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大谷イビサのIT業界物見遊山第26回

AWSとre:Inventのどこがすごいのか、かみさんに説明してみた

2016年12月07日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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「普通の読者からすればクラウドなんてiPS細胞と同じ」とは、AWS re:Inventの打ち上げに同席したとあるビジネス誌記者の弁。ともかくITにあまり明るくない人にAWSとre:Inventのすごさをどう伝えるか? 脳みそをしぼったあげく、出張帰りの私とうちのかみさん(元IT業界人)との会話で再現してみた。

圧倒的な熱気だったre:Inventをなるべくわかりやすく説明します

アマゾンじゃなくて、クラウドを売っているAWSだよ

イビサ:いやあ、さすがにラスベガスは遠くて疲れたよ。

かみさん:おつかれさま。今回はアマゾンのイベントだったんだよね。

イビサ:アマゾンというか、AWSだね。Amazon Web Services。

かみさん:ん?うちがいつも使ってるアマゾンじゃないの?

イビサ:いや、あのアマゾンなんだけど、AWSは売ってるモノが違うの。クラウドを売ってるの。

かみさん:前から聞きたかったんだけど、クラウドってなに?

イビサ:えっと、アマゾンはショッピングサイトを長らくやってるんだけど、そこでいっぱいコンピューターが必要だったわけ。でも、ビジネスがどんどん拡大して、コンピューターが増え過ぎちゃって手に負えなくなった段階で、アマゾンの中の人がどうやって管理したらいいか試行錯誤した結果、できたのがクラウドコンピューティング。数多くのコンピューターをインターネット越しで使える仕組みを提供しているのが、アマゾンの中のAWSという会社になるわけ。

かみさん:でも、私も昔はISPに勤務してたけど、コンピューターを貸すって、別に昔からあったよね。ホスティングとかと違うの?

イビサ:最初は確かにそう見られていたし、なんといっても多くの人にとってアマゾンってネットの本屋さんだからね。でも、AWSはたとえばアクセスがいっぱい来た時に、それに耐えられるようコンピューターをすぐに増やしたり、料金も使った分だけ課金するようにしたり、新しい仕組みをどんどん取り入れていって、今のクラウドというようなモデルができた。コンピューターだけじゃなくて、データベースとか、メールとか、今まで社内で導入してきたソフトウェアや管理の仕組みをサービスとして売っているのが今のAWS。それをWebブラウザからポチポチするだけで、すぐに使えるわけ。

かみさん:なるほどね。じゃあ、お客さんはコンピューターを買ってきて、ソフトをインストールしなくてもすぐに使えるのね。

イビサ:そういうこと。

会社を休んで、自腹で行く人はなにをre:Inventに求めるのか?

かみさん:じゃあ、今回ラスベガスに来た人は、みんなコンピューター業界の人なわけ?

イビサ:基本的にはそう。CEOのアンディ・ジャシーさんも「re:Inventは他の会社みたいな営業イベントではなく、エデュケーショナル(教育的)なイベントだ」って毎回言うからね。その意味では、本当に技術者のためのイベント。だから来る人も、コンピューターに詳しいエンジニアとか、ソフトウェアを開発する人が多いかな。あと、クラウドを導入する会社のIT部門の人や、クラウドを売っている販売代理店、システムを構築するシステムインテグレーターの人など、まあいろいろだよ。そんなこんなで今年は3万2000人が来たんだって。

かみさん:なんだか想像できない人数。

イビサ:昔住んでいた大磯(神奈川県)の人口よりも多い参加者だから、本当にびっくりするよ。今年はヴェネチアンとパラッツォという巨大ホテルでも入りきらず、ミラージュという別のホテルも会場になってたよ。とにかく会場は人だらけで、大変だった。

とりあえず人の渦

かみさん:ふーん。日本からもけっこう行った人いたの?

イビサ:うん。去年より、140人くらい増えて、500人くらいになったというけど、確かにクラウド民族大移動だよね。JAWS-UGというAWSのユーザーグループのサイトをやっているから、現地で知り合いにいっぱい会うんだけど、ほとんどすれ違いという感じで、ちゃんとお話しできなかったなあ。1週間、会社を休んで自腹で来ている人もいて、びっくり。

かみさん:えっー? 会社からお金出ないのに来る人がいるんだ。でも、そんなに苦労して、アメリカのイベントに行って、なにをするの? だって最近は資料とか、動画とかあるんでしょ。

イビサ:いろんな目的があるけど、基本的には最新情報を直接聞きにいくんだと思うよ。今回は水曜日と木曜日の2日間で基調講演というのがあって、新サービスが一気に発表されたし。あとはそういった新製品も含めて、いろんなサービスの使い方を説明するセッションが400くらいあるから、そういうのに参加して、スキルアップしたり、自分の会社のビジネスにうまく使えないか考える訳よ。

プレスは前の方にいたとは言え、舞台もこの規模です

かみさん:とにかく熱狂的な人が行く訳ね。

イビサ:あとは、やっぱり「ネットワーキング」かな。なんといっても、ヴェネチアンは全室スイートだから、毎晩のように呑み会があって、このサービスがいいとか、悪いとか、ビジネスにどう使おうみたいな話が出たんじゃないかな。うちも4日目の夜にJAWS-UGの人に集まってもらって、座談会というか、呑み会やったけど、楽しかった。朝までしゃべれそうだった。

