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「ライブ配信メディア完全解剖 〜過去と今、そして未来へ〜」 第9回

有名ニコ生主「盛り上げるための炎上・警察沙汰は求められていない」

2016年10月06日 17時00分更新

文● ノダタケオ(Twitter:@noda

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 ニコニコ生放送の公式番組「『雑談』配信者公式特番」。「雑談」を題材として活動をする配信者たちが集まり、さまざまなテーマを基に展開された「雑談」特化型番組が9月24日に配信されました(続く「雑談配信者」公式生放送の第二回も10月22日(土)19時から配信予定)。

 前回に続き「『雑談』配信者公式特番」の中で「ライブ配信メディア」に関連するテーマについてピックアップして振り返っていきます。

 今回は「ネタの枯渇」や「ハードルがどんどん上がっている」問題、そして「祝電」問題などのイタズラや嫌がらせによる「雑談」配信者の苦悩の面であったり、ニコ生独自の「アンチもリスナー」文化について改めて考えていきたいと思います。

※タイムシフト(録画アーカイブ)はこちらからご覧頂けます。

出演者(敬称略・順不同)
司会:ひろゆき
出演雑談配信者:横山緑、コレコレ、もこう、NER、あさの☆ひかり
アシスタント:ゆかちー。

生配信で過激なことはやらされ尽くされた

 「いま過激なことってやらされ尽くされた。なにやっても伸びなくね?いる?最近伸びた人。ノエルさんぐらいしか知らない。最近、それ(過激なこと)もパターンが決まってて、だいたいみんながやっちゃったおかしなこと。想像を超えるおかしなことがあんまり起きない。所詮、カラダ張りますってのは、昔から世界中で色んな人がやってきたことだから、もう新しいネタってあまりない。あとは法に触れるかタブーにふれるかってところだけど、そこももうこの辺(横山緑さん・NERさん・コレコレさん)がやっちゃった」(ひろゆきさん)

ゆかちー。さん、ひろゆきさん

 「結局、ぼくらは先行の利でバッと名前がでた。昔はニコ生(ニコニコ生放送)もニコ動(ニコニコ動画)も無法地帯、カオスだったから(自分も)いろんなコトをやった。(でも)いろんなコトをやっていくと『次はもっと面白いことやれ』とコメントのハードルがどんどん上がっていってしまう。そして、だんだん規制が厳しくなり、結果、できる範囲が狭くなっていく。」(NERさん)

NERさん

 「ずっと生配信を長い間続けていると、(生配信でどのようなコンテンツを提供していくか?という)ネタの枯渇問題に直面する。そして、視聴者から『外へ行け』と毎回求められる。そのほうが(生配信ならではの)ハプニング性がある(から)。でも、外へ出て生配信をすると、(自分が意図しないところで視聴者から)通報をされてしまい警察沙汰へ発展してしまうことがある。いま炎上・警察沙汰は正直もう求められていない」(横山緑さん)

横山緑さん

「ネタの枯渇」と「ハードルがどんどん上がっていく」問題

 「雑談」配信は、ライブ配信メディアのコメント機能を使って、視聴者と配信者がコミュニケーションをすることによって生配信(番組)が展開されていく題材のひとつです。

 視聴者のコメントによって生配信の進行が変わることがある「予想不可能な展開」は、予め台本(進行)が決まっているテレビとは違なり「ライブ配信メディアの醍醐味」のひとつとも言えます。

 しかし、「これまでの視聴体験を超えるコンテンツ」を視聴者は配信者へ対してどうしても求めてしまいがちです。特に、黎明期からライブ配信メディアの先頭をはしるニコ生のユーザーはこれまでの間さまざまな視聴体験を得てきた古参のユーザーが多いから、その傾向は特に顕著です。

 結果、その期待に答えていかないと、視聴者が離れていってしまうことから、配信者も答えるためにさまざまな生配信企画を考えていくことになります。

 ここで、どうしても「ネタの枯渇」や「ハードルがどんどん上がっていく」問題に当たってしまうことが多くなります。

 これまでのニコ生(やニコ動)独自の文化や歴史もあり、視聴者の興味を継続的に惹いていくための手段を模索していった結果、どうしてもより過激な方向へ向かってしまいがちになることも事実です。

