DVD規格は2011年に終わる!?
── コピーフリーにすることで、やはりネットに「海賊版」が出回りやすくなると思いますが……
小寺 果たしてそうでしょうか? ほとんどの消費者はネットにコンテンツを流したいんじゃなくて、映像ライブラリーの構築やタイムシフトの目的でレコーダーを使っています。
ネットにコンテンツを流すという不健全な方向に行くユーザーがいるのは、放送がコンテンツの露出を絞りすぎているからですよね。このスタイルのビジネスモデルであるかぎり、負のスパイラルはなくならないでしょう。
健全なユーザーは自力で放送を録画して、一生懸命コンテンツを大事にとっておこうとしている。やっぱり真面目なユーザーのためにならないコピー制御は、やめるべきだと思う。何もかも「ダメ、ダメ」では、文化も産業も成長しないですよ。コピー制御の弊害が、HD DVDからBlu-rayに移行できないという分かりやすい形で問題化した今、もう一度考え直すべきではないでしょうか。
── メディアの移行というと、コピーワンス番組を保存したDVDでも同じ問題が起こる可能性がありますよね。
小寺 ええ。記録メディアの歴史で見ると、恐らくDVDの記録メディアとしての役目は、10年ぐらいなのだろうと思います。DVDレコーダーが出てきたのは2000年ですが、次世代DVDの趨勢が決まった今年から除々にフェードアウトしていって、地上アナログ放送が終わる予定の2011年頃終わる。だから次は、DVD-Rのコンテンツを、BD-Rに移行したいというニーズも遠からず出てきて、またユーザーの不利益が顕在化するでしょう。
ちなみに、個人的には次世代DVDの記録メディアとしての寿命は、もっと短いんじゃないかと思っています。将来は光学メディアでライブラリを構築するのではなくて、大容量のホームサーバーに映像を溜め込んだり、コンテンツサービス業者からオンデマンドで見たいタイトルを取ってくるという方向にシフトしていくのではないでしょうか。
世界はその方向に進みつつあります。ただ、今のままでは日本だけこのような革命が起こらない可能性はありますよね。
筆者紹介──小寺信良
映像系テクニカルライター/コラムニスト。テレビ映像の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、94年にフリーランスとして独立。以降映像、音楽を軸に、AV機器からパソコン、放送機器まで、幅広く執筆活動を行なう。主な著書に「メディア進化社会」(洋泉社)など、津田大介氏との共著に「CONTENT'S FUTURE」(翔泳社)。ウェブでは、ASCII.jpの「コデラノブログ 3」のほか、インプレス「AV Watch」や「ITmedia +D」にて、週刊コラムを連載中