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アプリで焙り加減を選ぶのが面白い

待って、香り良すぎ パナソニックコーヒー焙煎機The Roast

2017年01月19日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 焙煎機にコーヒーの生豆を入れて10分ほどすると、香ばしい匂いがあたりを包んでいく。もっともいい香りが立つのは焙煎したての一瞬だ。フレグランスと呼ばれる香りは麻薬のように脳髄をしびれさせる。たまらない。むり。もうだめ。

「The Roast AE-NR01」
パナソニック
予定価格10万円 4月上旬発売
生豆パック 3種セット(5500円/月) 2種セット(3800円/月)

 パナソニックが1月19日に発表したのは、家庭用コーヒー焙煎機「The Roast AE-NR01」。Bluetoothでスマートフォンに接続するIoT焙煎機だ。焙煎したい豆の銘柄と「浅煎り/中煎り/深煎り」をアプリで選ぶと、豆にふさわしい温度・風量で焙煎する。焙煎方式は熱風式。コーヒー豆の薄皮(チャフ)を風で分離するため、雑味が少なく、掃除の手間もない。焙煎機本体の実売価格は10万円。

 面白いのは月額制生豆配送サービスも始めること。毎月送られてくる生豆を最適なパラメーターで焙煎する。これを1つの“The Roast”というサービスとして売っていく。コーヒーのおいしさは7割生豆、2割焙煎、1割抽出といわれる。生豆と焙煎をおさえれば9割はおさえたようなものというわけ。コーヒーは豆の鮮度が命だからとコーヒー好きの友人も言っていたけど普通は難しい。

The Roast AE-NR01。アプリにつながるIoT焙煎機
アプリで焙煎加減の設定ができる。焙煎時間もわかる
焙煎は熱風サイクロン方式

3種類の強いこだわり

 「生豆」「焙煎設定」「焙煎機」は、それぞれこだわりがある。

 生豆はコーヒー生豆卸大手・石光商事が取り扱っている単一種(シングルオリジン)の豆。中南米、アフリカ、アジアなどの契約農家から、季節に合わせた4つのテーマで生豆を仕入れてくる。石光商事は社内に品質管理センターをもち、水分検査・スクリーン検査・焙煎検査・味覚検査など各種試験を経ているのも特徴。

 生豆それぞれの焙煎方法をあらわす「焙煎プロファイル」を作ったのは、福岡・豆香洞(とうかどう)コーヒーの焙煎士 後藤直紀さん。蒸らし・煎り・冷ましの3工程を豆の特徴にあわせて調整している。たとえば浅煎りは投入温度を高めに設定する。中煎りは煎り・止めのバランスを調整する。深煎りは風量をしぼって豆本来の良さを残す──といった形でパラメーターを作っている。

 ちなみに焙煎士は通常、豆の焼き色だけでなく、豆のはぜる音を聴きながら焙煎を進めている。家庭用焙煎機にも、焙煎機構をのぞきこむ窓がなく、豆のはぜ音を聴きながら温度・風量を調節するモデルはあるが、加減はとても難しい。

 焙煎プロファイルはスマホで設定する。The Roastで配送される生豆のパッケージについているQRコードを読みこみ、浅煎り・中煎り・深煎りを選び、焙煎機にBluetooth転送する。豆の特徴などもアプリに書いてある。

生豆パッケージのQRコードを読みこむと情報を取得
浅煎り・中煎り・深煎りを決定して焙煎機に転送する

 焙煎機は英国のスタートアップIKAWAのロースターを日本向けに再設計。ヒーターとファンを内蔵し、サイクロンの原理で熱風を発生させて豆を焙煎する。焙煎設定などをアプリにまかせるため本体デザインはボタン1つだけでシンプルだ。黒いケースはアルミ製、高級感があり、置いてあるだけでさまになる。日本でめったに見られない素敵なデザインだ。なぜ普段からこれが作れないのか……。