ひろゆきさん、横山緑さん、NERさん

ニコ生独自の「アンチもリスナー」文化

 数多くあるライブ配信メディアの中でも、特にニコ生においては「アンチもリスナー(視聴者)」という文化があります。

 ネガティブなコメントを配信者へ向けて送るという視聴者の行為は「わざわざコメントを送ってくるのはその人(配信者)が気になっているから」という意味で、そういった視聴者も「ファンの一人」としてきました。

 また、そういったネガティブなコメントも、うまく転がしていく(=コメントを通じて絡んでいく)という技量がニコ生においては配信者のひとつとして求められる時代がありました。

 しかし、近年、その「アンチもリスナー」文化で許容されてきたものが、度を超えた「祝電」(=いわゆる苦情の電話をかける)であったり「通報」や「イタズラや嫌がらせ」へ発展するケースが多くなったと感じます。

 これは、私自身、さまざまなイベントやネット番組のライブ配信のお手伝いをオシゴトでさせて頂く上で、特に、ニコニコ(企業)チャンネルの番組制作においても影響が起きています。

 ニコ生というライブ配信メディアを活用して企画・配信される番組である場合、やはり、ニコ生で馴染みがある「生主(=独自に制作したコンテンツ(番組)を定期的に継続して生配信している個人の配信者)」に協力を頂き、制作している番組へ出演を頂くこともあります。

 「生主」の方に出演をお願いする以上、もちろん、それぞれの「生主」には一定数のアンチリスナーがおり、「アンチもリスナー」文化のニコ生では想定済みの部分もあります。こうしたことから「祝電」「通報」「イタズラや嫌がらせ」はこれまでいわゆるちょっとした番組制作上の立場側もいわゆる「ネタ」として許容されてきました。

 しかし、成りすましをして勝手にデリバリーを依頼してしまったり、着払いで商品が送られてきてしまう(結果、その代金請求は成りすましされた本人へ来てしまう)など、イタズラや嫌がらせの対象となってしまった本人だけでなく、さまざまな人を巻き込んだ形で起きることがあります。

 これはごく少数の限られた数名による行為であるものの、ある程度を許容を超えてしまうと、そのリスクを回避せざるを得ない方向へ向かうしかありません。

 こういった流れになってしまうことは、ニコ生における「公式」や「企業」の番組へ活躍の場を広げようとしている「生主」自身の障害になるだけでなく、番組を制作しているスタッフをはじめ、(「生主」たちと協力して頂きながら番組を作り上げていこうという)主旨に賛同して後押ししている関係者たちも、これまで以上に“より”慎重になってしまいます。

 それが、結果的にこれまでの視聴者の視聴体験を超える「ワクワク」がないコンテンツへ落ち着いてしまい、「ニコ生全体的に面白くなくなってしまう」要因のひとつへとつながっていることに危惧をしています。

リスクはなるべく回避していかなければならない流れへ

 「(自分ができないことやポリシーに反することに関しては)リスナーに従う必要がない。それをしてしまうとさらに過激なことを求められてしまって、自分が追い詰められる。『ゲームやれ』とか『歌を歌え』って言われるぐらいなら誰でもできる。でも、『外へ行け』や『警察沙汰やれ』だのそれに答えてしまうと後々辛くなる。できる範囲はリスナーのリクエストは聞ける。できない範囲はやらない」(コレコレさん)

もこうさん、コレコレさん、あさの☆ひかりさん

 言うまでもなく当たり前のことですが「コンプライアンス」を守った上での生配信(番組)は大前提です。

 しかし、ニコ生上に限らず、さまざまなライブ配信メディアにおいて配信者自身の認知度を上げていくうえで必要になってくるのは、残念ながら、こうしたリスクに“より”シビアに対応していかなければならない流れになりつつあります。

 その上で、「これまでの視聴者の視聴体験を超えるもの」を企画していくことが「雑談」配信者に求められます。

 さまざまな制約の中で、それを乗り越え、これまでの視聴者の視聴体験を超えるコンテンツをリスナーへ与えることができるか?

 それがいまの「雑談」配信者を含め、ライブ配信メディアで配信者自身の認知度を上げていこうとしている人達すべてに求められてきており、その枠組のなかでどのようなコンテンツ(番組)を提供していくか?を改めて具体的に考えなければいけない時期なのかもしれません。

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