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パナソニックがつくる極上のおうちコーヒーサービス「The Roast」体験会レポート

iPhoneで操作する「スマートコーヒー焙煎機」でつくる極上コーヒーは情熱のカタマリだった

2017年04月05日 11時30分更新

文● コヤマタカヒロ 編集●家電ASCII編集部

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 今年1月、パナソニックがコーヒーサービス事業「The Roast」を発表した。
 パナソニックが考える"自宅で楽しむ極上のコーヒー"は、本体価格10万円(税別)のスマートコーヒー焙煎機本体(AE-NR01)と、老舗のコーヒー豆インポーターとのコラボによる高品質な生豆の定期頒布(月額3800円から)、豆に合わせた焙煎プロファイルで実現するという、まったく新しい形の「家電のサービス化」の提案だ。店頭販売を一切せず、パナソニックの直販サイトのみでの販売とすることも異例だ。

 このこだわりようでどこまでおいしいコーヒーを飲めるのか? そもそも、おいしいコーヒーを作るためにナゼ、スマートコーヒー焙煎機が必要なのか?(もちろん理由があるはず!)。  その本当のトコロを、開発にかかわったキーパーソンたちの想いを家電ASCII主催のイベント『The Roast 体験会』に参加して確認してきた。イベントで感じた「The Roast」を作り出した人々の熱量の高さをレポートしよう。

スマートコーヒー焙煎機が目指すコーヒーの姿とは?

外苑前で開催された『The Roast』体験会。参加チケットは即日で売り切れた。

右がスマートコーヒー焙煎機本体。質感のよい上質なボディも特徴だ。

 体験会は、「The Roast」のサービスを立ち上げたパナソニックのマーケティング担当・図師 和彦さん、スマートコーヒー焙煎機の焙煎プロファイルを作成した豆香洞コーヒー(Tokado Coffee)のオーナー/焙煎士の後藤 直紀さん、そして、定期頒布されるコーヒーの調達とセレクトを行う輸入商社・石光商事の荒川 正臣さんらのトークで進行。間にThe Roastの操作体験や実機で焙煎したコーヒー豆の試飲などを織り交ぜながら進行していくスタイルだ。

 体験会の冒頭、来場者にはエチオピアの豆を浅煎りしたコーヒーが提供され、そのフレッシュな香りを楽しみながらイベントはスタートした。

 最初にステージに立ったのがパナソニックの図師さん。まずは「そもそも『The Roast』ってなに?」というところから解説がはじまった。

 図師さんによると、『The Roast』はこれまでのパナソニックが手がけてきた、モノ作りや取り組みとは全く異なるものだと言うこと。もちろん、パナソニックの持つさまざまなノウハウやDNAは各所に活きている。しかし、同時に全く新しい形でのチャレンジだったと語る。

パナソニック アプライアンス社 商品企画部 商品企画課 課長 図師 和彦さん。『The Roast』の産みの親のひとり。

「コーヒーは農園で果実として栽培され、ご家庭には1杯のコーヒーとして届けられる。いわゆる『From Seed to Cup』というプロセスがあります。栽培、選定、生豆という行程を経て、焙煎によってコーヒー豆になる。
 パナソニックには、これまでも“挽いてコーヒーを飲む”という商品はありました。今回は、もっと上流のところで、コーヒー豆を選定するところから、焙煎するところまでを初めて展開します」(図師さん)

コーヒーの実から、コーヒーになるまでを示した図。焙煎は産地から来た豆を飲み物に替える重要な工程だ。

生豆の品質と、焙煎技術がコーヒーの味の9割を決めるという。

 ではなぜ、パナソニックがコーヒーの上流工程に手を出すのだろうか。それはそこにコーヒーの美味しさが詰まっているからだ、と図師さん。
 普段あまり意識しないが、コーヒー豆も生鮮食品の1つだ。目利きが良い豆を選び、それを焙煎という方法で調理する。この部分が非常に重要で、一説にはコーヒーの美味しさの9割はこの豆選びと焙煎にあるといわれる(おいしさの残り1割がドリップ=抽出)。この9割の美味しさを決める部分で、新しい価値提案を行いたいと考えたのが、『The Roast』ということになる。

 しかし、豆選びや焙煎のノウハウはパナソニックにはなかった。そこでパートナーとして、豆香洞コーヒーの後藤さんや、世界中の産地からコーヒー豆を仕入れている石光商事を迎え、サービスを開発することになった。

