生成AIの活用も加速する
そして3つめが、AIの活用である。
NECでは、130億パラメータという軽量化を実現した独自の日本語大規模言語モデル(LLM)を発表しているほか、社内でも生成AIを積極的に活用。2万5000人の社員が、1日1万回の規模で生成AIを利用しており、資料作成時間を50%削減したり、議事録作成時間を30分から5分に短縮したりといった成果が生まれている。また、コンタクトセンターでは、マニュアルやガイドなどの資料をもとにしたFAQの作成で、工数を最大75%削減。オペレーターによるリアルタイムでの回答時間を35%削減できると試算している。
生成AIは、社内セキュリティ業務にも活用しており、CSIRT業務工数を80%削減する成果が生まれているほか、今後は、サイバー攻撃に対する防御にも生成AIを活用していくという。
NECの吉崎CDOは、「大規模言語モデルは、JR東日本や三井住友銀行、ダイワハウスなど、異なる業種の10社を対象に提供し、用途別や業種別での活用を模索している。生成AI利用に必要な機能を業界ごとに集約し、業界別のテンプレートをNDPに整備するほか、軽量であることを生かして、オンプレでの利用を可能にしたり、Auzre、AWS、Oracle Cloudとも閉域で接続し、安全で専門性の高いサービス提供したりできる点も強みになる。今後は、具体的な業種での活用事例も出していきたい」とする。
NECの大規模言語モデルの開発は、「G2プロジェクト」と呼ばれ、構想4年、開発2年、そして半年間による全社タスクによって完成された。
G2プロジェクトの名称について、吉崎CDOは、「GPTセカンドステージという意味を持たせた」と明かす。
「これまでの生成AIはファーストステージであり、幅広く利用されることが前提となっている。これに対して、セカンドステージでは、業種ごとでの活用が広がっていくことになる。NECの大規模言語モデルが目指しているのは、業種ごとに専門性を持って利用される生成AIである」とする。プロジェクト名のG2にはそうした意味がある。
吉崎CDOは、大規模言語モデルを発表するまでの期間、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOと、2回会って、直接意見交換を行い、セカンドステージの方向性を確認しながら、NECの大規模言語モデルを発表したことも明らかにした。
吉崎CDOの直下に、100名規模の専門家組織を設置し、生成AIを活用したビジネスをサポートする体制を敷いているのも、業種ごとの専門性を追求するG2プロジェクトの目的に沿ったものだといえる。
「今後は、グローバルで提供されている生成AIを超えるようなパフォーマンスを出したいと考えている。これは、もうしばらくすると発表することができる」とする。
コアDX事業のさらなる拡大に向けた準備は、急ピッチで整えられている。
この連載の記事
-
第590回
ビジネス
生成AIに3000億円投資の日立、成長機会なのか? -
第589回
ビジネス
三菱電機が標ぼうする「サステナビリティ経営」、トレードオフからトレードオンへ -
第588回
ビジネス
富士通の子会社でDX専門のコンサルティングをするRidgelinez -
第587回
ビジネス
メーカー自身が認定し、工場検査後に販売するパナソニックの中古家電 -
第586回
ビジネス
マイクロソフト、日本への4400億円のAI/データセンター投資の実際 -
第585回
ビジネス
日本市場の重要性を改めて認識する米国企業、変革期にある製造業がカギ -
第584回
ビジネス
NTT版の大規模言語モデル(LLM)、tsuzumiの商用化スタート、勝算は? -
第583回
ビジネス
エコ投資に取り組むエプソン、見方によっては10年で1兆円の投資も -
第582回
ビジネス
パナソニックコネクトの現在地点、柱に据えるBlue Yonder、ロボットとは? -
第581回
ビジネス
スタートして半年の日本NCRコマース、軸はAIとプラットフォームの2つ -
第580回
ビジネス
コンカーの第2章は始まるのか、SAPの生成AIを使って効率的な経費精算を - この連載の一覧へ