前回は、楽天(株)の技術戦略の中核を担うR&D(Research and Development)部門「楽天技術研究所」の森代表に、研究所に入るまでの経緯をお話いただきました。今回は同研究所のフェローであり、Rubyの開発者であるまつもとゆきひろさんとの関わりや、インターネットを中心としたこれからの社会の変化に対する持つべき「ビジョン」についてのお話を紹介します。
来る6月に発表予定? 楽天技術研究所が進めるRuby研究開発
―――楽天技術研究所の研究内容についてお聞きします。楽天ではプログラミング言語の「Ruby」を使っているようですが、楽天技術研究所でもRuby関連の研究開発を行なっているのでしょうか? また、フェローであり、Rubyの開発者で知られるまつもとゆきひろさんとのお付き合いが始まった経緯を教えて下さい。
森:現在の「my Rakuten」というサービスは、Ruby on Railsで作られています。まつもとゆきひろさんとの付き合いは、楽天技術研究所の技術顧問である米澤明憲先生を介して始まりました。最初にお会いした時、まつもとさんから「Ruby(が普及していくためには)には、実績が必要で、そのためには企業で使って欲しい」と話がありました。それで有志を集めて楽天へRubyを導入する「Rubyサービス開発プロジェクト」がスタートしたのです。また、まつもとさんからはもう1つ「Rubyはスケーラビリティが必要で、大規模なデータや分散環境で使えるようにならないといけない。そういうところで簡単に使えるフレームワークが欲しい」というお話もありました。それで、フェローという形でまつもとさんに研究所に入ってもらい、Rubyによる「分散フレームワーク」と「グリッドシステム」の開発を始めたのです。
「分散フレームワーク」は、「Fairy」という名前が付いていて、これは複数のマシンで処理を分散して行なうプログラムを記述するためのものです。目標としては「空いているマシンを使って分散処理するのに、必要なコーディング量が少なくて済む」というものです。ただ、まだ完成しているわけではないので、どの程度まで簡単になるのかは見えていないのですが……。
「グリッドシステム」は「ROMA」と名付けていて、これは、Fairyと対になるものです。数10~数100台で動くグリッドシステムで、データを分散記憶するものになります。我々は「ホットスケール」と呼んでいますが、構成の変更がシステムを止めずに行なえるようになっていて、ユーザーはどのノードに何が記憶されているかを気にする必要がありません。6月のRuby会議でFairyとRomaの「デモ」が行なわれれば、これが最初の公開になるはずです。
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