ノイズに強い新撮像素子
── D300では、撮像素子も新しくなり、感度も向上していますね。
檜垣 ええ。(APS-Cサイズのまま)画素数が増えることで、1画素あたりのサイズはその分だけ小さくなるわけですが、D200やD2Xs(常用でISO 1600相当)より高感度の撮影(同ISO 3200相当)が可能になっています。
── ノイズレベルは従来機種に比べて、どの程度改善されていますか?
中村 絞りにして1段強の改善となります。中間調も従来と比べて少し明るく写りますね──。
檜垣 D200の「ISO 1600」とD300の「ISO 3200」がほぼ同じくらいのノイズレベルと考えています。ただし、このあたりは利用シーンなどでも変わってくるので、ユーザーご自身で体感してもらいたい部分ですね。「中間調が少し明るく……」というのは、トーンカーブを少し持ち上げているためです。
── 仕様的に、ソニーの『α700』に搭載されている「Exmor」とよく似ているなという印象を持ったのですが。
檜垣 撮像素子はソニーから供給を受けていますが、仕様や品質に関しては当社の基準に沿った形で作られています。他社の製品となるため、α700の撮像素子に関しては分かりません。(横方向に約4000個のA/Dコンバーターを並べているなど)基本的な構造に関しては同じだと思います。
D300では、センサー内にA/D変換器を実装したことで、アナログ信号をセンサーの外に出さずにデジタル信号に変換できるようになりました。画素に近いところでA/D変換するため、ノイズの混入を抑えられるのは利点です。
もうひとつの特徴は、パラレルで変換処理を行なうことによって、ひとつひとつの動作速度を落とせることです。高速に動作させると、いろいろなノイズを発生させる要因になりますので、低ノイズ化にも有利に働きます。
── 画像処理システム「EXPEED」は画作りのコンセプトであり、処理するASICを指すものではないという認識で正しいですか。
檜垣 はい。そういう意味ではセンサーもEXPEED準拠であるし、画像処理エンジンのハードウェアやそのエンジンに含まれるソフト的なアルゴリズムもEXPEEDの一部であると言えますね。
画作りについて聞く
──新機能の「アクティブ Dライティング」が適用されるのは、JPEGモードのみですか?
檜垣 RAWでも記録は残り、パソコンで現像する際には結果が反映されます。Dライティングの機能は、「D80」から後処理で適用できる「画像編集」機能として搭載したものです。D3とD300で搭載したものでは、事前に設定しておくことが可能となりました。撮影時には白トビがおきにくいようアンダー気味に撮影しておき、その上で適応的な階調補正を行なって絵を仕上げるというものです。
── 一般的なトーンカーブ補正との違いはなんでしょうか?
渡部 単純なトーンカーブ補正とは異なり、局所的な補正にも対応しています。(リリースなどで)「覆い焼き」と表現しているのはそのためです。
中村 Dライティングはシャドウ部のみ、アクティブDライティングはハイライトとシャドウ部の両方に効果があると考えると分かりやすいと思います。
──ピクチャーコントロールシステムとは?
中村 「ピクチャーコントロールシステム」は、機種が変わっても共通の絵が撮れることをコンセプトとしています。例えば、D2XとD200に関しては、開発した時期の差もあり、絵作りに多少の違いがありました。D3とD300に関しては、同時発売するということもあり、同じ絵を出したいと考えました。そのあたりもこだわったシステムになっています。
檜垣 これは過去の機種で「仕上がり設定」と呼ばれてきたものです。ニコンとしても画作りに対する考え方が固まってきていますので、統一した概念として導入しました。時代とともに求められる画のあり方にも違いが出てくると思いますが、ピクチャーコントロールの追加により柔軟な対応が可能です。新しいピクチャーコントロールの充実にも努めていきたいと考えています。
中村 (画作りに関して)もうひとつ売りの機能のひとつに「クイック調整」というものがあります。初めて使う方でもお勧めのパターンが選びやすくしたり、グリッド表示というコントラストと彩度の関係をつかみやすくするインターフェースなども盛り込んでいます。
檜垣 カメラで作った画作りの設定をCFカードを利用してパソコンに持ってくることも可能です。これを使って、同じ設定で現像処理を行なうことも可能です。
中村 また、D80から搭載しているのですが、撮影後にトリミングしたり簡単な調整を行なうこともカメラ内で可能です。パソコンが苦手な方にも活用してほしい機能ですね。