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一生エンジニアとして生きていきますか?

2016年05月09日 13時00分更新

大滝由子

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就職して3年が過ぎ、「そろそろ辞めどきかな」「この仕事をずっと続けられるのかな」と感じているエンジニアのために、転職と独立に役立つ「技術以外」の知識を紹介。派遣エンジニア、外資ITベンダーでトレーニングマネージャー、IT業界専門のベンチャーキャピタリストなど、IT を軸に多彩なキャリアを持つプロコーチの大滝由子さんが解説します。
今回は、エンジニアのスキルを生かしたキャリアの横展開を紹介します。(編集部)

ITが好き=技術者としての適性がある…とは思えないこともある

私にもかつてエンジニアとしてサーバーの構築や運用管理を仕事としていた時期がありました。しかし、ITには興味があったものの、実際に仕事にしてみると、技術で何かを作り上げることや、作り上げたシステムを運用したり改善したりすることにはさほど興味を持てない自分に気がつきました。

「ITは好きだけど、もしかすると技術者の仕事は違うかも……」と思うことがあれば、この記事がキャリアチェンジを考えるヒントになるかもしれません。

技術が進歩するスピードについていくのが大変

どんな仕事でも情報収集や勉強は欠かせませんが、その中でも常に努力をし続けなくてはならないのが、エンジニアではないでしょうか?

ようやく修得した技術がどんどん陳腐化し、また次の技術が生まれてきて、知らなくてはならない技術範囲も年々増えていく。それが楽しいと感じる人はエンジニアという仕事に適性があるといえるかもしれませんが、「こんな毎日がいつまで続くのだろうか?」「自分は常に技術を学び続けるほどそこまで技術の世界が好きだろうか?」…と、頭をよぎることがあれば、キャリアチェンジを考えるときかもしれません。

熟慮せずに時の流れでなんとなくエンジニアになってしまった

「インドでは文系出身エンジニアなんてあり得ない!」とインドのIT関係者に聞いたことあります。彼らの国では理数系の高等教育を受けた人が知識や適性を生かして就く仕事が「エンジニア(技術者)」という仕事。一方、文系出身のスタッフはエンジニアではなくて「テクニシャン(技能者)」と呼ぶのだそうです。

日本では、エンジニアになるためのスタートのハードルが低いため、文系出身でもなんとなく時代の流れでIT業界に就職したり、総合職として入社したら情報システム部門に配属されたりしてエンジニアになった文系出身者がたくさんいます。私自身、たくさんの文系出身のエンジニアに会ってきたこともあり、「文系出身者がいいエンジニアになれない」とは決して思っていません。しかし、流れでエンジニアになってしまったために、「実は自分の好きな仕事ではない」「技術に対して興味を持てない」「このままエンジニアを続けるのはツラい」……という方は、よくお見かけします。

適性以外にも、エンジニアという仕事は、納期が厳しいプロジェクトでは相当な残業があったり、障害対応や24時間監視などの仕事でワークライフバランスを計画することが非常に難しかったり、といったこともよくあります。体力的な問題や、女性であれば妊娠・出産などが理由で、長時間現場に拘束されるエンジニアの仕事が厳しいこともあるでしょう。

こうした理由で、エンジニアの仕事を続けることに違和感があっても、「エンジニアを辞めるとなるとこれまでのキャリアで得た知識や経験が無駄になるのではないか」との不安もあるかもしれません。

でも大丈夫。これまでのエンジニア職で身につけたスキルを別の職種に横展開することで、より大きなキャリアの花を咲かせるケースもたくさんあるのです。

技術知識が生かせるキャリアチェンジの例

エンジニアの仕事で得たスキルを生かせる仕事を具体的に紹介します。

1.営業系職種へのキャリアチェンジ

営業担当者に同行してお客さまを訪問した経験はありますか? そのとき、営業担当者に対して「この営業は本当にお客様の話を理解しているのか? 理解するには技術知識がなさすぎるような…」「ずいぶん適当な説明をしているな」「お客さまの希望に沿った提案が自分ならもっと的確にできるのに」と思った経験があれば、「プリセールス」に向いているかもしれません。

プリセールスは、ある程度実現したいことが決まっているお客様に、最適な製品やソリューションを提案したり、またそれらについてどのようなものかを説明したりする仕事です。プリセールスはシステムの構築や開発は直接担当せず、受注獲得の支援をするエンジニアです。

もちろん企業にもよりますが、IT業界の営業職への技術教育は通り一遍なことが多く、営業担当者は技術的な知識が足りずにお客さまとの商談に苦労しています。そんな営業を補う職種が、「プリセールス」です。

もちろん、プリセールスの立場ではなく、売上を上げることに強い興味があれば、営業職そのものへの転職もよいでしょう。

2.マーケティング部門へのキャリアチェンジ

新しい製品を導入する際に、ベンダーのWebサイトやカタログの情報が非常にわかりにくかったり、自分の知りたい情報が掲載されていなかったりといった経験はありませんか?

