D3と共通化を図ったボディーにもこだわり
── 本体のデザインに関してはいかがでしょうか。
檜垣 D3のデザインは、ニコンF3のころから付き合いのあるイタリア人デザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ(Giorgetto Giugiaro)氏が担当していますが、D300に関しては社内のデザイナーが手がけています。
渡部 デザインコンセプトに関してはD3に合わせてあります。例えば、(ペンタ部分に)溝が深く入っている点とか、グリップ部分の赤い線がD200に比べて内側に長くのびている点などは、D3と共通化を図った部分です。また、左手で操作する動作モードダイヤルのリングには金属光沢のアクセントを付けて高級感を高めてあります。細かいところですが、こういった部分にもこだわりを持っています。
中村 デザイン面では、自由曲面の数が非常に多い点に注目していただければと思います。曲面も単純なアールではなくて、複雑な曲線になっているとか。このあたりは手間をかけている部分ですね。
── 正面から見て右側にも複雑な凹凸がありますね。
渡部 ここも手間がかかった部分です。後ろ側の縦に5つ並んだボタンを操作する際に手をかける部分になるため、縦位置や横位置、あるいは背面を上に向けてメニューを操作するなど、さまざま役割を持たせ、どの向きで操作しても快適に使えるようにしています。これは、3次元データからモックアップを作り、触って試行錯誤する──デザイナーと何度もキャッチボールをしながら、ようやく決まった形状ですね。
また、カタログスペックでは(D200に比べて)高さが1mm増えている形になりますが、これはシーン認識に利用する「1005分割RGBセンサー」の前に回折格子を追加し、さらに調整機構も追加したことが関係しています。内部では1mm以上の高さが必要になっているのですが、そこをうまく吸収して外観上では1mmに抑える。そのための追い込みを行なったのです。
── 1mmのちょっとした差に大変な意味が含まれているということですね。
質感にこだわった縦位置グリップ
── 縦位置グリップに関してはどうでしょう。
檜垣 まずD200では、より長時間のバッテリー駆動を望む声を多くいただきました。D300ではそのあたりを徹底的に見直しています。(長時間駆動で評価の高かった)D70やD70sを目標に置きつつ、それに迫る結果を出せています。バッテリーパックに関しては、本体に装着するためのでっぱりがなくなったほか、質感の部分に関してもこだわった内容になっています。
渡部 D300ではマグネシウム合金によって剛性を高くすること以外に、横からバッテリーを抜き差しするトンネル状の構造にすることで強度を保っています。D200のバッテリーパックは後ろから2本のパックを入れる仕組みなので開口部がどうしても大きくなってしまうんですね。
檜垣 この形状にしたことで、EN-EL3eを本体と合わせて2個利用できるほか、単3形電池8本、EN-EL4aと3タイプの電池が使えるようになりました。EL-EL4a用のアダプターはF6のものと共通化するなど、フィルムカメラからの移行にも配慮した設計になっています。
渡部 このバッテリーパックに単3電池を入れることで8コマの連写が可能になります。回路設計を見直すことにより、単3電池でもかなり長時間の使用ができるようになっていますし、低温での動作も改善されています。電池の持っているパフォーマンスをすべて引き出すイメージというか……。笑い話になってしまうのですが、評価部門からは「評価時間が長くなった」と嘆かれています(笑)。
── 縦位置グリップには今回から十字キーも付けられていますね。
渡部 従来のAFポイント数は11点だったので、ダイヤルで循環して選択するのも現実的だったのですが、D300では51点に増えました。ダイヤルで選ぶのは無理だろうということで、十字キーを付けています。
── 今後は、縦位置でも横位置と同じボタンレイアウトを目指すということでしょうか。
檜垣 ひとつ問題としてあるのは、縦にカメラを構えると液晶ディスプレーの矩形が縦長に変わってしまうということですね。同じメニュー項目を無理に収めようとすると、レイアウトの調整が必要になります。縦と横でメニューの場所が変わってしまうととまどいの原因になるというのもありますので、メニューは横位置のみとしています。