このページの本文へ

PROGRAMMING 転職・独立しようかなと思っているエンジニアに役立つ知識をシェアしよう ― 最終回

個人と法人どっちを選ぶ? 独立時に考えたいメリット・デメリット

2016年09月20日 11時00分更新

大滝由子

  • この記事をはてなブックマークに追加
本文印刷

就職して3年が過ぎ、「そろそろ辞めどきかな」「この仕事をずっと続けられるのかな」と感じているエンジニアのために、転職と独立に役立つ「技術以外」の知識を紹介。派遣エンジニア、外資ITベンダーでトレーニングマネージャー、IT業界専門のベンチャーキャピタリストなど、IT を軸に多彩なキャリアを持つプロコーチの大滝由子さんが解説します。
最終回は、独立・開業を選ぶときのメリット・デメリットを紹介します。(編集部)

個人事業主(開業)と起業(法人)のどちらを選ぶべきか

開業と起業、どちらも一長一短あります。「売上が1000万を超えたら起業(法人化)」が1つの目安です。

個人事業主は、交際費が全額経費で落ちるのが大きなポイントです。売上から交際費を含む経費を引いて赤字となれば税金がかかりません。一方、法人の場合は、交際費は半額のみ経費となり、さらに赤字であっても年間7万円の法人住民税はかかります。帳簿の作成も個人事業主に比較すると厄介です。

こうしてみると個人事業主がよさそうですが、ITエンジニアはランニングコストが安く、仕入れがほとんどないので経費がかかりません。売上から経費を引いたものが所得なので、自宅で仕事をしつつ売上が高くなると、かなりの所得税がかかります。所得税が高くなれば、国民健康保険、住民税、保育料なども連動して高くなります。

また、売上が1000万円を超えると、取引先から預かっている消費税を納める必要が出てくるので、起業(法人に切り替える)する方が多いです。

法人なら、自分への給与を低めに抑えて支払ったり、社員の所得控除を使ったりして、税金を抑えることも可能です。自分の会社ですから、交際費、書籍代、研修費などはこれまで通りで経費として扱うことができます。

個人事業主は、万が一自身に何かあった場合、自身名義の銀行口座は相続が確定するまで凍結され、支払い予定が重なったときや、事業上やり繰りしなければならないお金を残された家族が動かすことができない問題が発生します。法人であればこういったことはありません。

【コラム】フリーランスの経費と所得

フリーランスで日々の仕事がらみでかかる費用は経費になります。私の経費を公開します。

  • 書籍代 新聞購読を含め月平均2万円
  • 研修代 直近1年では、
    ・マインドマップトレーニング 7万円
    ・フォトリーディング 15万円 など。
    ここではざっくり月2万円として計算します。
  • 交際費 仕事の情報収集や仕事関連のコミュニケーションのために食事をする機会はとても多く、平均月5万円ぐらいかかります
  • 通信費 パソコン、スマホ、アプリ代、通信費2万円

加えて、自宅で仕事をしているため、住居費や水道光熱費などの様々な費用が経費となります。

これらの経費を売上から引いたものが、私の年収となり、それを元に所得税、住民税、国民健康保険料、人によっては保育料などが算出されます。

住民税計算方法例

東京都主税局:http://www.tax.metro.tokyo.jp/shitsumon/sonota/index_j.htm

保育料計算方法例

千代田区:https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kosodate/hoikuen/hoikuryo.html

フリーランスの場合も会社員とは異なり、収入や支出を自分で決めることができるので、自分の意思で納税額や社会保険料を決められるのがすごいところなのです。

やってみてわかった、独立・開業の意外なデメリット

独立の最大のデメリットは、「自分が働かないとお金が入ってこない」ことです。もちろん、ビジネスによっては自分が働かなくてもお金が入ってくるしくみを作ることも可能でしょう。それでも、軌道に乗るまでは自分が働くしかありません。