このような問題は、マーケティング担当者が技術をよく理解していないことから生じます。もし、あなたが特定の技術や製品、サービスに対し、「もっとよくPRできるのでは?」と思うのであれば、「マーケティング職」に向いているかもしれません。

パッケージ製品やサービスを自社で持っている会社では、製品専門のマーケティングスペシャリストの仕事もあります。一般に「プロダクトマーケティング」と呼ばれ、深い製品知識を持ち、競合製品に対して自社製品の差別化を打ち出したり、よりその製品を魅力的に見せるためのPRツールを用意したりする仕事です。ときにはユーザー会や外部のセミナーで講師をしたりして製品の啓蒙活動を行うため、自社製品以外の技術知識も必要とします。

外資系の製品ベンダーの場合は、日本市場に合うように日本語化したり、日本独自の機能の追加を本社に交渉したりといった仕事が含まれることもあり、まさに技術知識がないとできないのが「プロダクトマーケティング」という職種です。

3.人材開発系職種へのキャリアチェンジ

新入社員や部下を育てる立場になり、システム構築や開発で手を動かすよりも、人を育てることや人に教えることにやりがいを感じるなら、人材開発を仕事にする道もあります。

一般に、従業員数200人以上の多くのIT企業には人材開発部門があり、技術者や営業のスキルアップ研修を実施しています。近年では研修のトレーナーとして、現場に明るいエンジニアの経験者を登用することも増えてきました。

また、エンジニアトレーニングを専門にしている企業もあります。エンジニアとしての現場経験とITの実践的知識を持つトレーナーの需要は、常に一定数あります。

おすすめは転職よりも社内異動

ここまでエンジニアのノウハウを生かせる仕事を紹介してきました。とはいえ、いきなり職種も会社も変えるのは大変ですし、勇気がいります。そこで、キャリアチェンジを行動に移すときのおすすめは、転職よりも「社内異動」です。

連載第2回の「エンジニアが転職すべきかどうかの7つのポイント」にも書きましたが、いまの職場には人間関係や信頼関係の「貯金」があります。

たとえば、自社の営業担当者に技術の知識がないため、うまく自社のサービスやソリューションを売り込めていないという問題点が見えれば、自分の知識を活用してプリセールスになることで売上の向上に貢献できると社内を説得できます。これまでの経験を生かして、職種を変えることによって自社の抱えている問題を解決できると伝えられれば、キャリアチェンジしやすいはずです。

たとえ現在の職場で職種をすぐに変えられなくても、営業同行の機会を得たり、自分なりに自社の人材開発プランを考えてみたり、自社の製品やサービスをより魅力的に見せる方法を書き出してみたりすることで、具体的なイメージがどんどんふくらみます。

具体的なイメージをもって転職先を探し、転職活動を行うことで、より自分に適した職場や職種を探し、面接でも具体性をもって自分の考えていることをPRできるでしょう。

キャリアチェンジのためにいま、どんな行動を起こしますか? 小さなことでもよいのです。まずはいますぐできることをやってみましょう。

あなたの幸せなキャリアを作るのはあなた自身です。キャリアの上昇気流や好循環を作るのは、すべてあなたの今日の行動にかかっています。

【コラム】日経新聞でビジネスの視点を身につけよう

エンジニアのキャリアチェンジは、「お客さまが望むものを作る仕事」から、「お客さまや社内に自発的な提案を積極的にするポジション」へ移動することがほとんどです。提案する内容では、「企業力向上」のためにすべきことを語る必要があります。そこでおさえるべきは「ビジネスの視点」です。ビジネスの視点をどう作るか? 取っ付きやすく安価でスキマ時間に読める「日経新聞」が私のおすすめです。

日経新聞をすすめる3つの理由

  1. 1冊1500円のビジネス書を月に何冊も買うよりもコスパがいい
  2. ビジネス用語やトレンドを全体的に大まかにつかむことができ、ビジネスの話でベースとなる共通用語を得られる
  3. 業界動向や競合企業の状況がわかり、裏付けをもって提案できる

エンジニアのための日経新聞の読み方:5つのコツ

  1. 読み始め1年間は「紙媒体」の日経新聞にチャレンジを
  2. 電子版もありますが、電子版は興味のない記事をついつい読み飛ばしてしまいます。特にインターネットでの情報収集に慣れたエンジニアほど自然に読み飛ばしをしています。慣れるまでは紙媒体をおすすめします。

  3. 1面から順番に読む
  4. 重要な記事は1面から掲載されています。また記事が大きいほど重要な内容です。大きい記事からとにかく読む、押さえる習慣を。

  5. 読みにくい記事でも見出しだけは必ず読む
  6. エンジニア職の仕事や普段の生活では絶対に使わないような経済用語が頻出します。見出しに使われている単語にわからないものがあったら、必ず意味を調べましょう。

  7. 紙面下部の書籍の広告に目を通す
  8. 書籍の広告にはビジネスマンが興味を持ちそうな本がたくさんあります。現在のビジネスでの話題も簡単につかめますので、必ず目を通してください。

  9. 余裕があれば文化欄も読む
  10. 朝刊の最終ページや夕刊は、文化欄が充実しています。特に営業系職種の場合、お客さまとのお食事や接待という場もあります。そこでは仕事の話をするのは無作法だとされている方も多くいらっしゃり、あえて歴史や美術の話などをされる方も少なくありません。そんな場面に備え、日経の文化欄を常日頃読んでおけばある程度の教養のある人材として認識され、より信頼感をアップすることが可能です。

著者:大滝由子

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1971年生まれ。派遣社員からキャリアをスタートし、ベンチャー企業に勤務する途中、チームマネジメントの難しさとリーダーシップのあり方に悩んだところでコーチングと出会い、 2003年9月よりプロコーチとしてコーチングサービスを提供開始。その後外資系IT企業やベンチャーキャピタルなどにマネージャーとして勤めるも、組織で働くことにあまり面白さと特段のメリットを見いだせず独立し現在に至る。

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