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柴田文彦の“GUIの基礎と実践” 第13回

柴田文彦の“GUIの基礎と実践”

MacとWindows、「検索」の進化を振り返る

2008年11月26日 18時00分更新

文● 柴田文彦

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ファイル名の検索からファイル内容の検索へ

 パソコン上に高度な検索機能が実現されたのは、もちろんTigerやVistaが最初ではない。MacではSystem 7の時代から、Windowsでは遅くとも3.1の時代には、すでにOS標準の検索機能が備わっていた。

 当初の検索機能は、主にファイル名を頼りにして検索するものだ。それでもSystem 7では、ファイルのサイズ/種類/ラベル/日付/バージョン/コメント──といった、ファイルに付随する属性を基に検索することもサポートしていた。

 一方のWindows 3.1はファイル名のみによる検索だったが、「*」の記号をどの文字列にも当てはめられるワイルドカードとして使うことができた。これは、DOS時代のコマンドにおけるファイル表記方法を、そのままGUIに持ち込んだものであり、DOSの上にGUIを後付けして実現していた当時のWindowsの内情をそのまま露呈したものと言える。

MacOS

System 7のファイル検索機能。さまざまな条件を指定できるものの、1回の検索には1つの条件しか選べなかった。また、ファイルの内容までは検索できない

Windows

Windows 3.1のファイル検索機能。指定したディレクトリーの中を、そのサブディレクトリーも含めて、ファイル名によって検索できた。ワイルドカードが使えるのが特徴だ

 Macの検索機能はSystem 7.5になると、複数の条件を組み合わせて指定できるものに進化した。それまでは、さまざまな条件は指定できたものの、一度には1つの条件しか付けられなかった。この複合した条件の指定方法は、現在の電子メールソフトのフィルターの条件指定などにも通じる。ただし、当時の検索機能では、ファイルの内容までを検索条件に入れることはできなかった。

MacOS

System 7.5のファイル検索機能では、複数の条件を同時に指定し、それらを「AND」した条件での検索が可能となった。条件の数も自由に増減できるが、ファイルの中身の検索機能はまだ実現していない

 Windowsの検索機能もWindows 95からは大幅に進化している。ファイル名以外にも日付の範囲を指定でき、さらにファイルの種類やサイズの範囲、ファイルに含まれる文字列によって検索することが可能となった。

 ただし、ファイルの内容検索をサポートしたことは画期的だったはずだが、その機能は「その他」のタブの中に配置され、あたかもあまり使ってほしくなさそうに見えるのはなぜなのか。当時の検索機能は、現在のようにあらかじめインデックスを作成しておく仕組みにはなっていなかったため、内容の文字列で検索すると時間がかかり、しかもその間何もできなくなるほど負荷の重い処理だったからだ。

 そうせざるを得なかったのは、当時のパソコンの処理能力にも、記憶容量にも余裕がなかったという事情もあるが、ファイルの内容検索機能に対するユーザーの要求が、さほど大きくなかったのも事実だろう。

Windows

Windows 95のファイル検索機能。インターフェースとしては3.1の同機能と似た面があるが、タブを使うなど、当時としてのモダン化が施されている。ファイル内容の検索も可能だった

 Mac OS 8.5から採用した「Sherlock」では、さまざまな目的に特化した多くの検索機能を「チャンネル」によって分類し、プラグインによってチャンネルを追加できるなど、独自の総合検索機能を実現した。その中には、ローカルなディスク内を検索するチャンネルも標準装備していた。ただし、ファイルの内容で検索できるようになっていたものの、インデックスをあらかじめ作成する仕組みは採用しておらず、時間と負荷のかかるものだった。

 XPの検索機能は、機能よりもインターフェースに凝ったもので、ユーザーに質問を投げかけることで、複雑な設定操作の負荷を軽減するウィザード方式を取り入れた。インデックスを作成しておく機能はあるものの、効果はかなり限定的で、中身の検索には多大な時間を要する。それが、Mac、Windowsを問わず、旧世代の検索機能の限界であり、特徴と言えるだろう。

MacOS

Mac OS 8.5が装備した「Sherlock」は、パソコンに内蔵する検索機能としては、歴史に残るものだった。ファイルや情報の種類ごとにプラグインを提供し、それぞれ最適な条件設定や結果の表示方法を実現していた

Windows

Windows XPのファイル検索機能。犬のキャラクターを登場させ、親しみやすさを増す工夫が盛られている。条件設定は順に質問に答えるウィザード式となっているが、わかりやすい半面かゆい所に手が届かない面もある


筆者紹介─柴田文彦


著者近影

MacPeopleをはじめとする各種コンピューター誌に、テクノロジーやプログラミング、ユーザビリティー関連の記事を寄稿するフリーライター。大手事務機器メーカーでの研究・開発職を経て1999年に独立。「Mac OS進化の系譜」(アスキー刊)、「レボリューション・イン・ザ・バレー」(オライリー・ジャパン刊)など著書・訳書も多い。また録音エンジニアとしても活動しており、バッハカンタータCDの制作にも携わっている。


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