そのため、体調管理も重要です。何の後ろ盾もない個人に対して仕事を発注してくれるお客さまに対して、1つずつきちんとした仕事を納期までに必ず納める必要があります。自分の体調が悪くても会社勤めであれば、同僚や周囲の人間がカバーしてくれますが、フリーランスはそうはいきません。

私がフリーランスになる前にまったく気づかなかったデメリットが1つあります。「フリーランスの仕事には基本的にはチャレンジが少ない」ことです。

フリーランスとして売上につながるのは、あなたがすでにできる仕事、実績のある仕事がほとんどです。会社員なら、異動、抜擢、昇進、企業が用意する研修などを経て、自分が考えてもみなかった仕事に就く機会もありますが、フリーランスにはこういうことはまずありません。

私は30代後半からフリーランスとなり、このことに気づきました。もっと早くに気づいていれば、多分40歳までは社員で会社のお金であれこれチャレンジと勉強をさせてもらって、副業の仕事や開業の準備をもっと進めてから独立したと思います。

最後に

私がフリーランスになったのは、職場の人間関係が原因で大幅に体調を崩し、毎日会社に通うことが困難になったのが最大の理由でした。もともと子どものころから集団行動に多くのストレスを感じるタイプなことと、仕事は定年後もずっと続けられるものにしたいと思っていたので、そのタイミングで決めてしまいました。

いろいろと偉そうなことを書きましたが、開業計画なんてまったくありませんでしたし、いくつかのことが後で振り返るとたまたま開業準備となっただけで、開業を意識して準備してきたわけでもありませんでした。

急にクビになっても、常に年収3割増し、3社から声が掛かるような人材になっておかなくてはいけない……という文章を20代のころに何かで読みました。私は20歳で養育費をもらわないシングルマザーとなったので、子どもだけは何とか成人まで自分の経済力で育て上げないと、それには3割増し、3社からの引き抜きぐらいの状態になっておけばとりあえず、何とかなるだろうと思い、それを常に頭に入れておいて、仕事や職種を選んできていました。

残念ながらそれほど立派なキャリアには到達できませんでしたが、それでも専門学校卒、シングルマザーで正社員経験なし派遣社員が仕事のスタート地点からは、それなりに悪くないところまでこられたかな、と思っています。

転職も開業も、好きなことをベースに探した仕事ではありませんでしたが、どの仕事も一所懸命にやれば面白い部分がかなりあることがわかり、時には愚痴をこぼしたり、悪態をついたりしながら、それでもやっぱり働くのが好きで、子どもが無事成人した今でも仕事をしています。これからも長く細くできれば死ぬまで仕事をしたいと考えています。

運も時代も大きい要素ですが、それに振り回されないために、連載で述べてきた以下の3点をときどき思い出したり、考えたりしてみてください。

  • 自分のキャリアを常に考えておく姿勢を持ちましょう。他人任せにしてはいけません
  • もう自分は手遅れ? そう思うならなおさら今すぐはじめましょう。一番早くスタートできる日は「今日」ですよ
  • 何から始める? 自分がいいと思うことをできることから少しずつ始めましょう。コツコツ続けていると、ある日「量」が「質」に転化します。その時あなたのキャリアは上昇気流に乗っています

著者:大滝由子

著者写真

1971年生まれ。派遣社員からキャリアをスタートし、ベンチャー企業に勤務する途中、チームマネジメントの難しさとリーダーシップのあり方に悩んだところでコーチングと出会い、 2003年9月よりプロコーチとしてコーチングサービスを提供開始。その後外資系IT企業やベンチャーキャピタルなどにマネージャーとして勤めるも、組織で働くことにあまり面白さと特段のメリットを見いだせず独立し現在に至る。

Web Professionalトップへ

この連載の記事

一覧へ
Web Professionalトップページバナー

この記事の編集者は以下の記事をオススメしています

ASCII.jp会員サービス 週刊Web Professional登録

Webディレクター江口明日香が行く