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カンファレンスカメラマンがワイワイ楽しんだ「カンファレンスカメラマンカンファレンス」

カンファレンスの興奮を切り取るカメラマンの知見と矜持を見た

2017年08月24日 11時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●中井勘介

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8月21日、イベント撮影を中心に活動するカメラマンたちが自身の知見を披露する「カンファレンスカメラマンカンファレンス」が開催された。10人のLT(Lightning Talk)はどれも学びが満載で、写真に対する情熱が伝わる素晴らしい内容だったので、2時間半に渡ったイベントの模様を完全レポートする。

テンションを上げるべく、アイドル担当の撮影からスタート

 初開催となるカンファレンスカメラマンカンファレンスに参加したのはITエンジニアを中心としたカメラファン。10人の登壇者から、イベント撮影で心がけていることやイベントカメラマンとしてのこだわりなどが10分のLT形式で披露された。

 会場は緑に囲まれたDMM.comのイベントスペース。主催者の加我貴志さんのはからいにより、参加したカメラマンのテンションを上げるために、冒頭はDMM.comのアイドル担当を招いた撮影からスタート(笑)。カメラマンたちのテンションを上がったところで、LTから披露された。

大規模カンファレンスの撮影で心がけること(山下さん)

 「大規模カンファレンスで、エンジニアが公式写真係をやったときの話」というタイトルで登壇したのは、IoTプラットフォームを手がけるソラコムの山下智晃さん。使用機材はCanon EOS2台、OLYMPUS OM-D/PEN、RICOR GR、THETA Sなど、ストロボは計8本保有しているという。趣味で撮影しているのは、人物やスポーツ、星空、ミントチョコ、ワイヤレス機能を活用した孤独な自撮りなどだが、今回は前職のAWSで担当した大規模イベントでの撮影の知見について語った。

大規模カンファレンスでの撮影の知見を惜しげなく共有した山下智晃さん

 山下さんが公式カメラマンとして手がけたのは、前職の「AWS Summit」など1万人規模のイベントやソラコムのカンファレンス、勉強会など。社員がカメラマンをやるメリットとして、山下氏は社員と密にコミュニケーションがとれ、コンテキストにあった撮影ができる点を挙げる。また、社内外の関係がわかるので、お得意様やキーパーソンを知った上で撮影でき、イベントでがんばる同僚を撮ってあげられるという。その他、「プロカメラマンの納品はけっこう時間がかかるけど、社員であればすぐに社内に共有できるので、営業がお客様にお礼として送りたいときにもすぐに対応できます」ということで、メリットだらけだという。一方、撮影はエンジニアのサブ仕事なので「本業をおろそかにしてはいけません(笑)」というのも重要。とはいえ、一度成功すると次年度以降、周りが協力してくれるという。

 イベントの準備としては、広報やマーケティング、営業と密に連携し、来年のために撮っておきたい写真や押さておきたいショットをきちんと確認。また、プレス腕章もきちんと確保し、プロカメラマンのアサインやイベント場所、協賛企業の動向も押さえておくべきだという。とにかく関係者とコミュニケーションを密にとるというのがポイントのようだ。

 イベントの機材は、やはり一眼二台体制が望ましい。二台はそれぞれ標準ズーム(24-70mm)と望遠ズーム(70-200mm)で、予備として広角ズームレンズも用意。バッテリやメモリカードは当然予備を持っておくという。ストラップはカメラを2台ぶら下げられるモノがおすすめ。その他、「レンズフードにロゴとかを貼っておくと、社員の撮影であることがアピールできてよい」「カンファレンス会場はだいたい暖色系の照明なので、ストロボにはオレンジのフィルターをかましておく」「プロカメラマンにきちんと挨拶し、尊重できる関係を作る」などの知見も披露し、聴衆をうならせていた。

 おさえるとよい写真は、会社やイベントのロゴを入れた写真、基調講演の会場を後ろや斜めからおさえたショット、お客様が映らないようにしたブースの模様、基調講演後の登壇者全員での記念撮影、キーパーソンの登壇の模様、協賛ブースの様子など多岐に渡る。最後、「低ISOにこだわって失敗するより、画質が下がっても高ISOで撮る」「集合写真は端がゆがむので、なるべく35mm以上で写すか、Lightroomで補正する」など、またもや有用なTIPSを披露したところで、タイムオーバー。なかなか知ることのできないカンファレンスカメラマンの頭の中をのぞいているような濃厚なLTだった。

「使う人にとってよい写真がよいイベント写真」(小山さん)

 続いて登壇したのは、日本UNIXユーザー会やPHPやPostgreSQLのユーザー会に所属するフリーランスエンジニアの小山哲志さんは、メインに手がけているコミュニティイベントの撮影について語った。

