「決め付け」が思考の幅を狭める
20代後半~30代前半のエンジニアがステップアップをしたいと考えたとき、自分がイメージしている世界やサービスをパワーポイントなどで説明できる「プレゼン力」も必要だが、根源的なところから考えをまとめ上げる力があれば、ビジネスのバリエーションは広がるものだ。
「例えば、サービスがすでに載ったブラウザではなく、『ブラウザとはこういうものだから』といった原点に戻って、定義に近い部分から、『データとはこういうものだから、約束事を決めればこのように通信ができるはずだ』という数学的思想を身に付けているとビジネスのバリエーションは広がると思います。個々の機能など細かい部分で付加価値を追及すると、結局は価格競争に陥ってしまうわけです。もっと根源的なところから考えをまとめる、考えを構築することがビジネスで成功するカギだと思います」
つまり、開発には“斬新な発想”が必ずしも求められるわけではなく、数学的な「定義にさかのぼって考える力」と「その考えをまとめ上げる力」が必要なのだ。
「アメリカの自由に討論するためのブレーンストーミングでは『こんなことを言わなくてもわかる』ということや案件の定義をしっかり書くことからスタートします。でも、その後の話を構築させるスピードが早く、結論の出し方がはっきりしてあいまいさがないのです。それと重要なのが、彼らは『普通はこうだ』という言い方をしません。もともと移民の国ですから、『普通』というのがないんですね。一方、日本ではどうしても『普通はこうだ』というイメージに縛られてしまいがちでしょう。プロジェクトの立ち上がりは早いのですが、『普通』に縛られることで自由度を犠牲にする面があるように思います。初期の立ち上がりのスピードはある程度犠牲にしても、『本当に欲しいものは何か』『どんな世界を欲しているのか』を徹底的に議論し、明確に定義することが、製品のオリジナリティーにつながってくるのではないでしょうか」
固定観念に縛られないで、あらゆる情報を言葉にして論理的に持っていく。論理で固まるとそこからの発想が柔軟になるという。新しい技術やサービスが生まれる原点が、数学の論理的な考え方にあるのだ。
- ■取材協力
NetCommons
国立情報学研究所
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