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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第159回

開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く

2017年03月25日 12時00分更新

文● 四本淑三

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 VOXは新型真空管「Nutube」を搭載した初の製品として、超小型ギター用ヘッドアンプ「MV50」を3月25日に発売した。NutubeはVFD(蛍光表示管)で有名なノリタケ伊勢電子とコルグの共同開発によるもの。従来の真空管より低電力で動き、発熱も少なく、小さな筐体に収められる。MV50はそうしたNutubeのメリットをわかりやすく形にした製品だ。

 MV50はサウンドキャラクター別に「ROCK」「AC」「CLEAN」の3種が用意され、店頭価格はそれぞれ2万1600円。また同時に発売された小型8インチスピーカーキャビネット「BC108」は1万800円。MV50とBC108のセット販売もあり、こちらはROCK、AC、CLEANともに2万8080円。そして4月末には本格的な12インチスピーカーキャビネット「BC112」の発売も控えている。

 MV50最大の特徴は小型軽量であること。外形寸法は標準的なストンプボックスサイズのエフェクターと大差なく、重量はわずか540gに過ぎない。ACアダプターと合わせても、ギターのギグバッグに難なく収められる。

VOXのストンプボックス型エフェクトペダル「Tone Garage」(写真右)との比較

 にも関わらず、Nutubeを使ったプリ段と、クラスDのパワー段によるハイブリッド構成で、MV50は最大50Wの出力を発揮する。一般的なギター用スピーカーキャビネットと組み合わせれば、リハーサルスタジオからライブハウスまで対応できるパワーだ。

 また、ヘッドフォン/ラインアウト端子にはキャビネットシミュレーターも搭載されており、自宅練習やDTMのような用途にも使える。こうした応用範囲の幅広さもMV50のウリのひとつ。

 この斬新なヘッドアンプはどのようにして生まれたのか。これから複数回に渡って開発陣へのインタビューをお届けするが、まず初回はこの驚くほど小さなMV50のパッケージから。しかし開発側は意外にも、このサイズを決して小さいとは思っていなかったのだった。

(写真右)株式会社コルグ 商品企画室 江戸有希さん、 (写真左)株式会社コルグ 開発2部 李 剛浩さん

小型でもバンドで使えるアンプを

―― 実物を初めて見て驚きました。笑っちゃうくらい小さいですね。

江戸 でも、最初はもっと小さかったんですよ。これくらい(両手の人差し指と親指で四角形を作る)でしょうか。

―― ええっ!?

江戸 まあ、そこまで小さくなくてもいいんじゃないかということで。このサイズでも十分にインパクトはあると考えたんです。小さければいいってものでもないだろうし。

―― いやいや、十分過ぎるくらいのインパクトですが。

江戸 超小型ヘッドアンプの企画は、実はNutube以前からあって、李が設計を進めていたんですが、ちょっとペンディングになっていたんですよね。「それは今やらなくてもいいんじゃないか」みたいな話だったと思いますけど。

―― じゃあMV50は、Nutubeありきの企画じゃなかった?

江戸 でも、Nutubeでやるんだったら、出す価値があるんじゃないかという話になったんですね。それに最初は50Wじゃなかった。50W以下の出力なら、さっきくらいのサイズでも良かったと思いますが、5年くらい前から小型のヘッドアンプが流行り始めたじゃないですか。15W、20W程度のものが多いと思うんですが。

―― いわゆるランチボックスサイズのアンプですよね。

江戸 はい。それくらいだとドラムが鳴ってると辛いよね、という話があって。音量は出ても、上げていくと使い物にならない音になっていったりする。そこに疑問を感じていたので、多少サイズが大きくなっても、ちゃんとバンドで使える音を出したいなというところで、このサイズです。

―― でもあまりに小さくてアンプにシールドを直でつなぐと、引っ張られて落ちそうで心配なんですが。

江戸 実はデザイン的、機構的にも計算されていて、スラント構造によって、見えやすく操作しやすいうえ、超小型でも安定感があり、前に引っ張られても傾かないようになっています。

 たとえばこんな感じで、シールドをキャビのハンドルに巻いて使うという方法もありますね。

江戸 12インチキャビネットのBC112のハンドル部分には微妙にくぼみを持たせていて、アンプの後ろ足がはまるようには考えています。

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