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デザイナー、ヤン・チップチェイス氏インタビュー

日本から学ぶ、10億人が使うノキアのケータイ

2008年10月10日 13時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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人間の行動の共通点と相違点を知る

日本に2000年から住んでいる日本通のヤン・チップチェイス氏。もっとも、世界中を飛び回っているため、日本にいないことも多い

 チップチェイス氏は、時にはタイ・バンコクのワカモノのオシャレを研究し、時にはチベットの写真館を調べる。あるいはアフガニスタンに行くこともあれば、渋谷の交差点を観察することもある。世界各地の共通点と相違点を知ることに力点を置いているそうだ。

 「まず異なる人種や文化を研究していると、人にはとても多くの類似性があることに驚かされます。とても深いレベルまで掘り下げれば、世界中の人々の行動は共通点だらけ。しかし、その表現方法や伝わる意味が大きく違います」

 例えば日本では、ブランド品を身につけているが、タイのバンコクの女の子たちは歯列矯正具のイミテーションをアクセサリーとして、こぞって付けていると言う。身に付けるものによって何かを表現することは同じだが、日本人はブランド品でアイデンティティーを表現し、バンコクの少女は矯正具で自宅の裕福さを表現している。つまり、ステイタス感を表しているのだ。

 また、同じ機能を持つモノであっても、お隣の中国に目を移すと捉え方がまったく違う。

 「日本では98%の人が財布を持っていますが、中国・北京で同じ調査をすると55%の人しか財布を持っていません。人はリスクを回避しようとしますが、手段は違います。日本人はなくすリスクを避けるために大事なモノを財布に入れ、中国人は盗まれるリスクを避けるために大事なモノは財布に入れないのです」

 「財布」という同じモノと、「大事なものをなくさない」と同じ目的があったとしても、文化や都市の社会状況が違えば、全く反対の行動を取ることもあるのだ。

 世界に向けてケータイを送り出しているノキアにとっては、こうした文化の違いをキチンと理解した上でのモノづくりが求められているのだ。

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