このページの本文へ

デザイナー、ヤン・チップチェイス氏インタビュー

日本から学ぶ、10億人が使うノキアのケータイ

2008年10月10日 13時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

日本を象徴する3枚の写真

 チップチェイス氏は日本で既に8年間生活をしている。そこで、日本を世界に紹介するときの、象徴的な写真を3枚選んでもらった。

 1枚目はトースターと木製の箸の写真。自宅ではイギリスのトースターと木製の箸を使っているそうだ。トースターに何かが詰まったとき、熱が伝わってこず、完璧にトースターの中を掃除できる木製の箸を重宝している。

自宅のトースター。「ローカルなものとグローバルのいいところ」とチップチェイス氏。photo by Jan Chipchase

 「世界中で売られるトースターに木製の箸を付けるべきだ」とお気に入りの組み合わせだ。ただこの写真は、チップチェイス氏自身が、ヨーロッパ的な視点と日本的な視点で観察をしている点を紹介するのにぴったりな表現だという。

 2枚目は渋谷の交差点を上から写したの写真。「Micro Coordination」とチップチェイス氏は表現するが、細切れの時間を非常に有効活用している都市生活がそこにある。

人の行き交う渋谷駅前の交差点。ここは外国人観光客が写真を撮っている様子を頻繁に見かける。photo by Jan Chipchase

 例えば90秒間の信号待ちの間に、電話をする人もいれば、待ち合わせのメールを返す人もいる。あるいはライブのチケット予約をしたり、CDを買ったり。過密な都市構造でも、交通機関が正確に動いているため、数分、数秒の細切れの時間を大切にする傾向が生まれていると分析する。

 3枚目は居酒屋の料理の写真。ここで表現しているのは、日本人の気遣いだ。大皿で料理を取ったときに、周囲に遠慮して最後に残った料理を取らない人が多い。これだけ過密に動いていながら、日本人は非常に周囲にも気遣いがある人たちだと感じているそうだ。

最後の残った料理は確かに遠慮する人が多い。photo by Jan Chipchase

 これらから、非常に細かい部分にも十分な注意を向ける日本の文化性を感じている。ケータイのデザインにしてみても、ちょっとした角度や素材、表面のテクスチャ-に至るまで、デザイナーだけが知っているような点にも目を向けるほど、日本の消費者の目はとても厳しいことを示している。

 「それら細かなこだわりがノキア製品にも反映されている。ノキアユーザーはそんな細部を評価しているのではないか」とチップチェイス氏は語った。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン