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新発表の洪水!AWS re:Invent 2017レポート第7回

Sage MakerやDeepLensなどでML活用の敷居をとことんまで下げる

AWSのジェフ・バー氏に聞いた「ML」「ベアメタル」「マルチリージョン」

2017年12月12日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ラスベガスのAWS re:Inventの会場で、AWSのチーフエバンジェリストであるジェフ・バー氏に話を聞くことができた。鮮やかなパープルヘアーなバー氏に、「ML」「ベアメタル」「マルチリージョン」などのキーワードについて聞いてみた。

IoTとMLを理解してもらうためにDeepLensを作った

 今年のre:Inventで大きくフォーカスされたのは、やはりAI分野だ。今回、AWSはAIではなく、ML(Machine Learning)と表現を統一し、さまざまなレイヤーでのサービス強化を一気に推し進めた。他社の動向を見据えたように、バー氏はMLサービスの強化に関してこう語る。

「MLは非常にパワフルなテクノロジーだ。5年先か、10年先かはわからないが、今後すべてのアプリケーション、すべての事業に、この技術が組み込まれることになるだろう。基調講演でも発表されていたが、TensorFlowの6割はAWS上で動いている。他社に比べて声高には言っていないが、AWS MLを使っているお客様は多い」

 AI分野ではAzureやGCP、IBMなどの競合も先んじてサービスを展開しているが、今回AWSはディープラーニングを組み込んだユニークなカメラ「DeepLens」を投入してきた。プロダクトラインナップとエコシステムで他社を凌駕するAlexaの例を見るまでもなく、こうしたハードウェアとクラウドとの統合はAWSの勝ちパターンでもある。

「DeepLensは、IoTとMLの組み合わせという点で興味深い。2つの技術をよりよくお客様に理解してもらうために、この製品を開発した。学習や試用を前提としつつ、プロダクションレベルの製品でもある。KindleやKindle Fire、Alexaなどのデバイスをファミリー化してきたAmazonなので、当然次のラインナップが出てくることは容易に想像できる」

 もう1つの注目はMLの利用までをとにかくシンプル化する「Sage Maker」だ。現在、ML活用の最大の課題は人材不足。多くの企業はITエンジニアのみならず、数学に強い学生、データサイエンティストなどに再教育を施してML人材をなんとか確保している現状だ。これに対して、AWSはSage Makerをはじめとした新サービスでMLの民主化を進めていくという。

「今のAWSのゴールは、MLを使うための敷居をとことん下げることだ。これまでMLは限られたスキルを持ったごくわずかな人が使えるテクノロジーだった。これを一般的なテクノロジーがわかるユーザーだったら使えるくらいまでにしていきたい」

カスタムハードウェアの投資からベアメタルインスタンスが実現した

 初期からAWSをウォッチしてきた人からすると、ベアメタルインスタンスの登場は興味深い。ハードウェアを直接利用できるベアメタルクラウドは、長らくAWSのラインナップに入ってこなかったが、一般ユーザーが利用可能なインスタンスとして発表された。登場の背景はもちろんVMware Cloud on AWSをきっかけに生まれた顧客のニーズだ。

「お客様側のベアメタルのニーズは、だいたい技術的な要件ではなく、ビジネス的な要件によるものだ。たとえば、ベアメタル上ではないと動かせないライセンス付きのソフトウェアを動かしたいといった要件だ。一方、お客様独自のハイパーバイザーをベアメタル上で動作させたいというニーズもある」

 一方で、ハードウェア開発の機が熟したという点も大きい。これまでAWSはネットワークやセキュリティ、ストレージなどに特化した専用ハードウェアを開発。「Nitro」と呼ばれるこのプロジェクトで、ハードウェアにフォーカスしたインスタンスを年々増やしてきたという。

「特化したハードウェアを使えば、今までよりも効率的にベアメタルを動かせる。この5~6年くらいのエンジニアリングの結果として、ようやくベアメタルハードウェア上にクラウドを載せられるところまで到達できたということだ。お客様自身がデータセンターで構築する環境より、ベアメタルインスタンスの方がはるかに効率がいい。カスタムハードウェアに投資した結果として、ベアメタルインスタンスが生まれたからだ」

 想定しているのは、やはりエンタープライズユーザー、あるいはレガシーシステムを保有するオンプレミスのユーザーだという。とはいえ、バー氏は、「今後は開発者の創造性をベアメタル上で発揮する場面も出てくるだろう」とも述べており、新しいユースケースにも期待しているという。

お客様は「真のグローバルアプリケーション」を求めている

 もう1つ、ジャシーCEOの基調講演で印象的だったのは、「マルチリージョン」というキーワードだ。競合であるAzureのCosmos DBやGoogleのCloud Spannerを意識しているかはともかく、AWSとしては全ノード読み書き可能な「Aurora Multi Master」を発表し、2018年にはマルチリージョンに展開する。DynamoDBに関しても、マルチマスター・マルチリージョンに対応する「DynamoDB Global Tables」を発表している。

全ノードに読み書き可能なAurora Multi-Master

「今までシングルリージョンだったが、マルチリージョンで展開したいというお客様の声が多く上がるようになってきた。真にグローバルなアプリケーションをお客様が開発したいと考えている。どんなイノベーティブなサービスを立ち上げていくのか楽しみだ」

 ここで言う真のグローバル対応という点では、中国の展開も気になる。先日、法規制により、AWSが中国での物理インフラの一部を売却したという報道が流れたばかり。しかし、2008年に初めて中国に訪れ、AWSがない状態でコミュニケーションした経験を持つバー氏は、以下のようにコメントする。

「ビジネスする環境としては、確かに中国はユニークだ。でも、どの国や地域でもそれぞれの法規制があるので、会社としてはそれをきちんと学びながら事業を進める。初の中国リージョンを立ち上げて数年経つが、まもなく第2の中国リージョンが立ち上がる予定だ」

 どんな質問にも丁寧に、しかも笑みを絶やさず答えてくれたバー氏。最後に「来年3月に日本に行くよ!」というサプライズな情報を得ることができた。3月10日に開催されるJAWS DAYS 2018はますます要チェックと言えるだろう。

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