている。
加えて、英国におけるブランド価値調査では、家電メーカーとして、ソニーに続き第2位になったという。ブランド価値の高さが、アップル、サムスン、フィリップスを抑えて2位となったことには大きな意味があるといえよう。
実際、欧州地区における同社販売金額は、2003年を100とすると、2007年実績で134にまで上昇している。2008年度上期(4~9月)の実績も、前年同期比9%増の5754億円と成長を遂げ、パナソニック全体の13%の売り上げを欧州地域であげている。
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