「自宅で楽しめる"極上のコーヒー体験"というところで、単に焙煎機だけを売るのではなく、世界中から集めた美味しい生豆を、プロの技術を自宅で再現して焙煎するということを、新しいコーヒー体験として提案したいと思っています。これをサードウェーブの次の"フォース(4th)ウェーブ"と位置づけて、"自宅焙煎"をキーワードに、豊かなコーヒーライフを展開していきたい」(図師さん)

サービスとしての『The Roast』の全体像。スマート家電で培ったビジネスプラットフォームを活かして、パナソニックが提携先とユーザーを繋ぐ役割をになう。

 厳選された生豆、プロの焙煎技術、これと並んで必要なのが、それを再現する焙煎機。パナソニックの技術が特に生きるのはこの部分だ。目をつけたのは、イギリスのベンチャー企業である、IKAWA社のスマートコーヒー焙煎機だった。
 ベースになったのは、プロ用の"テストロースター"と呼ばれる製品だ。業務用の焙煎機では、10kg、20kgという単位でコーヒー豆を焙煎するが、その前に、サンプルを少しだけ焙煎するときに使うものがテストロースターだ。

「スマートコーヒー焙煎機の開発では、IKAWAのコンセプトを活かしながら、後藤さんが狙う味をどの家庭でも再現できるように開発してきました。温度や風量制御を行いながらも、家庭で使う以上、安全・安心して使えることが重要です。スマートコーヒー焙煎機では、直火ではなく熱風循環方式で焙煎しています。これにより、後藤さんの考えるプロファイルをしっかりと再現し、ムラなく焙煎できます。また、雑味の原因となるチャフ(生豆表面の薄皮)も自動できっちり分離できます。こういった部分も家電に求められる機能としてしっかりやっています」(図師さん)

スマートコーヒー焙煎機の基本的な仕組み。熱風焙煎、チャフの分離、スマホ連携がキーだ。

随所で、図師さんや後藤さんに質問をする司会担当の週アス イトー。質問する姿は仕事を忘れたコーヒーファンでした。

 このスマートコーヒー焙煎機の構造説明のとき、週アスのイトーから質問が飛ぶ。日本では一般的な電圧は100Vだ。しかし、IKAWA社のイギリスのメーカーのため、電圧は240V。電圧が半分以下ということは、出力も半分以下になる。これを日本市場向けにどう対応したのだろうか。

 図師さんもその部分には非常に苦労したと語る。特許などもあるため、多くは語れないとのことだが、焙煎のプロである後藤さんが求める温度、風量を実現するために、基本的な製品コンセプトや内部構造は活かしながらも、ほぼゼロから開発し直すほどのカスタムになったという。

スマートコーヒー焙煎機の基本構造。サイクロン構造によりチャフが分離できる。

『The Roast』を使った基本的な使用ステップ。ほとんどがスマホの操作で完結。職人技のローストは、スマートコーヒー焙煎機が代わりにやってくれる。

こだわるなら手挽き&ハンドドリップという声もあったが、淹れ方は自由だ。

本体10万円にハードルを感じる人に週アス イトーがおすすめするのが、手数料なしの12回払い。税込み9000円はスマートフォンの月額維持費と実はほぼ変わらないという思いつきだとのこと。手数料はかかるが24回?99回払いなどもできる。

「『The Roast』の発売は4月上旬(その後、4月13日からの出荷開始を発表)を予定していますが、ギリギリまで完成度を高めるため、実はこのイベント開催の3月中旬時点でも、まだ開発の最終のツメをしている段階です。焙煎機のコントロールを行うスマートフォンは、当初はiOSのみの対応となります。アプリをインストールしていただき、本体とペアリング。そして、毎月届く生豆のパッケージにあるQRコードを読み取ることで、後藤さんが作成した焙煎プロファイルがダウンロードできる仕組みです。あとは画面の指示に従って本体を操作するだけで焙煎できます」(図師さん)

 個人的にも凄く興味を持ったのが、毎月届く生豆には、その生産地のさまざまなストーリーを記述したリーフレット、「Journey Paper」が付属するということだ。そこには、コーヒー豆の特徴はもちろんのこと、生産国の文化や風習なども記載されているという。

焙煎を通して世界を旅するというコンセプトが『The Roast』の面白いところ。

プランによって毎月、2~3種類のコーヒー豆が届く。そこには産地のストーリーも綴られている。

 また、同様の読み物は焙煎をコントロールするアプリ内にも用意されている。約10分(焙煎度合いによる)の焙煎待ちの時間、それらに目を通すことで、産地に思いを馳せてほしいという、The Roast開発チームの世界観が見て取れる。

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