「学生で2億円の取引利益をあげた方がいます。さすがに怖くなって家族会議をしたそうで、お姉さんがわたしに連絡をしてくれました」
仮想通貨の税制に詳しい大見税理士事務所の大見光男税理士はそう話す。
「バイトをして貯めた10万円で2年前に仮想通貨を買ったそうです。当時はまだ価値があるのかどうかもわからなかった仮想通貨に10万円を投資するリスクは大きかったと思いますが、それにしても驚きましたね」
大見税理士への相談は8割が20~30代の会社員。昨年の暴騰で取引利益がふくらみ連絡してきたケースがほとんどだという。ビットコインをはじめとする仮想通貨は2009年頃から取引されているが、投機として注目されたのはここ数年だ。
「たとえばコインチェック騒動で話題の仮想通貨XEM(NEM)は、昨年1月時点で1XEMあたり0.4円でした。現在の時価は57円なので前年の14250%(取材時)です。数年前から仮想通貨の取引をやっていて申告していない人は非常に多いと思います。みなさん脱税するつもりはないんです。きちんと納税して安心して暮らしたいのに、確定申告の仕方がわからないと」
大見税理士自身、知人から仮想通貨を紹介されて取引を体験した。税法はまだ仮想通貨について決まりがなく、国税庁も計算方法を詳細に公開していない。仮想通貨と確定申告のセミナーを開いたところ、全国から相談が寄せられたという。
「税理士もほとんどわかっている人がいません。これは社会問題だと思います。聞いたところでは雑所得が50万円なのに税理士報酬として30万円を提示された人がいた。遠回しに断られたわけです。わからないものは受けたくないのが正直なところだと思いますが……」
最大の問題は計算上の根拠が公表されていないことだ。
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