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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第11回

テキストメモ専用機「ポメラ」は使える道具か?

2008年10月31日 09時00分更新

文● 西田 宗千佳

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バッテリー持続時間は本当に良好
「特化の良さ」を望むか否か

手と比較して

手と比較して。キーのサイズだけでなく、キーボード全体がボディーと足で支えられているため、安定して入力できる。テキスト入力に特化した分だけ、その快適さを追求している

 こうした制約を見ると、「21世紀にもなって、そんなに機能の少ないエディター専用機を使わなくても……」と思う人も少なくないだろう。言うまでもなく、モバイルPCやNetbookを持ち歩けばPCのフル機能を扱えるわけで、ポメラのような制限とは無縁である。また、ほとんどのスマートフォンには、ポメラよりも高機能なテキストエディターが存在しており、外付けキーボードを併用すれば、ポメラに近い入力効率を実現できる。

 だが、それでもあえて筆者は、「PCやスマートフォンにはない快適さがポメラにはある」と断言したい。それは「軽快さ」だ。

 機能制限は多いものの、ポメラの動作はきわめて快適で快速だ。日本語入力機能として採用されているのは、ご存じジャストシステムの「ATOK」。マシンパワーの問題からか、PC向けの最新版に比べると誤変換が多い印象もあるが、実用には十分といった印象だ。PCと同じようにフルスピードでタイプしても、入力や変換の遅延は一切感じない。

 機能がシンプルであるということは、逆に言えば「なにも考えなくていい」ということでもある。思いついたことや、耳にしたことを書き殴っていくにはちょうどいい。

 それを支えているのが、バッテリー駆動時間の長さと起動の早さだ。

ポメラのバッテリーは単4電池2本

ポメラのバッテリーは単4電池2本。駆動時間は非常に長く、携帯電話以上だ

 スペック上では、バッテリー駆動時間は約20時間。今回、試用のために1時間連続使用を数回繰り返して、7~8時間程度は使ったはずだが、バッテリーメーターに変化はない。パソコンやPDA、携帯電話とは比べものにならないくらい安心感がある。しかも、バッテリーは単四電池2本であり、どこでも容易に入手できる。

 起動にかかる時間は掛け値なしに2秒以内。起動した瞬間から作業が行なえるのも快適である。作業終了時には電源ボタンで終了してもいいし、キーボードを折り畳んでしまってもいい。キーボードを折り畳むと、自動的に電源が切れるからだ。

 これらの要素が、「紙のようにメモできる」という主張の元となっているのだろう。それは確かにそのとおりで、モバイルPCとはまた別の良さがある。

 ただしその一方で、現在の「テキスト制作」のトレンドから言うと、「書ける」だけでは不満を感じるのも事実である。

 現在は「なにかを見ながら」文書を作ることが多い。特にネットの情報を見ながら、別のテキストを書くことが増えている。テキストを人に渡すのも、メールなどのネット経由が増えている。これらはすべて、ポメラではできない。文書編集機能もひとつの文書しか開けないので、複数の文書を切り替えながら作業することは難しい。動作が速いので、ファイルを読み込み直して内容を確認することはできるが、操作手順が増えるので、頻繁にやるとやはり面倒だ。

 結局、ポメラは「メモ作成機」なのだ。最終的な編集と文書仕上げには向かないが、その素材となるメモをガンガン作っていくなら非常に快適だ。最終原稿ではなくメモならば、8000字のサイズ制限も貧弱な編集機能も問題とはならない。一番大切なのは「すぐ使える」ことであり、「入力をさまたげない」ことだからだ。

 このあたりの感覚は、「思いついたらすぐ書ける道具が必要か否か」という辺りで、変わってくるだろう。筆者には、ポメラの快適さはなかなか捨てがたい。仮にモバイルPCを持ち歩いていたとしても、「また別のものとして使いたい」と感じるほどである。

 だが、「モバイル機器はネット利用が中心」ならばそうではない。何かを書くにはネットを見ながらで、それを送る/表現するにもネットを使って……と考えるなら、携帯電話やスマートフォン、Netbookでなければならない。

 ポメラは、キングジムという文具メーカーの「初物」としてはきわめて良くできた製品である。だがその性質上、「必要な人」「そうでない人」は大きく分かれそうだ。

オススメする人
・即座に、いつでも使えるメモマシンが欲しい人
・ついバッテリーの充電を忘れる人
ポメラ DM10 の主なスペック
CPU 不明
メモリー 1ファイル/8000字を6ファイル
ディスプレー 4型 640×480ドット モノクロ
サイズ 幅145×奥行き100×高さ30mm(折りたたみ時)
重量 約370g
バッテリー 単4アルカリ乾電池×2、コイン電池CR2032×1
バッテリー駆動時間 約20時間
対応OS(PCリンク時) Windows Vista/XP Home Edition、Professional
価格 2万7300円

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)がある。


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