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つなげ!オンガク配電盤 第7回

開発者が語る「KORG DS-10」の秘技

2008年12月05日 15時00分更新

文● 四本淑三(powered by 武蔵野電波)

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コルグ開発部の金森与明氏。さまざまなエポックメイキングな製品に関わってきたKORG DS-10・影の功労者

 「DS-10 EXPO in TOKYO 2008」から1ヵ月。あの時の出演者が披露してくれた演奏、そしてワザの数々は実に衝撃的だった。

 しかし全国に散らばるDS-10フリークの中でも、あの場所にいられたのは一握りの人たちだけ。しかもワザの詳細はついては、いまだに良く分からない部分もある。

 このまま放置しておいては、大きな知的財産の喪失だ。そう考えた筆者は、DS-10 EXPOで披露されたワザを確かめるべく、今回の企画を思い立った。まず今回はDS-10 EXPOの特別ゲストであったコルグ開発部の金森与明氏に取材し、あの衝撃の裏ワザのすべてを再現してもらった。


コルグ・金森与明氏とは?

 コルグで設計されたDS-10のシンセサイザー部分。音の責任者が金森さんだ。DS-10のプリセット音やデモソングも彼の作。ユーザーが普段DS-10で作っている音は、彼が仕掛けたものなのだ。

 DS-10 EXPOでは、DS-10の内部構造を知り尽くしていなければ不可能なワザの数々を披露。プロデューサーの佐野さんに「そ、それは何かのバグじゃないですよね?」とビビらせたのであった。


人間の感覚に合わせた調整が必要


── 金森さんは普段どういう仕事をしているのですか?

取材に答える金森氏。発売後いち早くDSiを入手しており、音の良さについてコメントしていた

金森 シンセサイザーの音全般のディレクションをしています。パラメーターの構成や効き具合、音質的にどうすべきか。そして最終的にその楽器の出音(プリセットやデモソング)をまとめています。

── DS-10の音色チューニングも金森さんですよね。パラメーターの構成も提案されたんですか?

金森 企画当初は「MS-10」がモチーフとして挙げられていました。そのまま作ってもいいけれど、せっかく作るんだったら、もっと面白い構成もあるなぁと……。

 MS-10は「1オシレーター」(波形や音の高さを作る回路)+「1フィルター」(特定の周波数をカットしたり、強調する回路)構成ですが、2系統のオシレーターがあったほうがシンセとしての面白さは格段にアップします。そのあたりは提案しました。最初は反対されたんですけどね。

── それはどうして?

金森 パラメーターが多くなると、複雑な方向に行く可能性があるというところですね。最初のコンセプトでは「シンプルにMS-10を再現」ということだったので。

── なるほど、結果的に2オシレーターが採用されたわけですね。プロデューサーの佐野さんによると「ツマミを1ドット動かすとパラメータが1つ動く」ような単純な内容ではない、ということだったのですが、それはどういうことですか?

金森 シンセ部分のパラメーターの裏には、実はいろんなパラメーターが隠れているんです。例えばカットオフは(ツマミとしては)1つしか見えていないのですが、内部的なパラメーターが3~4個くらい、微調整ネジみたいな形で隠れているんです。

単純に周波数をつまみの目盛りに割り当てただけでは、とても使いにくいインターフェースになってしまうと話す金森氏

── もう少し具体的に知りたいですね。

金森 パラメーターは複数の内部パラメーターの組み合わせで構成されていて、ひとつを動かすと、それらが連動して音になります。実際の楽器でも同じだと思うんですが、ピアノで言えば、鍵盤の奥にハンマーがあって、弦をたたきます。

 ハンマーの固さとか、弦の張り具合、叩く位置なんかで音が変わってきますよね。同じようにシンセサイザーでも調整ポイントがいくつもあって、調律師がネジを微調整しながら音を合わせて行くような感覚で、音を決めていきます。

── 内部パラメータにはどんなものがあって、何をいじっているかというのは秘密?

金森 ですね(笑)。音質面でこだわったのは、DS内蔵スピーカーとヘッドホン出力の両方がともに「いい感じ」で鳴ることでした。

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