OSS関連のイベントでおなじみの小山さんはソニー派

 小山さんはソニー派で、最初に買ったデジタル一眼は「α350」。現在はα77をメインに使っており、APC-C一筋だという。「シグマやタムロンがAマウントを出してくれないので、そろそろEマウントに行かないとなあと考える昨今です」(小山さん)。

 小山さんが最初に撮影したのは2007年のPostgreSQLカンファレンスで、以降OSS系のカンファレンスを中心に撮影を担当してきたという。撮影で気をつけているのが、とにかく観客の邪魔にならないこと。そして講演者のさまざまな表情を、さまざまなアングルで撮ること。「ずっと下を向いて話している人とかいて辛いんですけど(笑)、斜め下からなんとか表情をとれるようにしています」(小山さん)。

 現像は基本行なわず、JPEG撮って出しが基本。現像作業は時間がかかるので、現像を前提とするとアップが遅れてしまうというのがその理由だ。「イベントの写真って、自分の判断で善し悪しを決められない部分がある。だったら、すぐにあげてしまって、参加した感が残っているときに見てもらった方がいい。あくまで使う人にとってよい写真がよいイベント写真」というのが小山氏の意見だ。今まで撮った5万枚くらいの写真は、すべてFlickerにアップロード。アルバムごとに専用のURLが用意されるため、ゲストに公開するのに便利だという。

 イベントでの登壇は登壇者にとっては晴れ舞台。きれいに撮ってあげたいというのが「イベントカメラマンの心意気」。こうしてきれいに撮れた写真がプロフィール等に使われると、やはりうれしい。とはいえ、カメラマンとして撮影すると、登壇者と親しくなったと錯覚してしまい、本人に「写真使っていただいてますよね!」と話しても、ぽかーんとされることもあるという。

 さて、小山さんが個人的におすすめなのは、カメラの取り出しが容易な「とれるカメラバッグ」。カメラ2つ持つほどではないけど、中望遠と広角をなるべく切り替えて使いたいという場合などに便利。「望遠レンズをずっと持っていて、上腕部が痛くなったといったことは、僕はあまりない」(小山さん)という。

 最近凝っているのはコスプレの撮影。「コスプレの写真はアクセスが数万になってしまう(笑)」ということで、今後も勉強会と違うところでもお目にかかれそう。写真を使う人の気持ちを考えつつ、自身の作画の楽しみを満たすためにどんなことをやっているか理解できる発表だった。

「写真は写っている人へのプレゼント」(中井さん)

 3番手は「コミュニティで写真を撮るときの心得」というお題で、JAWS-UGをはじめ、さまざまなコミュニティイベントで撮影係を担当している中井勘介さんがLTを披露した。

 中井さんのカメラ歴は7年で、撮影枚数は2万5000枚くらいになるという。このうちプロフィールに採用されているのは50名近くにのぼる。「小山さんもお話ししていましたが、プロフィールに使ってもらうのはめちゃくちゃうれしい。このために撮影しているといっても過言ではない(笑)」(中井さん)。大きなイベントの後は可能な限り速やかに写真をアップするのが、プロフィール写真に採用されるコツとのこと。最近は、メディアに写真を提供することも増えており、アスキーや翔泳社、TechCrunch、MBS(毎日放送)などでも採用されている。使用機材はCanon EOS 6DやPanaconic LUMIX GX7。レンズはシグマのモノを次々と購入しており、今後も増やしていきたいという。

 中井さんが語ったのは、これからカメラうまくなりたいと考えている人に向けてのアドバイス。一番強調したのは、基本が重要という点。中井さんは、「いいカメラ買ったからといっていい写真が撮れるわけではない。露出、ISO、SS(シャッタースピード)、ホワイトバランス、構図などの基本をおさえないと、本当に恥ずかしい写真にしかならない。これは自分の経験」と強調する。

 その上で、個人的な意見として「なるべく明るいレンズを使う」「フラッシュをたかない」「連写をしない」「気づかれないように撮る」などのポリシーを披露。「連写するとなんだか愛着が沸かない。できれば狙って撮りたい」といったあたりがこだわりだ。また、最低限のレタッチはやり、変顔や目半開き、ブレている写真は除去すべきだという。「あくまで登壇している人がうれしいと思う写真を撮るのが、カメラマンとして必要なんじゃないか」(中井さん)。

 イベント撮影のメンタル・スタンス面としては、あくまで脇役であることを意識し、参加者や登壇者の邪魔になることを避けるのが重要。また、友達ばかり撮って、嫌いな人の写真が少なくならないよう、まんべんなく撮るのもポイントだという。上達するためには、やはり上手な人に意見を聞いたり、仲間同志で作品を講評しあうのが重要。中井さんは「写真はあくまで作品で、写っている人へのプレゼント。自己満足ではいけないと思う」と語り、LTを締めた。コミュニティの中の人としてカメラマンとはどうあるべきか、誤解を恐れず、自身のポリシーを強く打ち出していたのが印象的だった。

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