かみさん:なんか修学旅行みたいだね。でも、さすがに仕事だと、同業他社とか、お客さんとかが来るわけでしょ。話しにくい感じがしちゃうけど。

イビサ:そこがAWSユーザーのすごいところというか、AWSという共通項があるだけで、みんな仲良くなっちゃうんだよね。やっぱり、日本はまだまだアンチクラウドの人もけっこう多くて、そういう人たちをどうやってクラウドに引き込むか、参加者は考えているから、同じ話で盛り上がるんだろうね。

これだけの人がクラウドでビジネスしているところがインパクト

かみさん:で、イビサ的には今回のイベントはどこがすごかったの?技術的な話は、私に話しても、そんなにわからないと思うけど。

イビサ:確かに人工知能とか、IoTとか、新サービスはいろいろあったけど、一番面白かったのは、ハミルトン先生のナイトイベントかな? 普段、クラウドの中身って、なかなか話してもらう機会がないんだけど、こんなこと話していいのかなというところまでバッチリ話してくれたからね。

まさにロックスターだったハミルトン先生。こういうタレントがAWSには多い

かみさん:そういうのイビサ好きだよね。

イビサ:あとで、AWSの人に聞いたら、ハミルトン先生はそういうこと話してもいいらしい(笑)。でも、一番のインパクトはこれだけ多くの人たちが、クラウドでビジネスしているってことかな? 参加者も多かったし、エコシステムと呼ばれるパートナーの出展もかなりすごかった。基調講演会場のSANS EXPOは何度も行ってるけど、あんなに展示がビッチリ詰まっているのは初めて見た。日本からの出展もあって、うちでよく記事書いているソラコムさんやサイボウズさん(kintone)も展示してたよ。

かみさん:アメリカの展示会で日本人ががんばっているのを見ると、応援したくなるね。

ソラコムさんも米国でのリリースにあわせてブースを出してました!

イビサ:今回はビジネス誌の記者も参加していたんだけど、「自分は技術的に明るいわけじゃないけど、みんな儲っているんだというのは発見」って言ってた。イベントに来られなかった人も含めて、相当な数の人たちがすでにクラウドで食べている、もしくは食べようとしているというのが大きいなと。

かみさん:ビジネス誌の記者は目の付けどころが違うのね。

日本の会社は大丈夫か、不安になった

イビサ:でも、日本の会社はこのままで大丈夫かという不安もあったなあ。

かみさん:どういうこと?

イビサ:基調講演を聞いていると、アメリカの会社はクラウドを本当に道具のように使いこなしていて、新しいビジネスどんどん進めているわけ。最近は「デジタルトランスフォーメーション」というキーワードがIT業界のイベントでは必ず出てきるんだけど、今回のre:Inventもそれが基調講演に出てきた。

かみさん:デジタルの変革って言うこと?

イビサ:たとえば、Amazon Dash Button(ダッシュボタン)というデバイスがあって、あらかじめ決められた商品の注文がボタン1つでできちゃう。たとえば、コーラとか、お水とかの日用品が登録されているダッシュボタンを冷蔵庫に貼っておけば、主婦はそのボタン押せば注文が終わっちゃうわけ。翌日どころか、当日に届いちゃうかも。

Amazon Dash Buttonは大きさ以外はこんな感じ

かみさん:それは便利ね。うちだったら、やっぱり水かしら。

イビサ:でも、これって小売業の商売そのものを大きく変えちゃうでしょ。

かみさん:確かに近所の酒屋さんとかは困っちゃうわね。

イビサ:前に話したタクシー会社のウーバー(Uber)とか、民泊のエアビーエヌビー(AirBnB)とか、商売のやり方自体を大きく変えるような変革がアメリカだけじゃなくて、世界のいろんなところで起こっているわけ。でも、こういう仕組みって、スピード感とか、規模が重要になるから、そもそもクラウドがあるからできるんだよね。

かみさん:日本の会社はそういう流れについて行けるのかなということね。

イビサ:そうそう。今回はそういうビジネスを立ち上げているスタートアップだけじゃなく、政府機関や金融会社、電力会社とか、本当に大きい企業がすごいスピードでサービスを作っているという話が出てきた。しかも、今後18ヶ月でここまでやります!みたいなことを、向こうのえらい人は大観衆の前で言うのよ。

かみさん:やっぱり早い者勝ち、やったもの勝ちなのね。

イビサ:確かに日本でもクラウドの導入は進んでいるけど、大企業の導入はまだまだだし、なにしろスピード感が全然違う。ひたすらPCの盗難・漏えい対策と帳票のレイアウトやってる日本企業は、本当に大丈夫かと心配になったんだよね。

かみさん:イビサの会社も紙だらけだって言ってたもんね。

イビサ:そういうことも含めて、今回はいろいろ考えさせられたなと。

かみさん:なるほどねえ。おつかれさまでした。

マクドナルドもAWSをパートナーにショッピングサイトを構築

イビサ:そう言えば、今回はマクドナルドの人が登壇して、コマースの仕組みを紹介してたけど、基調講演やったアンディ・ジャーシーさんが「子供の頃は休みの日にマクドナルド行くのが楽しみだった。そんなマクドナルドとこうしていっしょに仕事ができて光栄」みたいなことを言ってて、自分と同じだと思った。

かみさん:アメリカ人も同じなんだね(笑)。

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