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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第128回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 3月23日~3月29日

データのマネタイズを実現した企業が増加、高度なセキュリティ対策と株主利回りの相関関係、Apple不調で国内ウェアラブル市場は縮小、ほか

2024年04月01日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(3月23日~3月29日)は、データマネタイゼーションの実態、国内ウェアラブル市場の動向、セキュリティ年次調査、セキュリティ対策と経営、女性管理職比率向上の取り組みや意識についてのデータを紹介します。

[データ][DX]データマネタイゼーションを実現できている企業は24%、PoCから実サービスに推移(PwCコンサルティング、3月26日)
・データマネタイゼーションを「実現できている」は24.5%、前年比15ポイント増
・推進における課題は「費用対効果」がトップ、前年から37ポイント増
・経営者は新たな収益源創出を狙ったユースケースを検討する傾向

 3回目となる年次調査「データマネタイゼーション実態調査2024」より。日本国内の売上高500億円以上の企業から1076件の有効回答があった。データマネタイゼーションを「実現できている」と回答した企業は24.5%で、昨年から15.4ポイント増加。「データを使った社内業務の効率化」だけでなく、トップダウン型の「新たな収益源創出」を狙ったデータマネタイゼーションも行われていると報告。一方で、課題として「意義やメリット、費用対効果を感じない」という回答が最大で、前年比で37.3ポイントも増加した。PoCから現実のサービス化へと、取り組みのフェーズが変わってきている企業が増えていると推察している。

データマネタイゼーションの検討状況。「実現できている」は2023年の9.1%から24.5%に(出典:PwCコンサルティング)

データマネタイゼーションのユースケース(出典:PwCコンサルティング)

データマネタイゼーションの取り組みにおける課題。「意義やメリット、費用対効果を感じない」がトップ(出典:PwCコンサルティング)

[ウェアラブル][消費者]国内ウェアラブル市場、2023年は5%マイナス。Appleの不調が足を引っ張る(IDC Japan、3月28日)
・2023年のウェアラブル出荷台数は1196万台、前年比5%減
・2年連続で前年比マイナスとなった
・スマートウオッチ/リストバンド市場は前年比15%減

 2023年通年の国内ウェアラブルデバイス市場の調査(リストバンド、スマートウオッチ、イヤーウェア、洋服、メガネ、モジュラーとその他)。2023年は前年比5.4%減の1196万台。2年連続で前年比マイナスとなった理由は、イアーウェアとスマートウォッチで最大のシェアを持つAppleが出荷数を落とした影響としている。カテゴリ別で最大のイアーウェア分野は、1位Appleが前年比23.8%減、2位ソニーが同34.9%減で、分野全体としてもマイナス成長に。スマートウオッチ/リストバンドも前年比15.5%減だった。

2023年通年の国内ウェアラブルデバイス市場、カテゴリ構成比(出典:IDC Japan)

ベンダー別のシェア(出典:IDC Japan)

[セキュリティ]ランサムウェアの身代金要求額は2022年比3%増、支払額は32%減(パロアルトネットワークス、3月25日)
・セキュリティ侵害から流出までの時間(中央値)は2日間、2021年の9日間から大幅に短縮
・初期侵入経路では「脆弱性の大規模なエクスプロイト(悪用)」が約39%に増加
・身代金支払い額の中央値は35万ドルから23万7500ドルへ、実際の支払額は32%減少

 パロアルトネットワークスの脅威インテリジェンスチーム「Unit 42」の年次調査。250以上の組織、600以上のインシデントデータをもとに作成した。侵害から流出までの時間(中央値)は2021年の9日間から2日間に短縮された。Unit 45が対応した事案の45%は1日未満でデータが流出されたと報告している。初期侵入経路では、これまで「フィッシング」が最大だったが、2023年版では「Software/API脆弱性」が38.6%でトップに。ランサムウェア攻撃では、身代金要求額(中央値)は65万ドルから69万5000ドルと昨年比3%増加したが、実際の支払い額(中央値)は35万ドルから23万7500ドルと32%減少した。この他、インシデントの93%が、特定のデータを狙う標的型ではなく無差別に取得する非標的型だったことなども報告している。

初期侵入経路の変化。今回は38.6%が「脆弱性のエクスプロイト」となり、2021年には最大だった「フィッシング」を上回った(出典:パロアルトネットワークス)

ランサムウェアの身代金要求額と支払額(出典:パロアルトネットワークス)

[セキュリティ][経営]サイバーセキュリティ対策と株主利回りに相関関係、高度な対策を実施する企業の株主利回りは他社の4倍(Diligent、3月28日)
・高度なサイバーセキュリティ対策を実践する企業は、標準的企業より株主利回りが372%高い
・サイバーセキュリティ専門家を取締役会に起用する日経225企業の割合は2%にとどまる
・セキュリティ評価が高いのは「ヘルスケア」、低いのは「通信」

 サイバーセキュリティと監査に関するグローバルの調査レポート「Cybersecurity, Audit and the Board」より。高度なサイバーセキュリティ・パフォーマンス(サイバーセキュリティ対策)を実践する企業は、標準的な企業と比べ株主利回りが372%高いという。ヘルスケア、金融サービスなど規制基準の高い業界はサイバーセキュリティ評価が高く、専門のリスク委員会や監査委員会をもつ企業は(710点)は持たない企業(650点)よりすサイバーセキュリティのパフォーマンス水準が高いことも報告している。

[ダイバーシティ][経営]大企業の84%が女性管理職比率向上で何らかの取り組み、42%の従業員が「効果を感じる施策はない」(Works Human Intelligence、3月26日)
・大企業の84%が「女性管理職比率向上のための施策をしている」
・従業員の42%、人事部の22%が「効果を感じる施策はない」と回答
・「管理職になりたいと思わない」女性は85%、男性は80%

 大手企業の人事部610人と従業員631人を対象に、女性管理職比率の向上に関する施策の実施状況や従業員の意識について調査した。女性管理職比率向上に関する施策実施状況について、企業向けの調査では「何らかの取り組みをしている」企業が84.6%。ただし、従業員向け調査では「効果を感じる施策はない」が42.9%だった。「管理職になりたいと思わない」と回答したのは女性が85.3%、男性も80.3%に上った。2023年6月の政府「女性版骨太の方針2023」では、東京証券取引所プライム市場に上場する企業の女性役員比率を「2030年までに30%以上にする」という長期目標が掲げられている。

女性管理職比率向上に向けて自社が実施する施策で効果を感じているものは「ない」が最多(出典:Works Human Intelligence)

企業向けに女性管理職比率の向上の取り組みとして、53.9%が「定期的な目標値を定めている」と回答した(出典:Works Human Intelligence)

「管理職になりたいと思わない」女性従業員は85.3%、男性も80.3%に上った(出典:Works Human Intelligence)

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