Harpertownのパワーを披露
続いてゲルシンガー氏は、Penryn世代のCPUの特徴について解説し、「Harpertown」のパフォーマンスをデモを交えて紹介した。
Harpertownとは、45nmプロセスで製造されるCoreマイクロ・アーキテクチャーベースのCPU「Penryn」のXeon版だ。現行のデュアルコア/クアッドコア Xeon(5300番台、Clovertown)をベースに、SIMD演算命令セット「SSE4」の追加やキャッシュの改良・増量などの改良を加えられている。現行のXeon 5300番台が65nmプロセスでクアッドコア、8MB 2次キャッシュ搭載、5億8200万トランジスター(ダイサイズは143mm2×2)なのに対して、Harpertownでは12MBキャッシュ、8億2000万トランジスター(107mm2×2)に増量かつサイズは縮小されている。
披露されたHarpertown搭載機によるデモでは、まず石油採掘などの前調査などで活用される地下の地層を図式化するアプリケーションの動作が披露された。測定されたテラバイト級のデータを数週間かけて解析したものを、3D画像に可視化して見せるもので、大量のデータを元に作られる複雑な地下の様相を、スムーズに表示してみせた。
米国ワシントン州にある同社の施設と映像を結んだデモ中継では、デュアルコアOpteronを2基搭載したシステム(コア数4)と、Harpertown 2基(コア数8)のシステムで性能を比較。金融情報シミュレーションでの処理時間の早さを見せつけた。
AMDの「クアッドコアOpteron」(コード名Barcelona)はまだ市場に登場していないため、実機同士での対決はできない。しかしゲルシンガー氏は、クアッドコアOpteronに対しても優れた性能を示せるとした。ゲルシンガー氏が例として挙げたのは、CPUの浮動小数点演算性能を計る標準的なベンチマークテスト「SPECfp_rate2006」の値で、AMDが公表しているクアッドコアOpteronの数値よりも優れた性能を発揮しているとした。
そしてNehalemへ
インテルは“製造プロセスの微細化”と“アーキテクチャーの変更”を1年ごとに交互に行なう「Tick-Tock(チクタク)モデル」と呼ばれる開発プランを展開している。2007年のPenrynが微細化当たる一方で、2008年登場予定のCPU「Nehalem」(ネハレム)では、アーキテクチャーの大規模な更新が行なわれる。IDFではNehalemについて多くの情報が公開されたが、まだ詳細については明らかにされていない。
ゲルシンガー氏は「命令セットはまだまだ進化する」と述べ、今後のCPUに追加される「SSE4.2」や「AES-NI」を紹介した。前者はNehalemに追加される命令セットで、XMLに代表される文字列処理を高速化する命令を実装する。後者はNehalemの次に登場する、32nmプロセス世代のCPU「Westmare」(ウエストメア)で実装される命令セットで、AES暗号化/複合化を高速化するものという。
またNehalemでは、メモリーコントローラーの内蔵化や新しいチップ間インターコネクトバス「QuickPathアーキテクチャー」の採用、グラフィックス機能の内蔵(オプション)など、従来のインテルCPUにはない新しい仕様が多く盛り込まれている。ゲルシンガー氏はNehalemの特徴について触れ、特にマルチコア化でさらに要求の厳しくなるメモリー帯域については、「3倍のメモリー帯域」を実現するという。
チクタクモデルによるCPU開発はNehalem以降も続き、2009年にはNehalemの32nmプロセス版である「Westmare」が、2010年には32nmプロセスで新アーキテクチャーを採用する「SandyBridge」(サンディブリッジ)が登場する予定とのことだ。また、Nehalemの命令セットなどの詳細は2008年のIDFで公開されるとのことで、おそらく2008年4月に上海で開催されるIDFで、詳しい命令セットやアーキテクチャーの詳細が公開されるのだろう。