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社会保険労務士 中谷充宏 ワタシとカイシャの深ーい溝 労働環境の危険な落とし穴 第5回

第5回 そりゃ給料は、上がればやる気がでる? 賃金制度を把握しよう

2007年03月21日 00時00分更新

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自分の給料は、自分で守る

 いつの世も会社自身は固定給ではなく、完全成功報酬でやりくりしています。今は、高度経済成長期のように全体のパイがなかなか大きくなりませんし、社員の給与も会社の業績に連動するのはやむを得ない流れと言えます。業績が悪化しているにもかからず、会社は高い固定給を社員に払い続け、その結果倒産してしまったという笑えない実話もあります。従業員にとって「リストラ」はとんでもない悪のように感じます。しかし、経営者は会社を維持していく重責を担っており、重い人件費負担に会社が耐え切れないと判断したら、リストラを断行するというのは、実はごく自然ななりゆきなのです。

 今は何事においても自己責任の時代。予期できないことが発生した場合でも、自身の賃金を確保できるようしておくことが大切です。そのためには、社員一人ひとりがなんでも会社頼みにするのではなく、職業人として、どこに行っても通用する高いスキル・知識を体得しておく必要があるのです。

給与を上げるためには?

 ではどうすれば、このようなスキル・知識を身につけることができるのでしょうか? 基本的なことですが、現在の職業で目の前にある仕事を徹底的に極めることだと、私は考えます。

 たとえばスキルアップを考えた場合、MBA(注2)MOT(注3)を目指してみたいという方も多いと思います。しかし、このような難関資格をわざわざ取得するより、今自分がいる日本の会社ほどビジネスについていろいろ学べる場はないということを、まず知るべきです。  また、たとえば欧米では、OJT(注4)に関して日本のような充実した仕組みはありません。上司や先輩、同僚が自分の仕事の手を止めてまで、仕事のやり方を手取り足取り教えてくれるなんてことはないのです。

 つまり、日本の会社で働いているということは、ビジネスについて日々学んでいるのであり、その結果高いスキルを望むことができるということなのです。そして、その成果は給与として、目に見える形で評価されていくという考え方を基本として持つとよいでしょう。

 ところで一般的には給与が高ければ働くモチベーションが上がると思われていますが、最近はお金よりもプライベートな時間や仕事のやりがいなどを優先するといった傾向が強いですね。ちなみに、お金だけで社員のモチベーションを上げるためには、平均的な社員の3倍以上の給与が必要なのだとか……。

注2:MBA
MBAとは「Master of Business Administration(経営学修士号)」の略で、あらゆる分野においてのマネージャー、リーダーになるために経営学を学ぶプログラムをいう
注3:MOT
MOTとは Management of Technology の略で、必要な専門的経営能力向上を目指す教育プログラム
注4:OJT
OJT(On-the-Job Trainingの略)とは企業内で行なわれる職業指導手法の一つ。職場の上司や先輩が部下や後輩に対し、具体的な仕事を通じて仕事に必要な知識・技術・技能・態度などを指導し、修得させることによって、全体的な業務処理能力や力量を育成する

中谷充宏氏

著者 中谷充宏
社会保険労務士・キャリアカウンセラー。
1967年大阪生まれ。
人事採用コンサルティングを主業務とするM&Nコンサルティング代表。同志社大学卒業後NTT情報システム本部(現NTTコムウェア)にてSE経験を積み、2004年に社会保険労務士開業。IT業界の人事労務問題解決に強みを持つ。現在、就職支援アドバイザーとして埼玉県の非常勤職員も務める。


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