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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第63回

日本通貨「デジタル化」の動き

2020年02月25日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 日本でも、中央銀行が発行するデジタル通貨(Central Bank Digital Currency, CBDC)をめぐる議論が少しずつ具体化しはじめた。

 2月7日付のロイターによれば、自民党の「ルール形成戦略議員連盟」が、デジタル通貨の発行を政府と日本銀行で検討するよう促す提言をまとめたという。

 報道によれば、自民党からこうした動きが出てきた背景には、デジタル人民元発行の準備を進めている中国への危機感がある。

 デジタル人民元は2019年中にも発行が始まるとも報道されたが、いまのところ発行には至っていない。

 与党の議連は、デジタル人民元の発行が始まると、途上国を中心にデジタル人民元による決済が広がり、人民元の支配力が強まりかねないと考えているようだ。

 1月21日には、日銀を含む世界各国の中央銀行が集まり、デジタル通貨について研究を進めるとの発表もあった。

 この研究グループには、カナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、国際決済銀行などが参加するという。

 デジタル通貨の発行をめぐっては、さまざまな面でメリットとデメリットの両方が指摘されている。

●「なんとか」ペイ林立

 日銀がデジタル円を発行すると、どんなメリットがあるだろうか。

 まず、利便性の向上だ。日銀が発行するとなれば、少なくとも日本国内では「デジタル円」による決済が広く普及する可能性が高い。送金のコストが下がり、着金までの時間も短縮されるだろう。

 もうひとつの重要な点としては、政府としての中立性も挙げられる。

 現在、日本国内ではさまざまなデジタル決済が林立している。「なんとかペイがたくさんある」と表現する人もいる。現時点では、こっちのレストランでは◯◯ペイが使えるが、あっちの商店では使えないという状況が生じている。

 ただ、こうした状況は長く続かないとも見られている。小規模の決済事業者が大手に買収され、じわじわと統合が始まっている。近い将来、限られた大手数社が競合する市場になると考えていいだろう。

 日本国内のデジタル決済が、数社による寡占状態になった場合、懸念されるのは独占的な立場の乱用だ。

 たとえば、町の商店やレストランから決済事業者が高い手数料を取るとする。店側は、その決済が使えないのを理由に客が別の店を選んでは困るので、高額の手数料を呑まざるを得ない。

 こうした懸念に対して、中央銀行がデジタル通貨の発行体であれば、営利企業ではないため、少なくとも不当な手数料の値上げなどの心配は薄らぐ。

●CBDCはメリットもデメリットも

 こうしたメリットはデメリットの裏返しでもある。

 日銀がデジタル円を発行すると、激しい競争を繰り広げている決済事業者の努力はどうなるだろうか。

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