このページの本文へ

柴田文彦の“GUIの基礎と実践” 第11回

柴田文彦の“GUIの基礎と実践”

「ヘルプ」機能から見る、Mac OSの今と過去

2008年11月15日 16時00分更新

文● 柴田文彦

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

試行錯誤で発展したGUIとヘルプ


 Macが一般ユーザー向けのパソコンとして、全面的にGUIを採用して登場したとき、コマンドを入力して操作する、初心者にはわかりにくいインターフェースの欠点を解消するものとして大歓迎された。

 コマンド入力では、不慣れなユーザーにとってはどのような機能が使えるのかさえわからない。マニュアルを読んで機能を理解し、コマンドを覚える必要があった。

 対してGUIは、メニューを開けばどんな機能を持っているかが一目瞭然で、操作するためにコマンドを覚える必要もない。初めて使うソフトでも、マニュアルなしにある程度使いこなせるという点がウリとなった。それもあって、分厚いマニュアルやヘルプ機能などはGUIには不似合いで、必要としないことが美徳と考えられていた。

 初代のMacには、もちろん「ヘルプ」メニューなどは存在せず、一部の例外的なソフトを除いてFinderにすらヘルプ機能は備わっていなかった。その例外的なソフトとは、ほかのさまざまな面でも例外的な、付属のペイントソフト「MacPaint」だった。ヘルプと言っても、ツールボックスの説明やショートカットの使い方をそれぞれ1枚の絵で説明しているだけだが、それでも例外的な存在だったのだ。

MacPaint

ペイントソフトとしてだけでなく、GUIを利用したパソコン用ソフトの原型と言える「MacPaint」は、効果的なヘルプ機能を例外的に装備していた

 その後、Macでもハードの能力が向上し、ソフトの機能も複雑になってくると、ヘルプ機能が求められるようになる。当時の代表的なソフトとしては、これまたさまざまな面で例外的な「HyperCard」が挙げられる。

 このソフトは、一般のユーザーに対しても、いわゆるハイパードキュメントのオーサリングを可能にするという画期的な機能を備えていた。それだけに機能は豊富で、プログラミング言語も含み、ヘルプ機能は不可欠だった。名前は「ヘルプ」ながら、これは総合的なオンラインマニュアルであり、オンラインマニュアルの普及に先鞭をつけたと言えるだろう。

バルーンヘルプ

本来説明など不要なはずのGUIパーツも、複雑になるにつれてヘルプ機能を要求する。バルーンヘルプは、うるさく感じられることもあったが現在にも通じるものだった

HyperCard

当時の一般ユーザー向けパソコンソフトとして例外的に複雑な機能を装備した「HyperCard」は、ヘルプ機能についても先駆的な役割を果たした

カテゴリートップへ

この連載の記事

ASCII.jp RSS2.0 配信中