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山谷剛史の「アジアIT小話」 第139回

Windows 10 Mobileスマホは中国では想像以上に不便だった

2017年03月09日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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Windows 10 Mobile用アプリがとにかく少ない!

ネット上にはWindows Phoneユーザー・マニアの討論の場がある

ネット上にはWindows Phoneユーザー・マニアの討論の場がある

 Windows 10 Mobileの困った現実が対応アプリの少なさである。これは中国でも変わらない。

 AndroidやiOS向けで定番のアプリも、Windows 10 Mobileで使えるものは数えるほどしかない。チャットアプリの「QQ」や「微信」(WeChat)、急激に普及しているシェアサイクル「Mobike」、日本でも対応店舗が増えてきた支払いサービス「支付宝」、オンラインショッピングの「京東」、フォトレタッチの「美図秀秀」「美顔相机」、音楽アプリの「酷我音楽」や「QQ音楽」、動画アプリ「優酷」「捜狐視頻」「楽視視頻」、Uberのような配車アプリ「滴滴打車」。

 「たとえばこんなアプリしかない」という表現ではなく、これでほぼすべてである。

 しかも、利用したアプリはたいていはAndroidやiOS向けにはあるさまざまな機能が実装されていない。

 バージョンアップがおろそかになっているためなのか、とりあえず作ってみただけなのか理由はわからない。

アプリの機能も限定されている

アプリの機能も限定されている

銀行のサイトにアクセスしても利用できない

銀行のサイトにアクセスしても利用できない

 たとえばシェアサイクル用アプリ「Mobike」では、プリペイドで利用するシステムなのにチャージができず、チャージには別のAndroidかiOSデバイスが必要となる。

 支払いサービスの「支付宝」では、支払先がAndroid版やiOS版よりも限られており、本来対応しているはずの一部公共料金などが支払えない。

 また、中国の空港やショッピングセンターが提供する無線LAN(Wi-Fi)スポットでは、Android/iOSはログイン時に微信のアカウントを登録することで、利用が可能となっている。しかし、このシステムがWindows 10 Mobileには非対応のシステムで、微信のアカウントを登録しても利用できない。

 日本ではアプリが使えなくて“もどかしい”という状況だが、中国では定番のアプリが使えず、またスマホ連携システムがAndroidとiOSにしか対応していない結果、“生活がかなり不自由になった”と感じた。

中国でもAndroidスマホやiPhoneがスタンダードに

 今の中国では日々の生活の当たり前が、Android搭載スマートフォンかiPhoneによって成り立っていた。

 スマートフォンでのさまざまなサービスがいきわたる中国では、日本以上にAndroid(カスタム含む)やiOS搭載デバイスを選ばざるを得なかった。

 Windows Phoneにしてもフィーチャーフォンにしても、今や中国でまともに生活するならメイン機としては到底利用できない。

 中国の独自OS搭載スマートフォンが出てもAndroidのカスタムROMでもない限り、到底すべてのアプリが対応するとは思えず、非実用的なものとなろう。

 余談だが以前はネット上で「なぜiOSにあるアプリがAndroidにないのか」という質問が見られたが、中国産スマートフォンが台頭し、iPhoneの人気が陰る最近では「なぜAndroidにあるアプリがiOSにないのか」という声に変わりつつある。

 スマートフォンシェアでiOS離れが起きる中、アプリ開発でもiOS離れの影響があるならば、中国でのiPhone離れが進むことになる。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場」「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 」(星海社新書)。

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