公正取引委員会が、独占禁止法違反の疑いがあるとして、グーグルを調査すると発表した。
この方針を公取委が発表したのは2023年10月23日のことだ。
このニュースをネットで読んで、少し驚いた。
通常、公取委など違反行為を調査する官庁は、結果が出るまで何も公表しないからだ。
「違反行為がわかったので、やめるよう命令しました」と発表するのと、「違反の疑いがあるので、これから調査します」と言うのでは、かなりステージが異なる。
外野からは、かなり思い切った施策のようにも見えるが、公正取引委員会はなぜ、方針の大幅な転換に踏み切ったのだろうか。
「抱き合わせ販売」に似ている
公取委の発表によれば、今回問題になっているのはグーグルとスマホメーカーの関係だ。
Androidのスマホには、Google Playというアプリストアが欠かせない。
アプリストアがスマホに入っていないと、新しいアプリをインストールできないからだ。
グーグルは、スマホメーカーに対して、Google Playと一緒に、ブラウザのGoogle Chromeと、検索アプリGoogle Searchをインストールさせていたという。
このニュースで、思い出したのはファミコンのカセットの抱き合わせ販売だ。
古い話で恐縮だが、1998年2月、ドラゴンクエストIIIが発売された。
いまも人気のシリーズだが、当時の子どもたちにドラクエは絶大な人気を集めるゲームだった。
そこで各地のおもちゃ屋は、売れ残りのゲームを「抱き合わせ」で売ることにした。
多くの場合、抱き合わせで販売されたファミカセは、いわゆるクソゲーだろう。
2本セットでないと、客はドラクエを買うことができない。
ドラクエIIIを手に入れるため、子どもたちは、ほしくないカセットまで買わされることになる。
検索で他社を排除
公取委が問題視するグーグルの行為は、もうひとつある。
グーグルとスマホメーカーは、他社の検索エンジンをインストールしないことなどを条件に、検索広告でグーグルが得た収益の一部を分配する契約を結んでいたという。
Statistaによれば、2023年4月、全デバイスを通じたグーグルのシェアは93.63%。2位以下は、マイクロソフトのBingが2.79%、Yandex1.63%、Yahooが1.1%となっている。
これだけの優位があるなら、グーグルがメーカーに対して「他社の検索エンジンは入れるな」と言う必要もないように見える。
しかし、グーグルの優位が今後も安泰かというとそうではないだろう。
たとえば、Bingは2023年2月に生成AIのChatGPT(GPTモデル)を搭載した検索サービスを始めた。
AIと対話をするようにネット検索できる仕組みはなかなか便利で、筆者は長い間Google以外の選択肢は考えたこともなかったが、この数か月はPCで調べ物をする時にBingをよく使うようになった。
さらに、最近はiPhoneにもBingのアプリをインストールしている。
現時点でGoogleとBingのシェアには、巨大な差があるが、検索の精度の面でも、Bingが激しく追い上げているのが現状だろう。
さらに、10月5日にはBloombergが、アップルが自社のブラウザ「サファリ」の「プライベートモード」で、検索エンジンをGoogleからDuckDuckGoに切り替えることを検討していると報じた。
DuckDuckGoは、プライバシー保護に力を入れる検索エンジンだ。先ほどの統計では、0.52%のシェアがある。
「プライベートモード」だけだとしても、仮にアップルが採用すれば、その影響は大きい。DuckDuckGoのシェアは、一気に伸びてくるかもしれない。
Googleのシェアは相変わらず絶大だが、その優位は必ずしも安泰ではないという状況の中で、公取委が指摘したのはグーグルによる他社の検索エンジンの排除だ。
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