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週替わりギークス第8回

コンピューターで人の制御も――次のデジタルに必要な視座

2016年09月27日 17時00分更新

文● 落合陽一

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この連載は江渡浩一郎、落合陽一、きゅんくん、坂巻匡彦が週替わりでそれぞれの領域について語っていく。今回は落合陽一が、アルスエレクトロニカで展示した作品を紹介する。

 落合陽一です。今回は、アルスエレクトロニカ(Ars Electronica)のデジタルネイチャー展の報告をさせていただきます。9月8日から12日までの5日間、オーストリアのウィーンでアルスエレクトロニカフェスティバルが開催されました。

 アルスエレクトロニカは世界のメディアアートの中心地で、かれこれ40年の歴史があるフェスティバルであり、アルスエレクトロニカセンターはその展示機関であり、研究機関、および教育機関です。

 ざっくりいえば、メディアアートもやる日本科学未来館だと思っていただければ概ね合っています。

 昨年もアルスエレクトロニカフェスティバルやアルスエレクトロニカセンターの常設展示では展示作品を出させていただいていたのですが、今年はスケールアップして研究室全体で行かせていただきました。

 今年はアルスエレクトロニカによるPrix Ars ElectronicaのHonorary Mentionと、EUとアルスエレクトロニカによるStarts PrizeのHonorary Mentionをいただきまして、研究室ごと大きめの展示をさせていただきました。

 オーストリアの展示に行けなかった人のために今回は全体の展示をご紹介したいともいます。下のThetaの画像は360度見られるようになっています。

写真をクリックすると専用ページ飛びます。ぜひグリグリしてみてください

 アルスエレクトロニカフェスティバルはフェスティバルの招致作品の集まるPost Cityと受賞作品の集まるOkセンター、常設展があるアルスエレクトロニカセンターで構成されています。デジタルネイチャー展ではPost Cityに11作品、Okセンターに1作品を置かせていただきました。

 今回はポストシティ展からそれぞれの作品をご紹介します。

 全体は暗いところと明るいところが同居し、ところどころ植物のある感じにまとめました。僕が行なう展示だと、「詩的で説明のないアート展示」「モノをしっかり見せるデザイン展示」「動きを積極的に見せる技術展示」の3パターンが多いですが、今回はデザイン展として置かせていただきました。設営を手伝ってくださった弊ラボの鈴木一平くん、鈴木健太くん、大桃耕太郎くん、西條柚さんに感謝です。

 では展示をご紹介していこうと思います。

マテリアル:
素材自体をどうハックしうるか、シミュレーションしうるか

●Gushed Light Field

 この装置は、ガス圧によって高速噴出される冷却剤を用いて空中に結露した霧を作り出します。

 それによって動きや外乱に強いフォグ(霧)スクリーンを作り出し、ドローンやウェアラブルによる空中投影技術が可能になります。こういった物理現象をデジタルファブリケーションを用いてどこまでシミュレーションと一致するかを調べ、実装していくことで、ソフトウェア的にハードウェアを扱える環境を目指しています。




●Leaked Light Field

 鏡や木材などの材質の表面に穴を開けて加工していくことで、手触りを残したまま材質をディスプレーにしていく研究です。材質によって異なるパラメーターを調整していくことで、ソフトウェア的に素材を扱っていくことができます。また、光がどういう経路で穴を通っていくかを計算することができるため、立体的な光線の打ち分けを行なうことができます。




●Coded Skelton

 3Dプリンターで出力した物の変形を考えるプロジェクトです。アクチュエーターとして動く3Dプリンターオブジェクトを制作し、シミュレーション通りに変形させていきます。これによってロボットなどの部品を組んだりすることができ、その製造プロセスもコンピュータを基軸に考えていくことができます。

インタラクティブメディア:
情報提示の手法や情報の形をどうやって物理世界に再現しうるか

●Solar Projector

 太陽光を直接符号化し、プロジェクションの光源にすることで、太陽光を用いたディスプレーシステムを作るプロジェクトです。情報ディスプレーの枠組みを人間の視聴覚から超越させていくことで環境を変化させ、植物の育成や建築の一部として用いられる情報建材を考えることができます。




●Project on the Materializations of Holography

 落合が取り組んできた、音響ホログラムやフェムト秒レーザーホログラムによって物質的な表現を行なっていくプロジェクト。そのコンセプト展示として、自然の植物の間に埋め込まれた光学機器によって妖精の像を描画しています。




●Transformed Human Presence for Puppet Play

 これは人間の身体性をほかの形に変換していくプロジェクト。3Dプリンタを用いて骨格を印刷し、人間の身体動作に合わせてモーションを計算していくことで様々な形に変換させます。VRゴーグルで没入させ、テレプレゼンスとして用います。




●Thermal Tactile Display

 動的温度触覚に関するプロジェクト。「冷たい」と「暖かい」が高速に切り替わる物体の触覚展示です。




●Cross-Field Haptics

 多重場による触覚表現のためのプロジェクト。デジタルネイチャー研では触覚提示の方法として多重場による合成におけるヒューマンファクターを調べることで、より多彩な触覚を表現することを目標にしています。




●Holographic Whisper

 Pixie Dust Technologies .incとして開発している、空中点音源スピーカー。今までのビーム型の指向性スピーカーと異なり、空中に音響「点」を作ることができます。

ヒューマンコンピュテーション:
人は見えない糸でどうやってコンピュータと調停されうるか

●Human Coded Orchestra

 コンピュータが制御する指向性スピーカーを用いて人間を演奏するプロジェクト。いままで人はコンピューターを演奏してきましたが、コンピューターが人を演奏します。

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