インテル(株)は20日、東京都内で記者説明会を開催し、来日中の米インテル社 上級副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長のパトリック・ゲルシンガー(Patrick P.Gelsinger)氏による、同社の今後の製品動向についての説明が行なわれた。
ゲルシンガー氏は、18日まで中国・北京で開かれていたハードウェア開発者向け国際会議“Intel Developer Forum”(IDF)に出席。17日に基調講演を行ない、同社のCPUやプラットフォームの今後について多くを語っていた。今回の説明会はその要約といった内容で、基調講演での大きなトピックについて、改めて説明された。
ゲルシンガー氏は冒頭で、IT環境は電力コストと管理・運用コストの増大という問題を抱えており、それを下げることが必要であるとした。そして、優れたパフォーマンスでエネルギーコストを下げる(消費電力あたりの処理性能を上げる)CPUが、今年後半に登場する“Penryn”(ペリン)ファミリーのCPUであるとした。Penrynについては何度か報じられているが、大きな特徴に新しいトランジスター技術を導入した45nm High-Kプロセス技術の採用がある。ゲルシンガー氏はこの新プロセス技術について、「材料科学でのブレイクスルー」と述べるなど、電力効率の向上に大きく寄与している点を強調した。
Penrynは基本的に、現行のCoreマイクロアーキテクチャーを継承したCPUであるが、ゲルシンガー氏は単に今あるCore 2 Duo/Xeonプロセッサーのプロセスを縮小しただけでなく、アーキテクチャー面でも改良が加えられていることを、デモも交えて披露した。ゲルシンガー氏はPenrynの特徴として、マルチメディアアプリケーションの高速化に役立つSSE4命令の実装、SSEの実行性能を最適化する“スーパー・シャッフル・エンジン”、キャッシュメモリー性能の改善などを挙げている。Penrynはサーバー&ワークステーション用のマルチプロセッサーシステムから、デスクトップパソコン、ノートパソコンまで幅広い市場に向けて投入される。サーバー&ワークステーション用のXeonやデスクトップ向けにはデュアルコア版とクアッドコア版が、ノートパソコン向けにはデュアルコア版のみが提供される。また熱設計枠の厳しいブレードサーバーなど用に、デュアルコア版でTDP 40W、クアッドコア版でTDP 50Wの低消費電力版も提供される。
日本では初披露となるPenrynのデモは、IDFでも披露された医療向け3次元画像処理のデモと同じ内容で、PenrynベースのクアッドコアCPUを2基搭載するシステム上で行なわれた。このシステムは1600MHzのシステムバスを備え、グラフィックスカードも第2世代のPCI Expressに接続されているという。医療用MRI装置で3方向から撮影された人体内部の2次元画像を元に、カラー化された3次元の体内画像を高速に作り出し、リアルタイムに動かして見られるようにするものであった。
QuickAssist、Tolapai、そしてNehalem
ゲルシンガー氏は基調講演で披露された、インテルの将来製品で導入される新技術についても語った。“QuickAssistテクノロジー”は、特定用途の演算向けに最適化されたアクセラレーターを実現する技術である。PCI Expressベースの接続(コード名“Geneseo”ジェネセオ)だけでなく、将来的にはCPU内部への統合化も含まれる。QuickAssistベースのアクセラレーターを統合したプロセッサーとしては、コード名“Tolapai”(トラパイ)が説明された。インテルアーキテクチャー(IA)ベースのCPUコアとメモリーコントローラー、I/Oコントローラー、そしてQuickAssistベースのアクセラレーターをひとつのパッケージに収めたプロセッサーで、現在のCPU+チップセットにアクセラレーターまでをひとつにまとめたようなものとなる。アクセラレーターの用途としては、最初の製品ではネットワークのパケット処理やセキュリティー処理などを行なうという。2007年後半には、Tolapaiベースのシステムが登場するとのこと。
さらに将来の発展系として、多数のIAコアを統合してテラフロップス級の演算性能を実現する“Larrabee”(ララビー)と呼ばれるアーキテクチャーも開発されている。これは高度な演算能力を備えるグラフィックスチップ(GPU)を汎用のベクトル演算プロセッサーとして利用しようという“GPGPU”(General Purpose GPU)に対する、インテルのカウンターとも呼べるものだ。普及したIAベースのコアを集積するため、ソフトウェア開発者の負担が低いとされ、今後の展開に期待が持たれるが、具体的にどのような製品に応用されるかまでは明かされなかった。
これらは一般的なパソコン用プロセッサーとは異なるが、講演の最後では、現在のCoreマイクロアーキテクチャーの後継となる新CPU“Nehalem”(ネヘイレム、もしくはネハレム)の特徴についても触れられた。NehalemはCoreマイクロアーキテクチャーを改良したCPUコアを備えるが、対象となる市場セグメントに応じてコア数やキャッシュメモリーを柔軟に構成できる。メモリーコントローラーも内蔵する。またPentium 4の“HyperThredingテクノロジー”と同じように、ひとつのコアで複数のスレッドを同時に実行する“対称型マルチスレッディング”(Simultaneous Multi-Threding)の機能も備える。これにより、クアッドコア版のNehalemでは最大8スレッド、8コア版なら最大16スレッドを同時実行可能となる。
またNehalemは既存のシステムバスとは異なるチップ間接続バスを備えるほか、グラフィックス機能を内蔵させることも可能である。インテルのCPUとしては、かつてないほどの大がかりな変更が多数導入されるNehalemは、2008年後半には登場するとゲルシンガー氏は述べた。