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業界人の《ことば》から 第268回

「これまでAWSを攻撃してこなかった」日本オラクルが対抗心見せる

2017年10月26日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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無理やりクラウドに移行させる提案は失敗する

 オーバーマイヤー氏も、この米本社流の比較手法を持ち込む姿勢をみせる。

 「顧客に話を聞くと、競合他社のパブリッククラウドを一緒に利用しているケースがある。だが、それはいいことだと考えている。Oracle Open World 2017では、競合他社のパブリッククラウドに比べて、オラクルのパブリッククラウドがパフォーマンスやコストにおいて、大きな優位性があることが示された。これを競合他社のクラウドサービスを利用している顧客に対して提案できる。オラクルにはビジネスチャンスが生まれることになる」とする。

 そして、こうも語る。

 「オラクルとAWSは、クラウドビジネスの仕方が違う。AWSはIaaSの会社であり、少しだけPaaSをやっている。それに対してオラクルは、IaaSだけを提供するのではなく、SaaSやPaaSも提供する会社であり、様々なクラウドサービスの価値を提供できる。インフラだけを提供するのではなく、すべてが統合された環境を完璧な形で提供できるのはオラクルだけであり、しかも、クラウドを統合した環境で使いたいとする顧客が増加傾向にある。こうした流れはオラクルにとってはプラスであり、AWSを使っているユーザーであればあるほど、統合することの重要性と課題を理解できるはず。AWSの顧客に対しても、価値を提供できるのがオラクルの強みである」とする。

 オーバーマイヤー氏は「日本ではクラウドのオラクルというイメージがまだ定着しきれていない。データベースの会社であるというイメージの方が強い。これも変えていく必要があるとする」とする。

 日本オラクルの2018年度第1四半期(2017年6~8月)業績は、売上高412億円。そのうちクラウド関連ビジネスの売上高は27億円。成長率は前年同期比53%増と高いが、売上げ構成比は約7%に留まる。米オラクルの2018年度第1四半期業績では、売上高の92億ドルに対して、クラウド関連ビジネスの売上高は15億ドル。構成比は16%となっており、日本オラクルの遅れが浮き彫りになる。

 日本オラクルでは、2018年度にはクラウド関連ビジネスの成長率で前年比53~66%増を計画。150億円規模の売上高を見込み、売上げ構成比で8%以上を目指すことになる。

 「オラクルは幅広いクラウドサービスのポートフォリオを持つ。またクラウドサービスによる収益性は、オンプレミスと同じように高い水準にあり、クラウドシフトによる収益性の低下という課題は、すでに払拭されている」とオーバーマイヤー氏は語り、クラウドシフトのアクセルを踏み込む体勢はできていることを強調する。

 だが「私が最も注意しているのは、日本の顧客のスピードにあわせてクラウドを提案していくこと。無理やりクラウドに移行させる提案は失敗する。クラウドへの変革は困難をともない、まるでマラソンのようなもの。日本オラクルはマラソンが得意な会社。顧客の知識を担う会社であり、同時に、クラウドに関して最高の専門知識を持った会社を目指す」とも語る。

 日本オラクルはクラウド関連ビジネスの構成比を徐々に高める計画だが、依然としてオンプレミスのビジネスが堅調なのも同社の特徴だ。

 フランク・オーバーマイヤーCEOによる新体制のもと日本オラクルは、クラウドビジネスの成長曲線を変えることができるか。

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