焙煎は簡単、コーヒーの物語を読みながら待つだけ

 焙煎機は運転を開始すると1~2分の予熱がスタート。アプリで生豆パッケージのQRコードを読みこみ、煎り加減を選んだら焙煎機に生豆を投入する。投入口がボタン代わりになっていて、ひねると焙煎がはじまる仕組み。「キュオオオオン」という音を立て、生豆をくるくる回しながら焙煎を進めていく。あとは待っているだけで焙煎が終わるのでとてもらくちんだ。

中央が豆投入容器。左側は排気口。注意書きが多いのは仕方ないか……
毎回配送されてくる生豆。まだ白い
豆投入容器にセットしてひねると運転開始
回転しながら熱風で煎る。焙煎時は熱い排気が出る

 焙煎時間は煎り加減によって10~12分間ほど。焙煎中の温度と残り時間はアプリに表示されている。アプリ、また生豆とともに送られてくるペーパー「ジャーニーペーパー」にはコーヒー生豆にまつわる産地と焙煎プロファイルにまつわる話が書いてある。焙煎のいい香りを味わいながら、コーヒー農家と焙煎士それぞれの仕事を知ってもらうのがコンセプトだとか。国際便の機内誌のようだ。

 焙煎が終わったらカップにたまったチャフを取りだす。カップを替えて、焙煎を終えた豆を出したら焙煎完了。生豆と比べてみると色の差は歴然だ。

チャフ(豆の薄皮)を風で飛ばしてくれる
飛ばされたチャフ。焙烙(ほうろく)などで自家焙煎するとチャフが飛び散って後片づけが大変
生豆と、きれいに焙煎を終えた豆。いい香りがする

 焙煎した豆は好きなコーヒーミルで挽き、ドリッパーで抽出する。新鮮な生豆を焙煎しているので、ドリップするとき表面がむくむくと勢いよくふくらんでいく。ふくらみの正体は焙煎したときに出る炭酸ガス。一杯だてのコーヒーなどがふくらまないのは焙煎から時間が経ちすぎてガスが抜けてしまっているから。ドリップするときにもまた、湯気と一緒にコーヒーの香りがのぼってくる。

煎り方でまったく味が変わるのでびっくり

 飲み比べさせてもらった。ブラジル産(サントアントニオ地区)、エチオピア産(イルガチャフィ地区)の生豆を、それぞれ浅煎りと深煎りで焙煎して淹れたコーヒーを試飲した。どれもおいしかったけれど、それよりも深煎りと浅煎りで味がここまで変わるとは思わずにびっくりした。別の豆だと言われても気づかない。

エチオピア産のコーヒー。左が深煎り、右が浅煎り。別の豆だと言われても気づかないほど味がちがう

 浅煎りだと、ブラジル産は明るいアーモンドのような香りがあり、エチオピア産はフルーツのような甘酸っぱい香りがある。これが深煎りになると、ブラジル産はアーモンドを焦がしたような香り、エチオピア産はコーヒーリキュールのような力強いコーヒーの香りにそれぞれ大変身する。

 今までは「深煎りは苦くて浅煎りは酸っぱい」というきわめて茫漠とした印象しかもっていなかったのでここまで違いがあることが衝撃だった。プロファイルの説明をされたときは「フーン」というくらいに感じていたけど、焙煎次第でコーヒーは本当に別物になる。毎月飲み比べが続けられるのはおもしろそうだ。1年続けると通ぶったコーヒーおじさんができあがりそうな恐怖はある。

 ただ、サービスとして推すなら10万円の焙煎機はウォーターサーバーのようにリースにしてほしかったという気持ちがあった。あとThe Roastで定期配送する生豆だけではなく市販生豆のプロファイルも追加してほしい。それとデザインをそろえたコーヒーメーカーもあってほしい。パナソニックの新たな挑戦ということなので、新しいことはどんどん試してもらいたい。




書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味のカジメン。今年パパに進化する予定です。Facebookでおたより募集中

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